インフルエンザウイルスの特徴

インフルエンザ感染症の原因となるのはインフルエンザウイルスです。インフルエンザウイルスの最大の特徴は、増殖力の強さです。

ウイルス粒子はひとつの細胞から約1000個作り出されるともいわれ、体内に侵入してから24時間後には1万個ものウイルスが発生します。

体内にはウイルスの増殖をおさえるための免疫機能がありますが、インフルエンザウイルスではウイルスが増殖するスピードに免役機能が追い付かないことがほとんどで、たった1つのウイルスが体内に入っただけでインフルエンザを発症することがあります。

インフルエンザウイルスの感染経路

インフルエンザウイルスの感染経路は大きく分けると「飛沫感染」と「接触感染」の2種類です。

飛沫感染ではウイルスが含まれた飛沫を口や鼻から吸い込むことで、ウイルスが体内に侵入して感染します。

接触感染ではインフルエンザウイルスに感染した人が、咳・くしゃみ・鼻水などウイルスが含まれた飛沫がついた手でドアノブやスイッチなどを触ると、触れた部分にインフルエンザウイルスが付着します。ウイルスが付着した場所を他の人が触れて、その手で口や鼻、目を触ることでウイルスに感染します。

インフルエンザの感染経路については関連記事をごらんください。

インフルエンザウイルスの潜伏期間

インフルエンザの潜伏期間はおよそ1~3日と比較的短いことが特徴です。インフルエンザウイルスは増殖速度が速いため、体内に侵入すると急激な速さで体内で増殖し症状を起こします。

潜伏期間中も体からウイルスを放出し、周りの人にウイルスをうつしてしまうおそれがあるため注意が必要です。

インフルエンザウイルスの大きさは?

インフルエンザウイルスの大きさは直径およそ80~120nm(ナノメートル)です。

ウイルスの大きさは種類によって異なり、20~970nmと幅があります。冬に流行するノロウイルスは25〜35nm、風疹ウイルスは約100nmです。

nmという単位は、細菌の大きさに用いられるμm(マイクロメートル:1mmの1/1000の単位)の1/1000の単位であり、ウイルスは細菌に比べるかなり小さいことがわかります。

インフルエンザウイルスの構造

インフルエンザウイルスはA型B型C型と種類によって若干異なりますが、基本的な構造は同じです。

インフルエンザウイルス

・RNA…遺伝子情報
・M1…アミノ酸残基からなる膜たんぱく質
・M2…たんぱく
・HA(ヘマグルチニン)…スパイスたんぱく(突起状のたんぱく質)
・NA(ノイラミニダーゼ)…スパイスたんぱく(突起状のたんぱく質)

インフルエンザウイルスの種類

インフルエンザウイルスには3つの種類があり、それぞれウイルスの特徴が異なるため感染した場合の症状にも違いがあります。

A型インフルエンザウイルス

A型インフルエンザウイルスには、ウイルスの表面を覆っているたんぱく質であるヘマグルチニンとノイラミニダーゼのパターンが多いという特徴があります。

ヘマグルチニンには16種類、ノイラミニダーゼには9種類の型があり、これらを組み合わせることで144種類もの亜型が存在します。

また、A型インフルエンザウイルスは人間以外の鳥や豚などにも感染するという特徴があります。

さまざまな動物に感染することでウイルスの変異が進み別のウイルスと変異するため、一度感染し免疫がついても別の型に感染しやすく、世界的な流行が起こりやすくなります。

インフルエンザA型の症状などについては関連記事をごらんください。

B型インフルエンザウイルス

B型インフルエンザウイルスも表面がヘマグルチニンとイラミニダーゼという2種類のたんぱく質で覆われていますが、それぞれに1種類しかないためA型ほどの多様性はありません。

B型インフルエンザウイルスには「ビクトリア系統」と「山形系統」の2種類があります。ウイルスの変異は起こりますがA型ほどの速度はないため、一度免疫がつけばA型よりも長い期間感染しにくく、世界的大流行は起こりにくくなっています。

なお、B型インフルエンザウイルスは主に人間に感染します。

インフルエンザB型の症状などについては関連記事をごらんください。

C型インフルエンザウイルス

ヘマグルチニンエステラーゼというひとつの糖たんぱくしか持っていないため、免疫がつきやすいウイルスです。

一般的には4才以下の子どもが感染しますが、感染しても多くの場合軽い風邪のような症状しか現れません。ウイルスの変異がないため、一度感染し免疫がつけば再度感染することはほどんどありません。

また、A型やB型は冬にかけて流行しますが、C型ウイルスは1年を通して存在しており流行時期のようなものがありません。

インフルエンザC型については関連記事をごらんください。

インフルエンザウイルスの生存期間

体内に侵入する前の、空気中に存在するインフルエンザウイルスの生存率は2~8時間程度とされています。

インフルエンザウイルスの生存率は、室内や外気などの温度と湿度に密接に関係しており、過去に発表された論文によると、室内の温度をおよそ22℃、湿度をおよそ50%以上で4時間以上保った場合、インフルエンザウイルスの生存率は約6%以下とほぼ死滅する値となることが報告されています。

インフルエンザウイルスの生存率は室温と湿度を整えることで下げることが可能です。

インフルエンザと湿度の関係については関連記事をごらんください。

ウイルスが体から排出される期間は?

インフルエンザウイルスが体内に侵入した場合、症状がでる前の潜伏期間からウイルスを熱が下がったあとも数日は鼻や口からウイルスを排出しています。

個人差はありますが、一般的には発症前日から発症後3~7日間はウイルスが排出されます。

ウイルスの感染力がもっとも強いのは発症から24時間~48時間、つまり熱などが出始めてから2〜3日目の間です。症状がもっとも重い期間は感染力もピークであるといえます。

その後、熱が下がるとともに体内のウイルス量は減少しますが、解熱後もウイルスは排出され続けます。

目安としては、発熱や咳、喉の痛みなどの症状があらわれた日の翌日から7日目まではウイルスが排出されているおそれがあります。激しい咳やくしゃみが出る場合には外出は避けましょう。

インフルエンザの感染力については関連記事をごらんください。

インフルエンザウイルスの予防方法

湿度を上げてウイルスを撃退!

インフルエンザウイルスには、加湿器などを使用して室内の湿度を上げることが効果的です。

室内の湿度が50~60%以上の場合、インフルエンザウイルスの活動は抑制されます。

反対に、乾燥しているとウイルスは活性化してしまうため、室内の湿度を保つよう心がけましょう。

体内に入らないようにすることが大切!

インフルエンザを発症するウイルスはそもそも生命器官を持っていないため、体内に入っていない床や布団などに付着したものは2~8時間程度で増殖する能力を失うと考えられています。

そのため、ウイルスが体内に侵入しないようマスクの着用や手洗いうがいを行うことが大切です。

インフルエンザウイルスにはアルコール消毒が効果的

インフルエンザウイルスにはアルコール消毒も効果的です。

インフルエンザウイルスの外側はエンベローブという脂溶性の殻で守られているため、アルコール(エタノール)がその膜を破壊し、感染力が抑えられます。

机やドアノブなどをアルコール成分を含ませた布やペーパータオルで消毒しましょう。

インフルエンザウイルスに対するアルコール消毒の効果や消毒液の作り方については関連記事をごらんください。

インフルエンザ菌とは?

インフルエンザウイルスとインフルエンザ菌は、どちらも名前に「インフルエンザ」がついていますが、性質や感染したことで起こる症状は全く違います。

インフルエンザ菌は1892年にインフルエンザ患者の痰から発見された細菌で、はじめはインフルエンザの原因であると考えられていたため、「インフルエンザ菌」と名付けられました。

その後、インフルエンザの病原体は細菌ではなくウイルスであることが判明しましたが、インフルエンザ菌という名前はそのまま残されています。

インフルエンザ菌は、構造の違いにより菌を覆う膜がある”typable”と膜のない”non-typable”に分類され、膜がある菌はa~f までの6種類あります。

  インフルエンザウイルス インフルエンザ菌
分類 ウイルス 細菌
流行時期 冬(A型・B型) 通年
治療薬 抗インフルエンザウイルス薬 抗生物質
増殖のしくみ 細胞にとりつき増殖 感染した生物から栄養をもらって増殖
感染することで
起こる病気
インフルエンザ 中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、敗血症、細菌性肺炎、など

インフルエンザ菌の感染経路

インフルエンザ菌もインフルエンザウイルスと同じく、保菌者の咳やくしゃみによって飛沫感染します。また、菌を持った人の気道分泌物(痰など)に触れたことによる接触感染もあります。

1歳児の30~50%が鼻腔にインフルエンザ菌を持っており、保育施設の入園後1~2か月でその保菌率は80%程度にまで上昇するといわれています。

インフルエンザ菌によって起こる主な病気

■インフルエンザ菌が引き起こす代表的な感染症

・中耳炎
・副鼻腔炎
・気管支炎
・肺炎
・関節痛 など

■子どもに多い感染症

・喉頭蓋炎(こうとうがいえん)
・髄膜炎(ずいまくえん)
・敗血症
・細菌性肺炎 など

子どもはインフルエンザ菌のb型に注意!

インフルエンザ菌の中では、Hib(ヒブ)と呼ばれるb型が特に有名です。現在日本で行われている「ヒブワクチン」は、インフルエンザ菌b型を予防するためのものです。

Hibは乳幼児の重症髄膜炎や呼吸器疾患、菌血症の原因となります。

国内では年間およそ600人がHibに感染し、病気にかかった子どもの5%が死亡、25%が聴覚障害などの後遺症が残るという報告もあります。

特に5才以下の子どもが多く、半数を1才未満の乳児が占めます。また、子ども以外にも慢性の肺疾患がある人や、免疫の弱った成人が感染することもあります。

インフルエンザ菌の治療方法は?

インフルエンザ菌には、細菌に対して効果のある抗生物質が有効です。

インフルエンザ菌に感染した場合には、内服薬などの抗生物質が処方されることがほとんどです。

使用される抗生物質には、リファンピシン、クラブラン酸アモキシシリン、アジスロマイシン、セファロスポリン、クラリスロマイシン、フルオロキノロン、トリメトプリム・スルファメトキサゾールなどがあります。

しかし近年、抗生物質に耐性のあるインフルエンザ菌が出現しており、治療が難しい場合があります。

インフルエンザ菌の予防には予防接種が効果的!

インフルエンザ菌はどこにでもいる常在菌のひとつであるため、殺菌処理などをするよりも免疫力を高めて感染を防ぐことが大切です。

免疫力を高めるために、栄養バランスのとれた食事を心がけ、十分な睡眠をとりましょう。

子どものインフルエンザ菌の感染を防ぐにはヒブワクチンが有効です。

欧米では1987年ごろから定期予防接種のひとつになっており、世界でも100か国以上でヒブワクチンが使われています。日本でも近年ヒブワクチンが許可されました。

特に子どもはHib感染により重大な病気にかかることが多いため、ヒブワクチンの接種を検討してみると良いでしょう。

おわりに

インフルエンザウイルスの構造や特徴を紹介しました。インフルエンザウイルスの種類ごとに、症状が異なるため注意が必要です。

インフルエンザシーズンは特に体調の変化に注意し、早めの受診を心がけましょう。

なお、インフルエンザと名前が似ているインフルエンザ菌は全く別のものです。対処法や症状も異なるため注意してください。