インフルエンザの合併症とは?
インフルエンザは高熱などの激しい症状を起こすことがよく知られていますが、インフルエンザで本当に恐ろしいのは、危険な合併症を引き起こすことです。
インフルエンザで亡くなる人のほとんどは、インフルエンザ自体で亡くなるのではなく、併発した肺炎などの合併症が原因となっています。
インフルエンザの合併症には、インフルエンザウイルスが原因となる一次性のものと、インフルエンザウイルス以外の細菌感染による二次性または混合感染があります。
インフルエンザの合併症に特に注意が必要な方
インフルエンザが重症化したり、合併症を起こしやすい方たちはハイリスク群と呼ばれます。
ハイリスク群に当てはまるのは、次のような方です。
・妊婦
・5歳以下の子ども
・65歳以上の高齢者
また、次のような基礎疾患のある方もハイリスク群に分類されます。
・慢性肺疾患(喘息を含む)
・心疾患
・腎疾患
・肝疾患
・血液疾患
・神経疾患、神経筋疾患
・代謝異常(糖尿病を含む)
ハイリスク群の方は、まずはインフルエンザに感染しないことが重要ですが、インフルエンザを発症してしまった場合は重症化させないことが重要です。
代表的なインフルエンザの合併症
インフルエンザの死亡原因の90%以上を占める肺炎や、発症すると重篤となる急性脳症およびライ症候群、その他心合併症(心筋炎や心膜炎)、急性筋炎、急性胃腸炎、関節炎、中耳炎、副鼻腔炎などがインフルエンザの代表的な合併症です。
肺炎
肺炎は、インフルエンザウイルスによる肺炎と細菌感染による細菌性肺炎に分けられ、二次性細菌性肺炎の方が頻度が高くなっています。
肺炎になると以下のような症状があらわれます。
・高熱が続く
・咳や痰が出る
・呼吸が苦しくなる
・胸が痛い・苦しい
また、肺炎の原因によって症状や経過に以下のような特徴があらわれます。
◼︎インフルエンザ肺炎
インフルエンザを発症してから3日以内に急激に進行します。発症から4〜5日過ぎても、高熱、呼吸困難、チアノーゼなどが起こり、血が混じる痰がでる場合もあります。
◼︎二次性細菌性肺炎
インフルエンザの症状が治まったあとに、再び発熱、咳、膿のような痰などがあらわれたり、悪寒や咳、呼吸困難、多呼吸、頻脈などがみられます。
インフルエンザ肺炎について詳しくは、関連記事をごらんください。
インフルエンザ脳症・脳炎
インフルエンザ脳症は、インフルエンザをきっかけとして生じる脳症のことです。1歳がピークで主に6歳以下の小さな子どもが発症しやすくなっています。
発症後の死亡率は約30%と非常に重い病気であることが認識されていましたが、その後、死亡率は8〜9%ほどに下がったといわれています。しかし治った後にも25%の子どもに後遺症がみられるなど、変わらず注意が必要な合併症です。
インフルエンザ脳症は、インフルエンザの流行の規模が大きいほど発症が多発する傾向にあります。
インフルエンザ脳症の症状は非常に早く現れることが特徴で、インフルエンザの発熱から数時間〜1日のうちに神経症状があらわれます。
主な症状は、意識障害、意味不明な言動(異常行動)、痙攣(けいれん)などです。他にも、嘔吐や突然死、血液凝固障害、他臓器不全などがみられます。
インフルエンザ脳症について、詳しくは関連記事をごらんください。
ライ症候群
嘔吐、意識障害、痙攣(けいれん)、高熱などの症状が現れる急性脳症です。子どもが発症することがほとんどで、成人の発症例はまれです。
原因は不明といわれていますが、アスピリンなどサリチル酸系の解熱剤の使用により引き起こされる例もあります。
中耳炎
子どもが耳を痛がったら中耳炎の疑いがあります。子供の耳管(鼻の奥につながった場所)は、大人に比べ太く短いため、中耳炎を起こしやすくなっています。
心筋炎
心臓の筋肉にウイルスが感染して発症します。風邪に似た症状もあれば、胸痛、心不全のきざし、不整脈などがあり、むくみが出ることもあります。
心膜炎
ウイルス感染が多く、胸痛の他、呼吸困難など、単独または、心筋炎に合併して発症します。
気管支炎
乾いた咳が出始めたら、気管支炎が疑われます。風邪の症状に似ているため、気付きにくいため注意しましょう。
ウイルス性筋炎
風邪のような症状から起こり、腕や足の筋肉にだるさや痛みを感じます。歩行困難など重症化することもあり、点滴が必要になることもあります。
副鼻腔炎
鼻づまりや鼻水、頭痛、顔面痛などが起こります。放置するとさらに中耳炎なども引き起こしますので、早めに受診しましょう。
インフルエンザの合併症や重症化を防ぐための方法
インフルエンザワクチンの予防接種
その年のインフルエンザの流行株とワクチンに含まれている株の抗原性の一致状況や個人差によっても変わりますが、インフルエンザ予防接種では重篤な合併症や死亡を予防することができます。
ワクチン接種は、日本では65歳以上の健常な高齢者において、インフルエンザの発病を約45%阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったという報告があります。また、1歳以上で6歳未満の幼児では、発病(発熱)を約20~30%阻止する効果があったという報告もあります。
インフルエンザの予防接種について詳しくは関連記事をごらんください。
日常的な予防対策
予防接種に加え、日頃の予防対策も重要です。次の習慣を心がけましょう。
・手洗い
・食生活の見直しと十分な睡眠
・人ごみを避け、外出時はマスクを着用
・室内の換気と加湿
インフルエンザの予防について、詳しくは関連記事をごらんください。
おわりに
インフルエンザの合併症の対策としては、インフルエンザにかからないこと、かかったとしても重症化させないことが大切です。
そのために必要なことは、積極的なワクチン接種や毎日のインフルエンザ予防の積み重ねです。
流行のピークを迎える前に、インフルエンザの感染予防を意識して備えましょう。