蕁麻疹が起こるメカニズム
蕁麻疹の原因は、「アレルギー性」と「非アレルギー性」の2つにわけることができます。
どちらもヒスタミンという物質が関わるという点では同じです。大きな違いは抗体という体を守る免疫が関わっているかという点です。
アレルギー性
アレルギー性の蕁麻疹は、食品・薬・植物・虫刺されや動物の毛など、アレルギーの元となる原因物質が、体に入ってきた際に体を守る抗体が反応することで、蕁麻疹のきっかけとなるヒスタミンが皮膚の真皮にあるマスト細胞から分泌されて起こります。
アレルギーの原因物質が体の中に入ってから、15分から30分程度で症状が現れることが多くあります。
原因物質の特定には、医師の問診による症状の経過と、血液検査や皮膚に注射をする皮内テストなどを行います。
非アレルギー性
非アレルギー性の蕁麻疹は、抗体が関わらない形で蕁麻疹が起こります。
寒暖差・摩擦・日光・汗や造影剤の注射などが原因となることがあり、抗体を介さないでヒスタミンが分泌されて蕁麻疹が起こります。
非アレルギー性の蕁麻疹は、食品でも起こることがあります。ヒスタミンの材料となる「ヒスチジン」というアミノ酸が多く含まれている食品(カジキ・サバ・イワシといった赤身魚など)で適切に保存できていないなど、鮮度が落ちることでヒスタミンをつくる菌が増殖し、その結果食品中のヒスタミンが増えます。
増殖したヒスタミンが含まれた食品を食べることで、大量のヒスタミンが一度に体に入り、蕁麻疹が起こります。
なお、ヒスタミンは熱に強いため、加熱処理しても分解されません。
非アレルギー性の蕁麻疹は、造影剤などの薬剤が原因となっているものなど一部をのぞいて、原因がわからないことも多くあります。また、ストレスや疲労、感染症などが悪化の要因となることがあります。
蕁麻疹の症状
蕁麻疹の主な症状は赤みのある発疹とかゆみです。通常、症状は数十分から数時間程度で消えますが、1度消えた後に別の部位に症状が現れたり、1日程度続いたりすることもあります。
症状が1ヵ月以上続く蕁麻疹は、慢性蕁麻疹といいます。
自分自身の体を異物として認識することで起こる自己免疫疾患などが原因の場合もあり、夕方から夜にかけて症状が悪化することが多いです。
赤みのある発疹
蕁麻疹では、赤みがでている部分とそうでない部分の境目がはっきりしています。また、ミミズ腫れのような膨らみのある発疹が起こります。
シミなどになることはなく、蕁麻疹が消えた後の皮膚は跡が通常残りません。
かゆみ
蕁麻疹によるかゆみは、ヒスタミンが皮膚の知覚神経に刺激を与えることで起こります。かゆみだけでなく、ピリピリとした痛みをともなうこともあります。
病院を受診すべき蕁麻疹の症状
かゆみのない蕁麻疹
一過性の蕁麻疹の特徴は、発疹とかゆみです。
かゆみの症状がない場合は、蕁麻疹ではなく皮膚の粘膜などに出血が起きている紫斑(しはん)や血管の炎症のおそれもあります。
重度のアレルギー症状を起こしたことがある場合
食物や薬のアレルギーなどの初期症状は、皮膚のかゆみや赤み・蕁麻疹などの皮膚症状です。
過去に呼吸困難など重度のアレルギー症状を起こしたことがある場合には、症状が重くなる前に病院を受診しましょう。
皮膚以外の症状がある場合
皮膚の症状だけでなく、咳がでている・呼吸がしにくい・熱がある・悪寒がするなどの症状がある場合には、命にかかわる場合もあります。
嘔吐している場合には、吐いたものが気管につまることもあるので、場合によっては救急車を呼んでください。
蕁麻疹の治療方法
蕁麻疹の原因がはっきりとわかっている場合には、原因となるものを避けることが治療の基本となります。また、ストレスや疲労、感染症といった悪化のリスクとなる要因をできる限り取り除くことも大切です。
原因物質を取り除いたあとに、発疹やかゆみの原因となるヒスタミンの作用をおさえる抗ヒスタミン薬などによる薬物治療を行なっていきます。
病院を受診した際の治療
処方薬での蕁麻疹の治療の中心は、抗ヒスタミン薬の飲み薬による治療となります。
抗ヒスタミン薬には眠気のでやすい第1世代の抗ヒスタミン薬と眠気の少ない第2世代の抗ヒスタミン薬あり、第2世代の抗ヒスタミン薬が第一選択薬となります。
効果が不十分な場合には、補助的に漢方を使用したり、ステロイドの飲み薬を追加します。
また、すでに現れている発疹に対しては、抗ヒスタミン薬やステロイドなどの塗り薬を使用することもあります。
市販薬を使用した治療
市販薬でも同様に抗ヒスタミン薬の飲み薬・塗り薬での治療をおこなうことができます。
市販薬の抗ヒスタミン薬の成分は、第2世代の抗ヒスタミン薬の中でも比較的眠気がでやすい成分または第1世代の抗ヒスタミン薬が用いられているため、乗り物や機械類の運転操作は避けてください。
塗り薬では、複数のかゆみ止め成分が含まれているものやステロイド成分とかゆみ止め成分が混合されたものなどが販売されています。
市販薬の効果がみられない場合は病院へ
市販薬を5〜6日間使用しても改善しない場合や悪化した場合には、市販薬による治療を中止して医療機関を受診してください。
また、蕁麻疹だけでなく発熱や悪寒など全身に症状がでている場合は、市販薬で対応せずにすぐに医療機関を受診しましょう。
蕁麻疹の予防法
蕁麻疹は原因がはっきりしないことも多く、完全に予防することは困難です。
原因が特定できている場合など、一部の蕁麻疹は生活習慣の改善などで予防ができることもあります。
原因となるものを避ける
食物アレルギーのように蕁麻疹の原因となるものがはっきりしている場合には、原因となる食品を避けることで蕁麻疹を予防することができます。
原因となる物質を特定するためには、病院を受診し検査を受けることをおすすめします。
食品の保存方法
赤身魚などのヒスタミンが多く含まれた食品を取ることで起きる蕁麻疹は、魚のエラや内臓といったヒスタミンを作る菌が多く存在する部分を取り除き、冷蔵保存することで発症を予防することができます。
生活リズムを整える
不規則な生活による疲労・睡眠不足やストレス、過度の飲酒などは蕁麻疹の症状を悪化させることがあります。十分な睡眠をとり、体を休めることも蕁麻疹の予防となります。