ソルデムとは
ソルデムは体内の水分や体液のミネラルバランスを調節する点滴剤です。
ソルデムのように水分(生理食塩水)や電解質、ブドウ糖などが含まれている点滴剤を電解質輸液といい、ソルデムはその濃度が血液よりも低く設定されているので「低張電解質輸液」に分類されています。
なお、低張電解質輸液は低張液と間違われやすいのですが、浸透圧は体液とほぼ同じ等張液に分類されます。電解質(NaCl)濃度が生理食塩液より低張であるため、低張な分をブドウ糖によって等張にしています。
ソルデムにはソルデム1輸液、ソルデム2輸液、ソルデム3輸液、ソルデム3A輸液、ソルデム3AG輸液、ソルデム3PG輸液、ソルデム6輸液があります。
疾患や症状の原因、経過など目的に合わせて使い分けます。
電解質輸液の種類
薬剤を構成する生理食塩水の割合や電解質・ブドウ糖の含有量などによって開始液、脱水補給液、維持液、術後回復液に分類されます。それぞれの特徴や適応は次のとおりです。
●開始液(1号液):ソルデム1輸液など……カリウムを含まない輸液で、症状の原因や疾患が分からない緊急時にまず使用します。
●脱水補給液(2号液):ソルデム2輸液など……細胞内に多い電解質を含み、体内の電解質バランスが崩れている低張性脱水(Na欠乏型脱水)に使用します。
●維持液(3号液):ソルデム3輸液など……体内の水分が不足している高張性脱水(いわゆる脱水症状)に使用します。1日に必要な水分量である約2000mLの3号液を投与すると、主な電解質(Na+、Cl-、K+)の1日必要量を補えます。
●術後回復液(4号液):ソルデム6輸液など……手術後の尿量が少ないときや高カリウム血症、腎障害の方にも使用できます。電解質濃度が低く、細胞内へ水分を補給する効果が高い。
ソルデムの効能・効果
熱中症による脱水状態、食中毒の下痢や出血による脱水・失血状態、手術などによる失血状態などにおける体内の水分不足、電解質バランスの調節などに効果があります。
成人では体重のおよそ60%が水分でできていますが、人体は水分のほかに細胞の機能を発揮・維持するためにカリウムやナトリウムなどの電解質を必要とします。体内の水分や電解質が不足したりバランスが崩れると人体は正常な活動ができなくなり、吐き気や嘔吐、めまいなどの症状があらわれます。ソルデムはこのような症状が現れている方において、口からの水分摂取が難しいケースなどでの水分や電解質の補給に使用されます。
ソルデムの効果の違いは次のとおりです。
ソルデム1輸液(開始液・1号液)
脱水症状や症状の原因が分からない場合の水分・電解質の初期補給、手術前後の水分・電解質の補給を目的に使用します。
カリウムを含まないので、尿の排せつがない場合にも使用できます。
ソルデム2輸液(脱水補給液・2号液)
カリウムなどの電解質をソルデム1輸液より総合的に多く含み、電解質のバランスが崩れているケースの脱水症状や水分・電解質補給に効果があります。
ソルデム3輸液(維持液・3号液)
水分・電解質のバランス維持に効果があります。障害や意識がない場合など、口からの水分・電解質補給が難しい人に使用されます。
ソルデム3A輸液(維持液・3号液)
3A輸液は3輸液に比べて糖濃度が高く、ナトリウムとクロールの電解質濃度が低い輸液です。
ソルデム3AG輸液(維持液・3号液)
GとはGlucose(ブドウ糖)を指します。ソルデム3輸液・3A輸液よりもブドウ糖を多く配合しています。水分・電解質の補給・維持のほか、ブドウ糖によるエネルギーの補給効果もあります。
ソルデム3PG輸液(維持液・3号液)
PとはPhosphate(リン酸)、GとはGlucose(ブドウ糖)のことです。ソルデム3AG輸液よりも多くのブドウ糖を配合し、さらにリンが追加されています。
ソルデム3AG輸液と同様、水分・電解質の補給・維持、エネルギー補給に効果があります。
ソルデム6輸液(術後回復液・4号液)
手術後の水分・電解質の補給に効果があります。
手術後は出血などにより体内で循環する血液の量が減っているため、輸液で補う必要があります。
また、カリウムを含まず、ナトリウムの量も少なくなっているため、高カリウム血症や腎障害のある人にも使用できます。
ソルデムを使えない人
ソルデム1輸液
高乳酸血症の方は症状が悪化する可能性があるため使用できません。
ソルデム2輸液・3輸液・3A輸液 ・3AG輸液
高乳酸血症の方、高カリウム血症の方は症状が悪化する可能性があるため使用できません。また、乏尿、アジソン病、重症熱傷、高窒素血症のある方は、高カリウム血症を引き起こしてしまう可能性があるため、使用できません。
ソルデム3PG輸液
高乳酸血症の方、高カリウム血症の方は症状が悪化する可能性があるため使用できません。
乏尿、アジソン病、重症熱傷、高窒素血症のある方は、高カリウム血症を引き起こしてしまう可能性があるため、使用できません。
また、高リン血症、低カルシウム血症、副甲状腺機能低下症のある方は、高リン血症や低カルシウム血症が悪化したり、引き起こしたりする可能性があるため使用できません。
ソルデム6輸液
カリウムを含んでいないので、手術後に腎機能の低下がみられる方や高齢者、6歳未満の子ども(新生児・乳幼児)などに適していますが、基本的にはどなたでも使用できます。
ソルデムの副作用
ソルデムに副作用はほとんどありませんが、まれに次のような副作用が起こることがあります。
【共通】
大量または急速な点滴を行った場合に脳浮腫、肺水腫、末梢の浮腫などが起こるおそれがあります。
【ソルデム3PG】
大量または急速な点滴を行った場合に血管痛や血栓静脈炎などが起こるおそれがあります。
【ソルデム2】
1歳未満の子どもに対して1時間に100mL以上使用した場合、高カリウム血症を起こすおそれがあります。
製品名 | 起こりうる副作用 |
ソルデム1 | 脳浮腫、肺水腫、末梢の浮腫 |
ソルデム2 | 脳浮腫、肺水腫、末梢の浮腫、アルカローシス、高カリウム血症 |
ソルデム3・3A・3AG | 脳浮腫、肺水腫、末梢の浮腫、水中毒、高カリウム血症 |
ソルデム3PG | 血管痛、血栓静脈炎、脳浮腫、肺水腫、末梢の浮腫、水中毒、高カリウム血症 |
ソルデム6 | 脳浮腫、肺水腫、末梢の浮腫、水中毒 |
ソルデムのカロリーとアシドーシス
アシドーシスは、輸液の中でも「高カロリー輸液」に分類される点滴の使用時に起こるおそれがある重篤な副作用の一つです。
アシドーシスとは血液のpHが酸性に傾いた状態を指し、意識障害、血圧低下、痙攣、呼吸障害などが起こります。
高カロリー輸液を行なう際にビタミンB1が不足すると、アシドーシスをおこすことが知られており、これまでにも適正使用の注意喚起が行われてきました。
ソルデムにもブドウ糖が含まれているため多少のカロリーを含んでいますが、血液の酸性度が高くなるアシドーシスを引き起こすほどのカロリーではありません。ソルデムの使用でアシドーシスのリスクは低いでしょう。
ソルデム各製品のカロリーは以下のとおりです。
製品名 | 200mL | 500mL | 1000mL |
ソルデム1 | 20.8kcal | 52kcal | ー |
ソルデム2 | 11.6kcal | 29kcal | ー |
ソルデム3 | 21.6kcal | 54kcal | ー |
ソルデム3A | 34.4kcal | 86kcal | 172kcal |
ソルデム3AG | 60kcal | 150kcal | ー |
ソルデム3PG | 80kcal | 200kcal | ー |
ソルデム6 | 32kcal | 80kcal | ー |
おわりに
ソルデムはさまざまな場面で使われる機会の多い点滴剤です。
ブドウ糖を含んでいるので多少のカロリーはありますが、体重の増加につながるほどではありません。
ソルデムの使用で気になることがある場合は、担当の医師や薬剤師にご相談ください。