インフルエンザの感染には湿度が密接に関係しています。気道の乾燥による防御機能低下を防ぐためと、インフルエンザウイルスを死滅させるために湿度を保っておかなければなりません。
インフルエンザウイルスの生存率は温度と湿度に深い関係があることを証明した論文が発表されています。
インフルエンザ対策には温度22℃湿度50%以上!
1961年、G.J.HARPERはインフルエンザウイルスの生存率が温度と湿度に関係があることを発表しました。
論文によると、温度22℃程度・湿度50%以上でインフルエンザウイルスの生存率は2~4%と、ほぼ死滅する値であることがわかります。
下記は論文にあるウイルスの生存率と温度・湿度の関係をわかりやすくグラフにしたものです。
湿度が20%、なおかつ温度が10〜20℃の場合ではインフルエンザウイルスの生存率が高いことがわかります。この条件はインフルエンザが流行する季節の屋内外の条件に当てはまります。
一方で、湿度50%・80%の場合は温度が低い環境でも、生存率が半分を切っています。
20℃手前あたりからは生存率が10%を切り、30℃になるとインフルエンザは生存不可能となっています。
ウイルスの死滅にはどのくらいの時間が必要?
インフルエンザウイルスは温度22℃程度と湿度50%以上でほとんど生存できないことがわかりましたが、温度と湿度を調整してすぐにインフルエンザウイルスが死滅するわけではありません。
温度22℃程度・湿度50%以上の状態を4時間以上保つことで、ウイルスの生存率は6%以下になることが報告されています。
下記の表はインフルエンザウイルスの生存率を時間で計測したものです。
インフルエンザに効果的な湿度を保つには?
室内では加湿器を使用する
国が定める建築物衛生法では、相対湿度に関する管理基準を40%以上70%以下と設定しており、冬期に相対湿度を40%以上に保つためには適切な加湿が必要です。
また、厚生労働省はインフルエンザ対策として加湿器などで室内湿度を50~60%に保つことを推奨しています。
加湿器を使用し室内の乾燥を防ぐことで、気道粘膜の機能を正常に保つことができます。加湿器はメンテナンスが重要な機器なので、フィルターや機器内部の掃除は定期的に行いましょう。
◼︎相対湿度・・・その空気に含むことができる最大の水分量に対する実際の水分量の割合のこと。一般的な湿度計はほとんどが相対湿度(%)で表記されている。
空気清浄機は効果があるか?
インフルエンザの主な感染経路は飛沫感染・接触感染です。
飛沫感染・接触感染に対しては、インフルエンザウイルスの予防・対策効果は残念ながらあまり無いといえます。付着ウイルスにも多少の効果があると説明している機種もあるようですが、感染予防の効果があるとはいい切れません。
インフルエンザ対策として空気清浄機のイオン効果に頼るというのは、感染予防として万全ではありません。
インフルエンザと空気清浄機の関係については関連記事をごらんください。
湿度以外のインフルエンザ対策は?
インフルエンザ予防は、湿度に気を付けるだけでは不十分です。室内の湿度対策と合わせて下記の対策も行いましょう。
外出の際にはマスクを着用する
飛沫感染をある程度防ぐことができます。さらに乾燥を防ぎ、のどや鼻の粘膜機能を保護します。
人混みなどへの外出を避ける
インフルエンザウイルスは、インフルエンザにかかっている人のくしゃみや咳などで放出され、鼻腔や気管などに吸い込むことで感染します。
帰宅時の手洗い
外出先で指やのどに付着したウイルスを体内に入れないために手洗いを行います。インフルエンザだけでなく風邪のような一般的な感染症予防にも効果的です。
バランスのとれた食事と十分な休養
体力や抵抗力が低下するとウイルスに感染しやすくなります。日常的に休養を心がけ睡眠不足にならないように気を配りましょう。
インフルエンザの完全予防対策については関連記事をごらんください。
おわりに
インフルエンザが流行する冬期は外気の温度と湿度が低くなり、その影響で室内の湿度も低下し乾燥状態になります。
空気が乾燥すると、のどや鼻腔といった気道粘膜の防御機能が低下するためインフルエンザウイルスに感染しやすくなります。
室内では温度22℃以上・湿度50~60%に保ち乾燥を防ぐことでインフルエンザを予防できます。
室内環境の対策に合わせて、外出時にはマスクの着用で気管粘膜の乾燥を防ぎ防御機能を正常に保ちましょう。また、人混みへの外出を控える、手洗い、十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけましょう。