腹痛の種類と原因
腹痛には、体の不調に気づくための重要なサインでもあります。さまざまな原因が考えられる腹痛には、主に次のような種類があります。
胃粘膜の刺激による腹痛
「胃粘膜」は、食べ物を消化する役割である「胃酸」などから胃を守る役割をしています。
胃酸が過剰に分泌されると胃を攻撃する胃酸が胃を守る胃粘膜より多くなり、胃粘膜が傷つくことで、胃に痛みを感じます。
また、胃粘膜が弱ることで胃酸の刺激に耐えられず、胃に痛みを感じます。
胃粘膜が刺激されると、胃痛以外に胃もたれ・胸やけ・げっぷなどの症状が現れることもあります。
主な原因 |
アルコール・たばこ・炭酸飲料・果汁・香辛料・ストレス・温度差・鎮痛剤の日常的な服用など |
便秘による腹痛
便秘になると出なくなった便を出そうと腸が動くため、腹痛が起こります。腹痛以外に、お腹の張り・食欲不振・吐き気・肌荒れなどの症状が現れることもあります。
便秘は、大きく3つのタイプに分けることができます。
■弛緩性便秘(しかんせいべんぴ)
大腸の運動機能である「ぜん動運動」が十分に行われず、腸に便が長く留まることで便の水分が腸に吸収されてしまい、便が固くなります。これによって便秘が起こり、腹痛の原因となります。
腹筋の衰えも関係するため、高齢者や妊婦などに多い便秘はこのタイプです。
■けいれん性便秘
自律神経の乱れによって腸管が緊張し、便がうまく運ばれずにコロコロとした便になります。便秘と下痢を繰り返すことも多くあります。
■直腸性便秘
便が肛門の手前まで達しても便意を感じず、直腸に便が溜まってしまうことで便秘が起こります。高齢者や職業柄トイレになかなか行けない人など、便を我慢する習慣がある人に多い症状です。
主な原因 |
食生活(食物繊維不足)・筋力の低下・ストレス・便の我慢グセなど |
下痢による腹痛
便を出そうと腸が動こうとする際に、腹痛が起こります。
便を肛門まで送り出す「ぜん動運動」が過剰になると、便の水分が腸に吸収されずに下痢となって排便されます。また、腸が便から十分に水分を吸収できていない場合も下痢を起こします。
下痢が起こると、腹痛以外に吐き気・嘔吐などの症状が現れることもあります。
主な原因 |
暴飲暴食・アルコール・冷え・ストレス・食中毒・ウイルス感染など |
生理痛による腹痛
女性は、生理が始まる前や生理中に下腹部が痛むことがあります。
主な原因 |
子宮の出口が狭い・血行不良・ストレス |
内臓疾患による腹痛
内臓に何らかの異常があり、病気を引き起こしていると腹痛が起こることがあります。
かかっている病気によって、痛む場所や痛み方が変わります。
自身で病気を特定するのは非常に難しいため、内科や消化器内科などの医療機関を受診する必要があります。
主な原因 |
胃潰瘍・十二指腸潰瘍・膵炎・肝炎・盲腸炎・子宮内膜炎など |
腹痛の原因や治し方などについて詳しくは関連記事をごらんください。
腹痛に使える市販薬
腹痛を薬でおさえる場合は、腹痛の原因や種類によって薬を使い分ける必要があります。下記の表から、自身の腹痛の種類に当てはまる市販薬を選びましょう。
原因がわからない場合やあまりにも激しい腹痛の場合は、内科か消化器内科を受診しましょう。
胃 痛 |
・胃粘膜の刺激 |
ガスター10 ガストール |
・胃けいれん ・しめつけ痛 |
ブスコパンA錠 | |
下 痢 |
・ストレス | 正露丸 |
半夏瀉心湯 | ||
・急な下痢 | ストッパ下痢止め | |
・ウイルス性下痢 | 基本的に下痢止めは使用しない。 | |
便 秘 |
・弛緩性便秘 | コーラックハーブ |
・けいれん性便秘 | スラーリア便秘薬 | |
・直腸型便秘 | オイルデル | |
生 理 痛 |
ー | バファリンルナ |
胃粘膜の刺激による胃痛に効く市販薬
胃けいれんによるしめつけるような胃痛に効く市販薬
ストレスによる下痢に効く市販薬・漢方薬
急な下痢に効く市販薬
外出先での急な下痢による腹痛には、下痢止めを使用することで腹痛をおさえることができます。カバンにひとつ入れておくと安心です。
弛緩性便秘に効く市販薬
けいれん性便秘に効く市販薬
けいれん性便秘は、刺激性の便秘薬を使用すると悪化するおそれがあるため、刺激の少ない便秘薬を選ぶ必要があります。
直腸性便秘に効く市販薬
生理痛による腹痛に効く市販薬
ロキソニンは腹痛に使用しない
痛み止めとして使用される「ロキソニン」「バファリン」「イブ」などの鎮痛剤は、腹痛に使用することはできません。
これらの薬に使用されている有効成分「ロキソプロフェン」「アセチルサリチル酸」「イブプロフェン」は「NSAIDs(エヌセイズ)」と呼ばれ、優れた解熱・鎮痛・抗炎症作用がありますが、副作用として胃腸に強い刺激があります。
腹痛に使用すると痛みが悪化するおそれがあるため、NSAIDsであるロキソニン・バファリン・イブなどの鎮痛剤は使用しないようにしましょう。
ただし、生理痛と判断できる場合はロキソニンなどの鎮痛剤を使うことで、痛みをおさえることができます。
薬以外で腹痛を和らげる方法
薬の他にも、自身でできる腹痛の対策があります。薬の使用と合わせて行うことで、腹痛の緩和がさらに期待できます。
胃に優しいものを食べる
腹痛の原因が不規則な食生活や暴飲暴食の場合は、胃に負担をかけないものを食べましょう。
刺激物や油の多い肉、バターなどの脂肪分の多いものを控え、おかゆ・うどん・白身魚・卵・豆腐・柔らかい野菜の煮物などの消化の良い食べ物を選びましょう。
また、下痢の場合は善玉菌を取り入れることで腸内環境が改善されるため、ヨーグルトや乳酸菌飲料がおすすめです。
自律神経を整える
ストレスなどによる自律神経の乱れが腹痛の原因の場合は、自律神経を整えましょう。
次のような方法が効果的です。
■スポーツや森林浴などでリフレッシュする
ストレスの原因を忘れられる場所に行くことで、心身ともにリフレッシュできます。
■質の良い睡眠をとる
寝る前に、ぬるめのお湯にゆっくり入ることで体が温まり、リラックスした状態で眠ることができます。また、寝る前のアルコール摂取や食事も避けましょう。
■腹式呼吸をする
腹式呼吸は自律神経のバランスを整えます。お腹をへこませながら息を吐き、吐き切ったら息をいっぱい吸い込みましょう。
腹部を温める
冷えが腹痛の原因の場合は、腹部を温めましょう。カイロを腹部に当てる・湯船に入る・白湯を飲むなどが効果的です。
ただし、腹痛の原因が冷えかどうかわからない場合は、むやみに腹部を温めないようにしましょう。内臓の炎症などが原因の場合は、温めることで症状が悪化することがあります。
腹筋を鍛える
腹筋の筋力低下による便秘が腹痛の原因の場合は、腹筋を鍛えましょう。
胃腸の動きを活発にするだけでなく、運動によって血行がよくなることで便秘解消が期待できます。腰を痛めないように足を90度に曲げ、無理のない回数を毎日少しずつ続けていきましょう。
おわりに
軽度の腹痛であれば、市販薬で痛みをおさえることが可能です。自身の腹痛の原因にあわせて、正しい市販薬を使用しましょう。
また、市販薬を使用しても痛みが改善されない場合は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。