無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)とは?夏に注意したい無菌性髄膜炎の原因・症状・対処法について

髄膜炎は、脳や脊髄をおおっている髄膜にウイルスや細菌が感染することによって発症します。この記事では、ウイルス感染により発症する、無菌性髄膜炎について解説します。

はじめに

髄膜炎(すいまくえん)とは、脳や脊髄(せきずい)を覆っている髄膜(軟膜、くも膜、硬膜の3重からなる膜)に、ウイルスや細菌が感染し炎症を起こす病気です。

 

髄膜炎には様々な原因があり、比較的軽症で済む場合と、後遺症や死亡に至る場合もあり、子ども達にとっては大変重要な病気の1つです。

 

現在、髄膜炎に対する世界的な支援団体があり、子どもたちを守るために、その情報や予防法などについて広く呼びかけをしています。

 

重症化を防ぐことが最も重要なため、髄膜炎の基礎知識を知っておくことが大切です。

 

今回は「無菌性髄膜炎(むきんせいずいまくえん)」についての原因から対処法までのポイントを解説します。

 

無菌性髄膜炎の原因

髄膜炎にはウィルス性、細菌性、真菌性、寄生虫性、非感染性があり、髄膜炎の中でも細菌や真菌が検出されないのもを「無菌性髄膜炎」といい、ほとんどがウイルス性によるものと考えられています。

 

近年、無菌性髄膜炎の原因ウイルスで最も多いウイルスは、エンテロウイルス属で、全体の80%程度を占めています。

 

エンテロウイルス属には、エコーウイルスやコクサッキーウイルスなどがあり、子どもの夏風邪の代表としてよく知られている「手足口病」や「ヘルパンギーナ」の原因ウイルスでもあります。

 

その他、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の原因となるムンプスウイルスなども髄膜炎の原因として知られています。

 

これらのウイルスによる感染症の合併症としても、ウイルスが中枢神経に侵入し、髄膜が炎症を起こします。

 

無菌性髄膜炎の流行時期とかかりやすい年齢

無菌性髄膜炎は、エンテロウイルスが増加しはじめる、初夏から秋にかけて多く見られます。

 

ただしウイルス性の無菌性髄膜炎の場合、多くのウイルスが関与しているため、ウイルスの種類により季節的な流行もみられます。

 

全体にエンテロウイルスが占める割合が大きいため、7月頃からエンテロウイルス感染症による子どもの夏風邪などが増加する時期には、同ウイルスによる無菌性髄膜炎の増加にも注意が必要です。

 

かかりやすい年齢は、幼児から学童期が中心で、9歳以下が70%前後を占めていますが、どの年齢にもかかる可能性があります。

 

無菌性髄膜炎の感染経路

無菌性髄膜炎の感染経路は病原体によって様々ですが、主な病原体であるエンテロウイルス属では、経口感染(糞口感染)と飛沫感染です。

 

感染は以下の経路をたどります。

 

1、経口感染(糞口感染):糞便などの排泄物により病原体が付着した手で、口や鼻に触れることにより感染します。

 

2、飛沫感染:患者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる病原体による感染します。

 

無菌性髄膜炎の潜伏期間と感染期間

潜伏期間とは、ウイルスが体内で活動し、無菌性髄膜炎の症状が出るまでの期間のことです。無菌性髄膜炎は主な病原体であるエンテロウイルス属による発症の場合は、3日~6日の潜伏期間の後発症します。

 

ムンプスウイルスの場合は 16日~18 日など、潜伏期間はそれぞれのウイルスによります。

 

感染期間は、潜伏期間から症状が消失した後も2~4週間に渡り糞便中にウイルスが排泄されることがあり、その間はひとにうつります。糞便の処理には十分な注意が必要です。

無菌性髄膜炎の症状について

髄膜炎の初期症状は夏風邪とよく似ており、主に以下の症状が見られます。

・発熱

・頭痛

・嘔吐

・下痢

 

原因ウイルスよっては咽頭の炎症や発疹を伴うこともあります。

 

これらの症状が悪化すると、以下の症状が見られます。

 

・38~40度位の高熱

・うなじがこわばり固くなる

・首を前に曲げにくい

・光をまぶしく感じる

・けいれん

・意識が薄れる

・発症後1~2週間で回復する

 

このような症状が出てから、夏風邪ではないと気づくことが多くあります。

 

月齢の低い赤ちゃんの場合は、機嫌が悪い、泣き止まない、おっぱいやミルクを飲む量が少ない、抱っこされるのを嫌う、なども見られます。

細菌性髄膜炎との違い

無菌性と細菌性には、以下のような違いがあります。

 

■無菌性髄膜炎(ウイルス性)

無菌性の場合は、比較的軽症で自然に回復することも多く、後遺症もほとんど残らないとされています。

 

無菌性髄膜炎の多くは、脳炎を併発する前に治療できれば、予後も良好とされています。ただし軽症とはいえ油断は禁物です。

 

 

■細菌性髄膜炎

炎症の程度も強く、急に進行し、後遺症の確率は無菌性よりも高くなります。

 

脳細胞にまで影響を及ぼし、てんかんや水頭症、聴覚障害、発達障害などが現れることがあります。

 

月齢が低いほど合併症や後遺症、命にかかわる危険があります。

 

 

特に細菌性髄膜炎は、早期治療が望ましいのですが、両者とも初期は風邪の症状と違いがないため、診断が非常に難しい病気です。

 

発熱や嘔吐、頭痛、水分が摂れないなどを認めた場合は、かかりつけの内科、あるいは小児科への早めの受診が重要です。

無菌性髄膜炎の治療方法・病院での対処法

診断は血液検査や髄液検査で、髄膜炎かどうか、また無菌性か細菌性かを判断します。

 

髄液検査でウイルス性が疑われた場合、髄液、咽頭ぬぐい液、便を採取して病原体を検出します。

 

治療法は、ウイルス性には特異的な治療法はなく、頭痛・発熱・嘔吐を改善するための対処治療になります。

 

脱水症状がある場合は、輸液(点滴)が行われます。

 

症状が軽い場合は自宅療養になり1~2週間ほどで完治しまが、症状が重い場合は入院治療となります。

 

新生児や乳児期の早期に発症した場合は、早期診断・治療が重要です。

無菌性髄膜炎の予防方法

無菌性髄膜炎は、ムンプスウイルスによるものなど一部を除き、ワクチン接種はありません。

 

鼻汁や糞便等による手足を介した経口感染や、咳などの飛沫感染によって他人にうつるため、基本的な感染予防が大切です。

 

症状が消失したあとも2~4週間の長期にわたり、糞便中にウイルスが排泄されることがあります。

 

以下のことに注意しましょう。

 

・うがい、手洗いの習慣化。手洗いは流水と石鹸でしっかり手の平、甲、爪、指の間、手首の上まで30秒かけて洗う

・タオルの共有はしない

・おむつ交換の際、使用済みおむつはビニール袋に入れ、しっかり口を閉じて処理する

・排便の後やおむつ交換の後は、入念に手を洗い、うがいもする

・流行時期にはなるべく人ごみを避け、外出時にはマスクを着用する

幼稚園・保育園・学校の登園・登校について

無菌性髄膜炎は学校感染症の第3種とされており、出席停止期間の基準はなく「病状により医師において感染のおそれがないと認めるまで」となっています。

 

登校・登園の基準は、「全身状態が安定している場合は登校・登園可能」とされています。

 

特に保育所では、学校感染症対策にプラスして、乳幼児は児童・生徒等と比較して抵抗力が弱いこと、手洗いなどが十分に行えないなど、乳幼児の特性を踏まえた感染症対策が必要です。

 

保育所については「保育所における感染症対策ガイドライン」に基づいています。

 

参考:厚生労働相「保育所における感染症対策ガイドラインをご覧ください。

 

学校感染症には病状により出席停止の基準は定めれらていますが、病状は個人によって異なるため、子どもが感染症にかかった場合は必ず医師の指示に従い、登校の許可が出るまで十分に休養することが大切です。

 

おわりに

無菌性髄膜炎は、比較的軽症で、早期診断、治療により重症化することは少ないとされていますが、手足口病やヘルパンギーナ、おたふくかぜ等からの合併症として起こる可能性もあるため、油断は禁物です。

 

無菌性髄膜炎の流行時期についてはあまり知られていませんが、特に夏季に流行することを知っておき、子どもの夏風邪対策と共に感染予防に努めることが大切です。

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