日本内科学会では3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態を便秘と定義しています。
つまり、実際に便が出ていないのは勿論、出ていたとしても便が残っていると感じる場合は便秘となります。
便秘は慢性化しやすいので、生活習慣を改善したり、薬で対処をすることが重要です。
まずは便秘の原因を知ろう!
便秘を解消するためには、まずは原因が何から来ているのかを知ることが重要です。
腸の動きが弱まる便秘を『機能性便秘』と呼びます。
機能性便秘は、生活習慣やストレスなどの生活習慣も関連していると考えられています。
生活習慣が起因している場合、次の原因が考えられます。
ご自身の生活を振り返って、当てはまるものがないか考えてみましょう。
偏った食生活・過度なダイエット
偏った食生活や過度なダイエットなど、食生活が原因となって便秘となるケースがあります。
ダイエットで食事回数を減らしたり、食物繊維の摂取が少なくなってしまったり、お肉ばかり食べて野菜が不足したりすると、腸内の悪玉菌が増えて腸の動きが悪くなってしまいます。
運動不足
運動をすることによって腸が刺激され、ぜん動運動が促されます。日々の運動が減ることによって腸への刺激も少なくなり、便秘の原因となることがあります。
また、運動が不足すると腹筋が衰え、排便時にいきむ力が弱くなり、便秘に陥りやすくなります。
男性よりも女性に便秘が多い理由の1つに、女性の方が腹筋が弱いという点があげられます。
ストレス
腸を含めた消化器官の動きを司っているのが自律神経ですが、人間は大きなストレスを感じると自律神経の働きが乱れます。ストレスを多く受けることによって腸の動きが弱まり、便秘の原因となります。
ストレスの原因が分かっていれば、それを取り除くことが一番ですが、難しいケースも多いでしょう。そのため、ストレスを感じた時の解消方法を自分なりに見つけることも重要です。
頻繁にトイレを我慢する
頻繁にトイレを我慢すると便意を催す神経のセンサーが鈍り、次第に便意を感じにくい体質になってしまいます。
朝ゆっくりトイレに入る時間を作ったり、外出先でも恥ずかしがらずに排便することが大切です。
食生活を見直そう|食べ物・飲み物
生活習慣が原因となる便秘の場合は、規則正しい生活を心がけ、日々の食生活や運動などを改善をすることが重要となります。
まずは便秘解消に役立つ成分が多く含まれる食材をご紹介します。
便秘解消に悩む方は次の食材を積極的に摂取すると良いでしょう。
食物繊維
排便回数が週に3回未満と少なく、便が硬いために排便することが困難な方は、食物繊維の量を見直してみましょう。
食物繊維の量については『1日18〜20gくらい』を目安に摂取すると良いでしょう。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がありますが、摂取する時は両方をバランス良く摂取することが重要です。
■水溶性食物繊維について
水溶性食物繊維は腸内の善玉菌を増やす作用、便を柔らかくして出しやすくする作用があります。
水溶性食物繊維は果物や野菜(にんじんやキャベツなど)、海藻類などに含まれます。
なお、海藻には妊娠中に過剰摂取を避けるべき栄養素であるヨードが含まれるため、妊婦さんは過剰摂取をしないように注意する必要があります。
■不溶性食物繊維について
不溶性食物繊維は、便のかさを増やして腸管を刺激し、腸の運動を促します。
便秘の種類によっては、不溶性食物繊維を摂り過ぎると、かさの増えた便でかえって便秘がひどくなることもあるので注意しましょう。
不溶性食物繊維は根菜類やきのこ類、豆類などに含まれます。
■食物繊維の摂取について
食物繊維ばかりを摂取して、栄養バランスが崩れても便秘の原因となります。
推奨量の目安を参考にし、そのほかの栄養素もバランス良く摂取するようにしてください。
なお水溶性食物繊維は、一般的に食材に含まれる量が少ないことが多いため、食事が不規則な人は特定保健用食品(トクホ)などを利用しても良いでしょう。
コレカットレモン
コレカットは『コレステロールの値が高めの方』を対象とした特定保健用食品(トクホ)です。
『コレステロールの値が高めの方』におすすめの商品とは、LDL(悪玉)コレステロール値が境界域及び軽症域にある人を対象として行った有効性試験の結果をもとに作られた製品です。
LDLコレステロール値 | 境界域:LDLコレステロール120~139 mg/dL |
---|---|
軽症域:LDLコレステロール140~159 mg/dL |
コレカットには、水溶性食物繊維(低分子化アルギン酸ナトリウム)配合されていて、1本でレタス中玉1個分の食物繊維を摂取することができます。
食物繊維が食事時の余分なコレステロールを体外に排出することで、血中コレステロールが減少します。
乳酸菌・ビフィズス菌・オリゴ糖
食物繊維以外にも、腸内環境を整える乳酸菌とオリゴ糖も便秘解消におすすめの栄養素です。積極的に摂取をしましょう。
乳酸菌・ビフィズス菌 | オリゴ糖 | |
---|---|---|
働き |
・腸内で悪玉菌の繁殖をおさえる ・腸内環境を整える |
・乳酸菌やビフィズス菌の栄養源となる ・善玉菌の増殖をうながす |
食材 |
ヨ-グルト・乳酸菌飲料・納豆・漬物など |
ごぼう・玉ねぎ・ねぎ・にんにく・ バナナ・アスパラガス・大豆など |
水分の摂取
便秘を解消するにはお通じを良くする食べ物をとるだけでなく、十分な水分をとることがとても重要です。
体内の水分が不足すると便が硬くなり、腸内で移動しにくくなってしまいます。
朝起きたらまずはコップ1杯の水を飲むことで腸内が刺激され、便意が起きやすくなります。
適度な運動を心がけよう
適度な運動は腸の刺激となって活動を促します。軽いウォーキングでも良いので毎日少しずつ運動をしましょう。
運動することが難しい方はお腹を揉んでマッサージしたり、温めることによって腸を刺激することができます。
腹筋を鍛える
筋肉の中でも便秘に一番関わりがあるのが腹筋です。
腹筋が弱くなると便を押し出す力が弱くなります。また、腹筋が弱くなることによって腸のぜん動運動が弱くなってしまいます。
いきなり激しい筋トレをする必要はなく、最初は毎日10回くらい軽い腹筋運動をするだけでも十分です。
腹筋をする際は仰向けになり、両手を頭の後ろで組んでつま先を少し見る要領で起き上がりましょう。慣れて来たら徐々に回数を増やしても良いでしょう。
市販の便秘薬で治療しよう!|薬の選び方
便秘解消のためには生活習慣の見直しがとても重要となりますが、すぐに効果が現れるわけではないため、便秘の症状がつらい場合は我慢をせず、市販の便秘薬を上手に使用しましょう。
市販の便秘薬の選び方
便秘の薬は主に浸透圧性下剤、刺激性下剤、浣腸・坐薬、整腸剤の4つに分けらます。
それぞれ特徴や使用すべき便秘の症状が異なります。
こんな症状におすすめ | |
---|---|
浸透圧性剤下剤 |
・はじめて便秘薬を使う人 ・便秘をくりかえす人 ・薬でお腹が痛くなるのはイヤ |
刺激性下剤 |
・浸透圧性下剤や整腸剤を飲んでも効果がなかった時に ・短期間や一時的に使用する ・腹痛が起こる可能性あり |
浣腸・坐薬 |
・すぐに出したい ・長期連用は不可 |
整腸剤 |
・比較的症状が軽い便秘に ・長期間服用できる ・子供や妊婦、高齢者も服用可 |
浸透圧性下剤
はじめて便秘薬を使用する場合は、まずは浸透圧性下剤を使用しましょう。
市販薬ではマグネシウム類が配合された薬が販売されています。
マグネシウム類には腸内に水分を集める働きがあり、便がその水分を吸収することにより、排便しやすい環境を作ります。
刺激性下剤
便秘は腸内の動きが悪くなることによって起こりますが、刺激性下剤は大腸を刺激して動かすことで、排便を促します。
腹痛をともなうこともあります。また、クセになって薬が効かなくなってしまうこともあるため、長期連用はできません。
浣腸・坐薬
浣腸や坐薬は肛門や直腸に刺激を与えることによって、大腸が動いて強制的に排便をうながす薬です。
即効性がありますが、クセになりやすいのでどうしても今すぐに出したいという場合にのみ使用します。
整腸剤
便秘薬が腸に刺激を与えたり、水分を集める作用があるのに対し、整腸剤は腸内の環境を整えて自然な排便をうながす薬になります。
長期連用しても問題ないため、子供や妊婦さんも服用できます。比較的症状が軽い便秘に使用しましょう。
便秘の市販薬は子どもや妊婦でも使用できる?
便秘薬は人によって適した種類が異なります。次の方は薬の成分によっては使用できない便秘薬もあるため注意してください。
適した便秘薬 | |
---|---|
赤ちゃん・子供 |
・整腸剤、浣腸、浸透圧性下剤がおすすめ |
妊婦・授乳中 |
・浸透圧性下剤、整腸剤がおすすめ |
高齢者 |
・浸透圧性下剤の薬は長期服用を避ける |
赤ちゃんや子供、妊娠中や授乳中の方は、成分や年齢によっては使用できない市販の便秘薬があります。必ず用法用量を確認し、ご自身が服用できる薬かどうか確認をしましょう。
また、生理前に便秘になった場合は、腹痛が起こる可能性のある刺激性下剤は避けましょう。
高齢者の方は、浸透圧性下剤の酸化マグネシウム系の市販薬を長期服用すると、高マグネシウム血症を引き起こすリスクが高くなるため注意してください。
便秘に効くおすすめ市販薬
便秘の各症状に合わせた市販薬をご紹介します。
ご自身の症状や年齢に合わせて適した市販薬を購入しましょう。
浸透圧性下剤:便秘の初期症状に
メタスルー 360錠【第三類医薬品】
年齢 | 1回量 | 1日服用回数 |
15歳以上 |
3~6錠 |
1日1回 |
11歳以上15歳未満 |
2~4錠 | |
7歳以上11歳未満 | 2~3錠 | |
5歳以上7歳未満 | 1~2錠 | |
5歳未満 |
服用しないでください |
授乳 | ◯ |
酸化マグネシウムが配合された非刺激性の便秘薬です。腸を直接刺激しないため、腹痛や腹部の不快感が起こりにくく、連続服用してもクセになりにくいという特徴があります。
酸化マグネシウムには、固くなった便に水分を集めることで、便を柔らかくし自然なお通じを促す働きがあります。便秘や便秘にともなう頭重、腹部膨満感、肌荒れなどに効果をあらわします。
メタスルーは、続けやすいリーズナブルな価格です。便秘薬と気づかれにくいパッケージも特徴の一つです。
オイルデル 24CP(第2類医薬品)【第二類医薬品】
年齢 | 1回量 |
1日服用回数 |
15歳以上 |
3~4カプセル |
1日2回 |
15歳未満 |
服用しないでください |
妊婦・授乳 |
◯ |
オイルデルは水分浸透成分のDSS(ジオクチルソジウムスルホサクシネート)とオイル成分の麻子仁末を配合した、腸への刺激成分を含まない便秘薬です。
DSSは腸の中で硬くなった便に水分を浸透させて柔らかくすることで排便を楽にし、麻子仁末の油分が腸と便を潤滑にするため、自然な排便をうながすことができます。
刺激性下剤:しつこい便秘に
ピコラックス 100錠【第二類医薬品】
年齢 | 1回量 | 1日服用回数 |
---|---|---|
15歳以上 | 2〜3錠 | 1日1回 |
15歳未満 | 服用しないこと |
医療用のラキソベロンと同じ成分のピコスルファートナトリウム水和物が含まれた便秘薬です。
腸を刺激し、活発な動きを促進します。
コーラック2 40錠【第二類医薬品】
年齢 | 1回量 |
1日服用回数 |
15歳以上 |
1~3錠 |
1日1回 |
11~14歳 | 1~2錠 | |
11歳未満 |
服用しないこと |
ビサコジルを配合し、錠剤がコーティングされているため胃で溶けずに腸で効果を発揮します。
また、DSSによって硬くなった便に水分が浸透し、排便しやすくなります。
浣腸・坐薬:すぐに出したい時に
コーラック坐薬タイプ 10個【第三類医薬品】
年齢 | 使用個数 |
12歳以上 | 1個(効果のない場合はさらに1個) |
12歳未満 | 使用しないでください |
医療用の新レシカルボン坐剤と同じ炭酸水素ナトリウムを有効成分とした坐薬タイプの便秘薬です。
腸内で炭酸ガスを発生させて腸を刺激し、動きを活発化させます。
使用してから約10〜30分ほどで効果があり、速やかに排便を促したい方におすすめです。
ただし、刺激性に分類されるため長期的もしくは頻繁に使用しないでください。
イチジク浣腸10 10g×4個【第二類医薬品】
イチジク浣腸シリーズは主にグリセリンと精製水の2つを含んでいます。
薬液を入れてから効果が現れるまで比較的速やかであるところが浣腸ならではの特徴です。
整腸剤:自然な便通をうながす
ビオスリーHi錠 42錠 (指定医薬部外品)
年齢 | 1回量 |
1日服用回数 |
15歳以上 |
2錠 |
1日3回 |
5歳以上15歳 |
1錠 | |
5歳未満 |
服用しないでください |
妊婦・授乳 |
◯ |
腸内は主に善玉菌と悪玉菌が生息し、両者のバランスが崩れると腸の健康を維持する機能が損なわれてしまいます。
ビオスリーHi錠は善玉菌であるラクトミン(乳酸菌)、酪酸菌、糖化菌の3種を配合し、腸内環境を整えます。
5歳から服用できるため、子どもから大人まで便秘の症状を改善します。
ビオフェルミンVC 120錠【第三類医薬品】
年齢 | 1回量 | 1日服用回数 |
---|---|---|
15歳以上 | 2錠 | 1日3回 |
15歳未満 | 服用しないでください |
2つの善玉菌に加えて3つのビタミン成分で腸内の悪玉菌の増殖をおさえ、健康な状態へと導きます。
ビタミン成分のビタミンB2,B6,Cはそれぞれ善玉菌の増殖を助ける効果があり、腸内環境を整えます。
さいごに:規則正しい生活を心がけましょう
便秘は慢性化するケースもあり、一度治っても症状が再発しやすい病気です。そのため、日々の生活習慣を改善して慢性化を防ぐことがとても重要となります。
睡眠が不足していたり、生活リズムがバラバラになってしまうと、自律神経のバランスが乱れて腸の動きが悪くなってしまいます。できる限り毎日同じ時間に起床、就寝することを心がけましょう。
また、トイレに入る時間を毎日決まった時間に確保することで、落ち着いて排便をする習慣が身につきます。