日本泌尿器学会では頻尿は「起床から就寝までに8回以上排尿回数があること」と定義していますが、1日の排尿回数はかなり個人差があります。そのため、8回以下だったとしても自身で排尿回数が多いと感じていたり、排尿回数が多くて生活に支障をきたしている場合は頻尿に当てはまります。
頻尿の原因は?
水分を沢山摂取したり、お酒を飲むことでトイレが近くなることがありますが、これはあくまで一時的なものであるため、根本的な原因には当てはまりません。
頻尿になる原因は人によりさまざまですが、主に次のことが考えられます。
・加齢による膀胱機能の低下
加齢によって膀胱の尿を貯める機能が衰えたり、尿道や膀胱を支える骨盤底筋の筋力が低下することによって、頻尿を引き起こすことがあります。
・心因性
精神的なストレスが原因でトイレのことが何度も気になり、頻尿になってしまうことがあります。膀胱機能に異常はないため、排尿量は正常で、夜間に排尿で起きてしまう夜間排尿もあまり起きません。
・前立腺肥大
男性特有の病気で、前立腺が肥大することによって尿道を圧迫し、頻尿や残尿などの排尿障害を引き起こします。
・過活動膀胱
膀胱に尿が十分に溜まっていないのに、自分の意思とは別に膀胱が勝手に収縮してトイレにいきたくなってしまう病気です。加齢による骨盤底筋のトラブルや前立腺肥大症などの泌尿器系の病気、脳と膀胱を結ぶ神経の伝達トラブルなどが原因となるケースが多いです。
・尿路感染
尿道から細菌が感染して炎症を起こすと、膀胱の知覚神経が刺激されて頻尿になることがあります。女性の場合は膀胱炎、男性の場合は前立腺炎が原因となるケースが多いです。
上記以外にも糖尿病や薬の副作用として頻尿の症状が現れるケースもあります。
頻尿は市販薬で治る?
大きな原因疾患がなく、加齢や軽いストレスが原因となる頻尿症状であれば、市販薬や自宅でのトレーニングによる治療が可能です。
ただし、原因となる基礎疾患が潜んでいる場合はその病気によって対処方法が異なるため、基本的には病院の受診が必要となります。症状が重い、おしっこが出にくい、血尿がある、などの他に気になる症状がある場合は、必ず病院の診察を受けるようにしましょう。
頻尿に効く市販薬の成分
頻尿に効く市販薬の成分について解説します。
フラボキサート塩酸塩
フラボキサート塩酸塩は処方薬でも使用されている医療用成分です。処方薬だとブラダロンと呼ばれる薬がよく知られています。膀胱の収縮を抑制して、尿を貯める容量を増やす作用があり、尿意をおさえる効果があります。
●男性は服用不可●
ただし、この成分は前立腺肥大症の症状を悪化させる危険性があり、男性の頻尿は前立腺肥大症が原因となる可能性があるため、男性はフラボキサート塩酸塩の薬は使用できません。(医師の指導の元で服用する医療用の場合は、フラボキサート塩酸塩が男性に処方されるケースもあります。)
八味地黄丸
8種類の生薬が配合されている漢方薬です。体を温める効果があり、頻尿や軽い尿もれ、残尿間、夜間尿などに効果を発揮します。また、冷えにともなう足腰の慢性的な痛みやしびれを取るのに用いられることもあります。
牛車腎気丸
八味地黄丸に「牛膝」と「車前子」という生薬を加えた漢方薬が牛車腎気丸です。頻尿を含む排尿障害や腰の痛み、むくみ等に効果を発揮します。
頻尿に効くおすすめ市販薬
頻尿の市販薬には男女ともに服用ができる漢方薬と、女性のみが服用ができる西洋薬の2種があります。
男女ともに使える頻尿の薬:漢方薬
年齢 | 剤形 |
---|---|
5才以上 | 錠剤 |
八味地黄丸料を配合した錠剤タイプの漢方薬で、男性も安心して服用できる頻尿の市販薬です。頻尿や残尿感、夜間頻尿などの諸症状に効果を発揮します。
錠剤タイプなので薬が口の中に残る感じが少なく、漢方特有の味が苦手な方でも飲みやすい薬となっています。
また、商品に添付してあるQRコードを読み込むことで薬剤師へ無料相談することが可能です。薬に関する疑問や心配事を薬剤師に相談ができるので、安心して薬を使用することができます。
年齢 |
剤形 |
2才以上 |
顆粒 |
体を温め、体中の水分の流れをよくすることで、なかなか疲れが取れなくて冷えていた「腎」の働きを改善する漢方です。足腰などの慢性的な痛みやしびれの改善にも役立ちます。2才から服用が可能で、幅広い年齢層の方が使用できる頻尿の薬です。
顆粒タイプの薬なので、錠剤のような固形物を飲み込むことが苦手な方にもおすすめです。
年齢 |
剤形 |
成人(15歳以上) |
錠剤 |
牛車腎気丸は水分代謝に関わる腎の働きを助けるとともに、体を温めて血行を良くします。疲れやすく冷えやすい方の頻尿、排尿困難などにおすすめの薬です。錠剤タイプの薬なので、漢方の苦味が苦手な方でも服用がしやすいです。
年齢 |
剤形 |
成人(15歳以上) |
顆粒 |
パッケージでは「腰痛やしびれに効く」と書いてありますが、頻尿にも効くお薬です。1日の服用量が医療用医薬品の牛車腎気丸と同量の生薬成分で作られているため、医療用と近い効果を期待できます。
女性が使える頻尿の薬:西洋薬
年齢 |
剤形 |
成人女性(15才以上) |
顆粒 |
有効成分フラボキサート塩酸塩を配合した頻尿改善薬です。尿を出そうとする筋肉の緊張を緩めることで、頻繁だったトイレの回数を少なくします。女性しか使用できない市販薬ですが、西洋薬の成分を唯一配合しています。
お家でできる頻尿の対策・改善方法
頻尿や夜間頻尿(尿意で夜に起きてしまう)などの症状は、薬の服用と合わせて日々の生活習慣での工夫や、お家でできるトレーニングによって症状が改善するケースがあります。
水分の摂取量を減らす
頻尿や夜間頻尿に悩んでいる方は、夜寝る前は水分の摂取を控えましょう。ただし、尿意を気にしすぎて水分の摂取量が少なくなると、尿路感染や尿路結石の原因となるおそれもあるため、日中に適度な量の水分を摂取することを忘れないでください。
また、アルコールの摂取は睡眠を浅くし、利尿作用が高まることで夜間頻尿を悪化させます。夜寝る前のアルコールの摂取や、過度の飲酒は避けましょう。
骨盤底筋のトレーニングをする
膀胱や尿道を支える骨盤底筋を鍛えるトレーニングです。頻尿や尿もれは骨盤底筋の筋力が弱くなることによって引き起こされます。
弱まった骨盤底筋の筋力トレーニングを行うことによって、頻尿や尿もれなどの排尿トラブルの改善が期待できます。
【骨盤底筋トレーニングのやり方】
①腹筋などの他の筋肉の力を抜いた状態で、お尻の穴を身体の中に引き込むようにぎゅっと引き締める。(女性の場合は膣も同様に)
②数秒〜数十秒力を入れ続け、その後力を抜く。
③少し休んだらまた力を入れる。このサイクルを一日に何度か繰り返す。
最初は骨盤底筋以外の筋肉の力を入れないためにも、仰向けになってリラックスした状態で行うことがおすすめです。慣れてきたら立っている状態でも座っている状態でも行うことができるトレーニングですので、電車で立ってる時や仕事で座ってる時など、隙間時間を利用してトレーニングを行いましょう。
決まった回数はありませんが、ご自身の負担のない範囲で行うと良いでしょう。