腸管出血性大腸菌感染症(O157)とは?

腸管出血性大腸菌感染症(ちょかんしゅっけつせいだいちょうきんかんせんしょう)は、毒素を出す大腸菌による感染症のことです。

O157(おーいちごなな)は腸管出血性大腸菌の代表的な細菌のひとつです。

O157感染症は、食中毒での集団感染などがニュースでも取り上げられます。多くの場合は問題なく回復しますが、重症化すると合併症の併発や死亡に至ることもある病気です。

感染症としての基礎知識と正しい対策を知っておくことがとても大切です。

O157は初夏から秋にかけて流行

O157感染症は、気温が高い初夏から秋にかけて多発します。初夏から秋は食中毒菌が増えるのに適した季節であり、また暑さによる体力の低下なども重なることで、O157感染症が発症しやすくなります。

ただし、O157感染症は気温の低い時期でも発生します。夏季以外でも一年を通して注意が必要です。

乳幼児と高齢者は重症化に注意

O157感染症のかかりやすい年齢は特になく、広い年齢層で発症します。

特に3歳以下の乳幼児と高齢者は、重症化や合併症を起こしやすく、死亡することもあるため、特に注意が必要です。

O157は感染力が強い

腸管出血性大腸菌は、胃酸の中でも生き残るほど感染力が強い病原体です。一般の細菌感染での食中毒は、約100万個程の多量の細菌が侵入しないと症状が現れませんが、O157は50個程度の少ない数の細菌侵入で発症します。

O157の原因

腸管出血性大腸菌感染症は、「ベロ毒素」と呼ばれる猛毒を産生する大腸菌による感染症です。

大腸菌は家畜や人の腸内にも存在する細菌で、ほとんどのものは無害です。しかし大腸菌の中には消化器症状や合併症を起こす病原大腸菌があり、出血をともなう腸炎などを起こすものを「腸管出血性大腸菌」といいます。

腸管出血性大腸菌には様々な種類があり、日本では「O157」が最も多く見られ、次いで「O026(おーぜろにろく)」や「O111(おーいちいちいち)」などが原因菌として知られています。

O157の感染経路は?人から人へうつる?

O157感染症の感染経路は、おもに細菌が付着した飲食物を口から摂取することによって感染します。

O157は、本来牛や豚などの家畜の腸をすみかにしている細菌です。家畜の糞尿から土壌に細菌がうつり野菜や食物を汚染します。

国内で感染事例の原因と特定あるいは推定されたものは、以下の通りです。

井戸水、牛肉、牛レバー刺し、ハンバーグ、牛角切りステーキ、牛タタキ、ローストビーフ、シカ肉、サラダ、貝割れ大根、キャベツ、メロン、白菜漬け、日本そば、シーフードソースなど

海外では、ハンバーガー、ローストビーフ、ミートパイ、アルファルファ、レタス、ホウレンソウ、アップルジュースなどが報告されています。

人から人へうつる?

感染した人の咳やくしゃみ、汗などから感染する空気感染はありません。また、感染者と触れ合うことで感染する接触感染もありません。

人から人へ感染する場合は、感染者の便に含まれた大腸菌が直接・間接的に口に入る場合です。排便後、食事の前に手洗いを十分にしなかった場合などが考えられます。

感染した子どもや高齢者の排泄物を処理したあとなどは特に注意して、石鹸と流水で手洗いを行ってください。

国内での食中毒の事例

O157感染症の国内の感染事例は、焼肉店などの飲食店があげられます。また、食肉を生や加熱不足で食べることで感染した事例も多くあります。

O157感染症は一部の地域だけでなく、汚染された食品が広く流通することで、全国各地で感染報告があります。

また、動物とのふれあいイベントや、搾乳体験などが原因となり感染するケースも報告されています。

O157の潜伏期間と感染期間

O157感染症は、多くの場合は2~5日の潜伏期間の後に発症します。潜伏期間とは、菌が体内に侵入してから感染症が発症するまでの期間です。

発症から時間がたち症状が無くなった後も、1~2週間は細菌は腸の中に存在し便の中に出てきます。潜伏期間から症状がでなくなった後の期間を感染期間といいます。

感染期間の間は感染予防を継続することが、集団感染を起こさないためにも大切です。

O157の症状は?

O157感染症ではおもに以下のような症状が現れます。

・激しい腹痛
・水様性下痢
・血便 
・発熱(多くは37度台)

多くの場合、腹痛から水様便(下痢)が続き、血便が現れます。血便は、初期では少量の血液が混じった状態ですが、次第に血液の量が増加し、血液そのものの出血に至る場合もあります。

発熱は高熱になることは少なく、37度台と軽度です。

症状は無症状から重症まで個人差があります。成人の場合は、感染しても無症状や軽い下痢で終わることが少なくありません。ただし、便には菌が排泄されているため、家族感染には十分な注意が必要です。

症状の経過

感染(無症状)

潜伏期間(無症状:2~9日)

腹痛・下痢

出血性大腸炎(激しい腹痛、血便)

合併症(溶血性尿毒症症候群(HUS)、脳症)

O157の合併症に注意

O157感染症は、特に3歳以下の子どもと高齢者が感染すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症など、重篤な合併症を起こしやすい傾向があります。合併症が悪化すると時には死亡に至ることもあります。激しい腹痛や血便がみられる場合は、早めに医療期間を受診しましょう。

溶血性尿毒症症候群(HUS:Hemolytic Uremic Syndrome)は、下痢や腹痛などが起こってから、数日~2週間後に起こります。

溶血性尿毒症症候群の兆候として、①溶血性貧血(赤血球が壊れる)②出血しやすい(血小板減少)③腎不全(腎機能の低下)などがあります。初期症状では、蒼白(顔色不良)・倦怠感・尿の量が少ない・全身の浮腫(むくみ)などがあります。

溶血性尿毒症症候群を発症した患者の致死率は1~5%とされています。

脳症の場合は、数時間~12時間後にけいれん、幻覚、昏睡などの意識障害が見られることがあります。

O157の治療は?市販薬は使える?

O157感染症の治療の基本は、安静・水分補給・消化しやすい食事の摂取です。

市販の下痢止めは、毒素の排泄を遅らせ症状を悪化させることにつながります。市販薬を自己判断で使用するのはやめましょう。

感染拡大をさけるためにも、O157感染症が疑われる症状が現れたら医療期間を受診しましょう。病院では医師の判断により抗菌薬(抗生物質)や症状を緩和させる薬を使用します。

血便がでたらすぐに受診を

血便の原因には、腸管出血性大腸菌(O157)以外にも、細菌性赤痢などの他の感染症、痔ろう、腸に腸の一部がもぐりこんでしまう腸重積症、大腸がんなどさまざまな原因があります。

血便には危険な病気が隠れているおそれがあるため、医療機関で検査を受けることが大切です。血便があるときには、すみやかに医療期間を受診してください。

O157を徹底予防!家庭でできる10の予防対策

O157感染症の予防方法は、食中毒予防の3原則「菌を付けない・増やさない・殺菌」 を守ることと、人からの二次感染を防ぐことです。

食品の鮮度を保つ

食品は鮮度の良いものを選び、温度を意識して保存しましょう。冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫は-15℃以下にすることで、菌の繁殖を防ぐことにつながります。

ただし、購入後はなるべく長く保存せずに、早めに調理して食べましょう。

食肉は75℃で1分以上の加熱

食中毒が流行しているときは、食肉は中心部まで火が通るように75℃で1分以上加熱しましょう。焼肉やバーベキューなどのときも、十分加熱をすることが重要です。

加熱に電子レンジを使う場合は、時々かき混ぜムラがないように1分間以上加熱しましょう。

野菜と生肉はわけて切る

生の肉や魚を切った後は、必ず包丁やまな板を洗ってください。包丁やまな板を洗わずに、野菜や果物などを切らないでください。

また、生で野菜を食べるときは流水で良く洗いましょう。

調理器具の消毒

台所は常に清潔にすることを心がけます。まな板、包丁、ふきん、たわし、スポンジは使用後に熱湯消毒をしましょう。

また、週に一度程度は消毒薬(次亜塩素酸ナトリウムなどの漂白剤)に漬けて消毒することをおすすめします。

手洗いの励行

帰宅時、トイレの後、動物に触れた後などには、必ず石けんで手を洗いましょう。特に、調理前や調理中、食事の前には意識して洗ってください。指や爪の間から手首まで、しっかり30秒以上かけて洗いましょう。

家族が接触する場所の消毒

トイレや洗面所の取っ手、手すり、ドアのノブ、床、玩具など、家族が接触するものはこまめに消毒用アルコールで消毒しましょう。

タオルや衣類の共有は避ける

O157に感染している方と、タオルや衣類の共有は避けましょう。また、洗濯時は感染者の衣類は別にし、家庭用漂白剤に漬けてから洗濯することが望ましいです。

入浴は家族と一緒は避ける

感染者と他の家族が一緒に入浴することは避けてください。感染者が下痢をしている時はシャワーだけにしましょう。

簡易プールは水を交換する

感染者が家庭用のビニールプールなどを使う時は、他の乳幼児との共用は避け、使うごとに水を交換しましょう。

公用プール、温泉、公衆浴場など、消毒の安全管理ができている場所の場合は、感染を過剰に心配する必要はありません。

おむつ交換は処理が大切

おむつの交換はなるべく同じ場所で行ってください。使用済みのおむつは使い捨ての手袋を使ってビニール袋に入れて処理しましょう。

汚物処理の後は、必ず石鹸で手を洗い、うがいもしましょう。

O157で登校できる?

O157を含む腸管出血性大腸菌感染症は、感染の拡大を防止するため法律が定められています。

学校保健安全法では、腸管出血性大腸菌感染症(O157感染症)は第3種感染症に定められ、出席停止期間が定められています。

学校の出席停止の期間の基準は、「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで出席停止」です。

症状により出席停止の基準は定めれらていますが、症状は個人によって異なります。

特に子どもが感染症にかかった場合は、必ず医師の指示に従い、登園・登校の許可が出るまで十分に休養させましょう。

保育所の登園について

保育園の登園停止期間の基準は「症状が治まり、かつ、抗菌薬による治療が終了し、48時間あけて連続2回の検便によっていずれも菌陰性が確認されたもの」とされています。

特に保育所では、学校感染症対策にプラスして、乳幼児は児童・生徒等と比較して抵抗力が弱いこと、手洗いなどが十分に行えないなど、乳幼児の特性を踏まえた感染症対策が必要です。

出勤について

成人の感染の場合も、感染拡大を防ぐために、医師と相談の上で仕事を休むことが望ましいでしょう。

感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)において、腸管出血性大腸菌感染症(O157感染症)は、3類感染症に指定されています。

O157感染症の診断を行った医師は、直ちに最寄りの保健所への届け出が義務付けられています。

おわりに

O157感染症は、飲食店・学校・施設などでの集団感染が広く知られていますが、実は家族間の感染も問題となっています。

感染者と生活をともにすることで、家族全員に感染してしまうことも少なくありません。O157感染症は重症化や死亡に至ることもある恐ろしい病気です。

特に感染症が流行しやすい夏から秋にかけては、日々の食事やお弁当作り、便の処理など、家庭での基本的な衛生管理に注意しましょう。