はじめに
お腹の中で赤ちゃんに栄養を与え続けてきた「へその緒」は、正式には「臍帯(さいたい)」と呼ばれます。
通常は生後1~2週間かけてだんだんと乾き、しなびてきて自然にポロリと取れるものです。
ところがその際、細菌などに感染すると病気にかかってしまいます。
今回は新生児によくある「臍炎(さいえん)」と「臍肉芽腫(さいにくげしゅ)」について知っておきましょう。
臍炎(さいえん)とは?
へその緒が取れた傷口から細菌が入って感染し、炎症を起こすことを臍炎(さいえん)といいます。
原因は黄色ブドウ球菌などをはじめとする細菌感染です。
通常へその緒は自然に取れた後、しばらくおへその消毒を続けていると1週間くらいで乾いてきます。
しかし炎症を起こした場合は臍炎になり、さらに「臍周囲炎(さいしゅういえん)」といって炎症がおへその周囲にまで広がることもあります。
臍炎の症状は?
・おへそがいつまでも乾かず、赤くジクジクする
・ジクジクと湿って、膿や出血がみられることもある
・触ると痛がることもある
・おへそがむくんで突出してくることもある
治療法は?
まずは清潔が第一です。
軽症の場合は、おへそが乾燥するまでよく消毒して乾かします。
あまり神経質に消毒する必要はなく、ガーゼなどでおへそを覆う必要もありません。
シャワーや沐浴で毎日汚れを洗い流すことで十分です。
ただし炎症がひどい場合には、抗菌薬や抗生物質を投与したり切開してうみを出すこともあります。
悪化すると細菌が全身に回ることもあるので、早めのケアをして下さい。
臍肉芽腫(さいにくげしゅ)とは?
臍肉芽腫はへその緒が取れたあと一部残った組織が増殖し、盛り上がって「しこり」になるものです。
臍炎同様、そのままにしておくと臍肉芽腫も細菌感染しやすいため注意が必要です。
臍肉芽腫の症状は?
・おへその中にピンクやくすんだ赤の柔らかい肉のしこりができる
・炎症を起こすと赤く盛り上がってジクジクする
・大きさは小さいものからおへそ全体を覆うものまで様々
・臍肉芽腫のように見えて、まれに腸管とつながっていて粘膜が飛び出していることもある
治療法は?
しこりは感染しやすいため、触らないようにして、早めに小児科を受診しましょう。
そのままにしておくと悪化して、血液に細菌が侵入して全身に回ると敗血症を起こす可能性もあります。
■臍肉芽腫が小さい場合
「硝酸銀」を使って焼いて取り、消毒することで治ります。
その後は特に薬などは必要なく、臍炎と同じように清潔を心がけましょう。
■臍肉芽腫が大きくなってしまった場合
小児科などで肉芽腫を切除する必要があります。
手術のような大掛かりなものではなく、根元を糸で結んで血流を止め取り除きます。
臍肉芽腫には神経はないため、いずれの治療法も痛みは感じません。
家ではシャワーや沐浴後におへそをよく消毒し、きれいに乾くまでケアしましょう。1週間程度で治ります。
普段のケアの注意点は?
清潔・消毒・乾燥が基本です。
へその緒が取れたあとは自然に乾燥してきますが、その間感染を防ぐためにアルコール消毒が必要です。
以下のことに注意しましょう。
・ケア前にケアする人の手は清潔にしておきましょう
・1日1回、入浴後の清潔な状態の時に消毒します
・おへそを指で開き、乾いた綿棒で水分を拭き取り、別の綿棒に消毒液をつけてやさしく拭きます
・消毒後はなるべく空気に触れされるようにしましょう
・ガーゼやおむつでおへそを完全に覆ってしまうと、乾燥の妨げになるため注意しましょう
おわりに
無菌の胎内から産まれたばかりの新生児は、一部の感染症から全身の感染症へと発展しやすいため、普段のケアが大切です。
臍炎(さいえん)と臍肉芽腫(さいにくげしゅ)も、新生児には珍しくない病気です。
症状が出たときは早めに対処しましょう。