床ずれとは?

床ずれは正式名称を褥瘡(じょくそう)といいます。

ふとんやベッド、車イスなどに長時間同じ体勢で寝たり座ったりしていると、皮膚が触れ続けている部分に体重による圧迫がかかり、血流が悪くなります。圧迫され続けた部分の皮膚や皮下組織には十分な酸素や栄養が届かず、その部分はただれたり、傷ができてしまいます。

特に自分で寝返りができない寝たきりの方などに多くみられ、体の中でも骨が突出した部位で起きやすいのが特徴です。

床ずれが特に起こりやすい場所は「お尻」「頭部」「肩」「膝」「かかとなど足回り」です。

床ずれの原因や症状、予防について詳しい情報は、関連記事をごらんください。

軽い床ずれでは、皮膚が赤くなるだけのときもあります。

皮膚に赤色、またはピンク色の発赤が現れ、発赤部分を圧迫状態から解放して30分しても赤みが引かない場合は、すでに床ずれの可能性があります。

床ずれの進み方

床ずれの治療は段階ごとに行われます。

床ずれが起きてから約1~2週間を急性期といいます。急性期にうまく治療できれば、そのまま治ることもありますが、さらに床ずれの症状が進んでしまうと慢性期へと移ってしまいます。

慢性期は床ずれの深さが真皮までにとどまる「浅い床ずれ」と、真皮より深くまでおよぶ「深い床ずれ」に分けられます。

浅い床ずれは、ほとんどの場合短期間での治癒が可能ですが、深い床ずれは治癒までに数か月の時間がかかり、状態が悪いと治癒まで1年以上かかる場合もあります。

深い床ずれは治療が進むごとに「黒色期→黄色期→赤色期→白色期」と移り変わり治癒していきます。

急性期 慢性期 治癒
黒色期

黄色期

赤色期 白色期
傷口の保護
  壊死した組織の除去    
感染の制御や除去    
湿潤環境の保持(滲出液の制御 ・ 除去)  
  創辺縁の管理(ポケットの解消 ・ 除去)    

急性期・浅い床ずれの治療

急性期は床ずれが発生して間もないときで、発赤、紫斑、水疱、びらん(ただれ)などが主な症状です。慢性期に移った浅い床ずれも症状は同じく、発赤、水疱、びらんなどです。

治療はまず床ずれが起きた原因を探し出し、その原因を取り除くことが重要です。

すでに起きている急性期の床ずれや浅い床ずれにはドレッシング材や塗り薬、ガーゼによる患部の保護が行われます。

急性期の床ずれは、そのまま治る場合、浅い床ずれになってから治る場合、そして黒色期へと移行する場合の3パターンがあります。

黒色期~黄色期の治療

「黒色期」は壊死した組織が黒くなり、皮膚についた状態の時期です。この黒い組織が取り除かれ、壊死した脂肪組織が見えた状態の時期を「黄色期」といいます。

黄色期は患部からしみ出る体液「滲出液(しんしゅつえき)」が多いのが特徴で、感染を起こしやすい時期でもあります。

壊死組織は新しい細胞が成長するのに邪魔となるため除去し、細菌感染の制御を行います。

壊死組織の除去はメス、電気メス、ハサミによる外科的な除去や外用薬やドレッシング材によって行われます。

赤色期~白色期の治療

「赤色期」は肉芽組織という血管に富む組織が、欠損した部分を埋めるように成長し傷が治っていく時期です。傷の全体が肉芽組織によって覆われると、細菌感染は少なくなります。

「白色期」になると傷周辺から皮膚ができて傷は治癒に向かいます。

赤色期~白色期では、患部の適度な潤いの保持と患部の保護を行い、肉芽組織や皮膚ができるような環境を整えます。

また、肉芽形成を促進させる塗り薬などの使用することで治療を進めます。

その後は硬い皮膚の「傷あと」になります。この治癒したばかりの皮膚は弱くなっていて、床ずれになりやすい状態です。

床ずれが治った後も床ずれ予防のケアを続けていくことが大切です。

床ずれ治療の基本:塗り薬とドレッシング材

床ずれの治療の基本は「傷口の保護」と「傷口の程良いうるおいの維持」です。保護のためによく使用されるのが、ドレッシング材といわれる傷口を覆うフィルムと塗り薬です。

ドレッシング材と塗り薬は種類が豊富で、それぞれに特徴があり、床ずれの状態によって細かく使い分けられています。

塗り薬

塗り薬はそれぞれ役割が違うため、傷口の状態や使う目的に合わせて医師が選びます。

患部の保護を目的として塗り薬を使う場合は「白色ワセリン」「亜鉛化軟膏(酸化亜鉛)」「アズノール軟膏0.033%(ジメチルプロピルアズレン)」などの油脂性基剤軟膏を使います。

感染予防が目的の場合は「ゲーベンクリーム1%」や「アクトシン軟膏3%」などの外用薬が使用されます。短期間の使用であれば、「ゲンタマイシン」などの抗菌薬が配合された軟膏などが使用されることもあります。

また患部から滲み出る体液が過剰な場合は、体液の吸収作用・殺菌作用のある「カデックス軟膏0.9%」「ユーパスタコーワ軟膏」などで対応していきます。

このように塗り薬は症状に合わせて、細かく使い分けられています。

主な塗り薬 主な用途・目的
・亜鉛化軟膏
・アズノール軟膏0.033%
・患部の保護目的
・急性期の床ずれ
・発赤、紫斑、水疱などが見られる床ずれ
・びらん、浅い潰瘍の床ずれ
・プロスタンディン軟膏0.003% ・患部の保護目的
・皮膚の形成を促進させる目的
・びらん、浅い潰瘍の床ずれ
・ゲーベンクリーム1% ・急性期の床ずれ
・感染、炎症をともなう床ずれ
・患部の潤いを保つことによる痛みの緩和
・患部からの体液分泌が少ないとき
・アクトシン軟膏3% ・皮膚の形成を促進させる目的
・びらん、浅い潰瘍の床ずれ
・患部の体液分泌が多いときに使いやすい
・ユーパスタコーワ軟膏
・カデックス軟膏0.9%
・感染、炎症をともなう床ずれ
・患部の体液分泌が多過ぎるとき
・肉芽の形成を促進させる目的
・皮膚の形成を促進させる目的

ドレッシング材

ドレッシング材とはフィルムのような素材の医療材料で、傷口を覆うことで傷口を保護すると同時に適度な潤いを保ち、傷を早くきれいに治すことができます。ドレッシング材を使用する治療は、比較的新しい治療法になります。

清潔な傷口から滲み出る体液は、傷の治りを早くするためのものなので、ドレッシング材で覆うことで傷の治りを早めることができます。ただし、傷口が細菌感染などを起こしている場合は逆効果になるため、細菌感染を起こしていないこと確認した上で使用されます。

床ずれの急性期にドレッシング材中見出しを使用する場合、床ずれの様子が観察できる「ポリウレタンフィルム」「ハイドロコロイド」などが特に使用されます。

比較的傷口が浅く、感染症がない場合はドレッシング材が治療の中心となることが多くなります。

主なドレッシング材 種類 主な用途・目的
・オプサイトウンド
・バーミエイドS
ポリウレタンフィルム ・摩擦やズレから患部を保護する
・水疱がある床ずれも保護する
・デュオアクティブ
・コムフィールアルカスドレッシング
ハイドロコロイド ・潤いを保つ
・患部からの体液分泌が少ないとき
・潤いを保つことで痛みを緩和する
・ニュージェル
・グラニュゲル
ハイドロジェル ・幹部が乾燥しているとき
・患部からの体液分泌が少ないとき
・ハイドロサイトプラス ポリウレタンフォーム ・幹部からの体液分泌が多過ぎるとき
・潤いを保つことで痛みを緩和する
・アクセルAg
・アルジサイト銀
銀含有ドレッシング材 ・感染、炎症をともなう床ずれ
・感染抑制目的

痛み止めや抗菌薬が使用されることも

床ずれの痛み、処置時の痛みがひどい場合には、消炎鎮痛薬、向精神薬、抗不安薬、麻酔薬などが利用されることがあります。

使われる薬は患者の状態や症状によって変わります。

また、床ずれによって感染症を起こすこともあるため必要に応じて抗菌薬が使用されることもあります。

特に菌血症、敗血症、壊死性筋膜炎、進行する蜂窩織炎(ほうかしきえん)や骨髄炎が見られた場合に使用されます。

在宅での床ずれ治療:市販薬は使用できる?

在宅介護で床ずれが起きた場合は、皮膚が少し赤い程度の軽い床ずれであれば市販薬「コーフルS」などを使用して、しばらく様子を見てもよいでしょう。

成分のアクリノールが患部を殺菌・消毒し、酸化亜鉛が肌を保護するとともに、さらさらとした使用感で肌のすべりをよくします。

【第3類医薬品】メディケア コーフルS

ただし、患者の状態によっても市販薬が使用できるかは変わるため、あらかじめ医師に市販薬で様子を見てもよいか確認するようにしましょう。

ひどい床ずれや床ずれの悪化が起きた場合は、担当の医師かケアマネージャーに連絡しましょう。

特に発熱、患部の周りの赤み、腫れ、痛み、患部の熱っぽさ、ただれ、潰瘍、膿がでるなどがあるときは、すでに細菌感染が起こているおそれもあります。

入院での治療が必要か、自宅で介護しながらの治療が可能かは医師と相談しながら決めることになります。

自宅での治療は相談第一

自宅での床ずれの治療は、介護する側の体力的・経済的な負担や、介護される側の状態・症状などあらゆる面からの検討が必要です。

自宅で治療する場合も、訪問看護や床ずれの防止に役立つ介護用品のレンタル情報など、介護の助けになる情報があるので、一人で抱え込まず医師やケアマネージャーとよく相談することが大切です。

自宅での床ずれの管理は、まず医師や看護師から床ずれの状態や今後のケアについて説明を受ける必要があります。

床ずれの症状によって、治療・管理の仕方が変わるため医師・看護師の説明をよく聞いてください。

その他の床ずれ対策・治療

ドレッシング材や塗り薬だけで治療ができるわけではありません。患者の状態や床ずれの原因に合わせて、さまざまな処置が加わります。

体にかかっている圧を減らす

床ずれの最大の原因は体の一部に体重がかかっていることです。

床ずれになって間もない急性期では、まずは体の圧がかかっている部分の圧迫を減らします。

体圧分散寝具などを使い、体にかかる圧迫を分散します。

患部の洗浄

床ずれの傷口は、十分な量の生理食塩水または水道水で洗浄します。

基本的には消毒は必要ありませんが、傷口が明らかに感染などを起こしている場合は、洗浄前に消毒を行い、その後十分な量の生理食塩水または水道水で洗い流すことがあります。

症状・状況によって洗浄の仕方も変わってくるため、自宅の介護で行う場合は医師・看護師の指示にしたがって行いましょう。

ガーゼによる傷口の保護

ガーゼも傷口を覆い保護する目的で使用されます。

塗り薬などをガーゼに塗り、床ずれの部分を覆います。

ドレッシング材とガーゼのどちらを使用するかは、傷口の様子によって変わります。

外科的な処置

床ずれがひどい場合は、壊死した組織、老化した細胞、細菌感染を起こしている部分を手術などの外科的な方法で取り除くことがあります。

また、傷口を小さくするために手術を行うこともあります。

おわりに

床ずれは出来てしまうと非常に厄介なため、まずは予防が第一です。

在宅介護で床ずれができてしまった場合は、医師や看護師と協力して治療していくことが必要です。

自宅での治療が可能か、入院での治療が必要かは症状や介護する側の負担などあらゆる状況をふまえて判断されます。

床ずれ治療や在宅介護などに不安がある場合は、医師や看護師に伝えるようにしましょう。