むくみに効く薬はどうやって選ぶの?
むくみとは、血液とリンパの流れが滞ることにより、血管の外に水分がたまった状態です。そのため、むくみの治療薬は血液やリンパの流れを良くする働きのある漢方薬が中心となっています。
むくみの原因はさまざまで、塩分の多いものを食べたりお酒を飲んだ翌日はむくみやすく、生理前や妊娠中など体の状態によってもむくみの出やすさは変わってきます。
薬はむくみが出る部位や体の状態に応じて選びましょう。慢性的なむくみや異常なむくみを感じる場合は、病気が原因である可能性もあるため、病院を受診しましょう。
部位別のむくみにおすすめの薬
足・手のむくみにおすすめの薬
足や手など、体の末端はむくみやすい部位です。
防已黄耆湯は、関節痛およびむくみに適応があり、水太りによく効くとされています。
防風通聖散は排便量や排尿量を増加させる働きがあります。
アンチスタックスは、足の静脈の血流が滞る静脈還流障害による足のむくみに効く日本で唯一の飲み薬です。国内の臨床試験では、12週間で82.7%の改善率があったという報告があります。
薬剤名 | おすすめの方 |
防已黄耆湯 | ・体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向がある方 |
防風通聖散 | ・体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな方 |
アンチスタックス | ・日頃から足のむくみに悩んでいる方 ・足のだるさ、重さを感じている方 ・足のつっぱり感や痛みを感じている方 |
顔のむくみにおすすめの薬
顔のむくみは朝に起こりやすく、通常昼頃には自然と治っていきます。これは寝ているときは顔と胴体の高さが変わらず、顔に水分がたまることがあるためです。ただし、血流の滞りが原因で顔にむくみが出ることもあります。とくに女性の顔のむくみには、血流を良くする薬がおすすめです。
顔にむくみがあり、排尿困難やめまい・のぼせなどを伴っている方には桂枝茯苓丸、貧血気味の場合は当帰芍薬散が適しています。
薬剤名 | おすすめの方 |
桂枝茯苓丸 | ・比較的体力があり、肩こり、頭痛、排尿困難やめまい、のぼせて足冷えなどのある方 |
当帰芍薬散 | ・体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などの症状がある方 |
まぶたのむくみにおすすめの薬
まぶたは顔の中でもとくに皮膚が薄いため、むくみがおこりやすい部位です。塩分の摂り過ぎやお酒の飲み過ぎなどで、朝起きてすぐにまぶたのむくみが起こることがあります。
五苓散には利尿作用があり、お酒を飲んだ次の日のむくみに対してとくに効果があります。
薬剤名 | おすすめの方 |
五苓散 | ・のどが渇いて尿量が少ない方 |
生理前のむくみにおすすめの薬
むくみは月経前症候群(PMS)の代表的な症状です。
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類あります。生理前にはプロゲステロンが増加しますが、プロゲステロンには水分をため込む働きがあるため、むくみが出ることがあります。そのため、生理前のむくみには女性ホルモンのバランスを整える薬が効果的です。
日本で唯一のPMSの治療薬であるプレフェミンや、漢方薬である当帰芍薬散がおすすめです。
薬剤名 | おすすめの方 |
プレフェミン | ・乳房のはり、頭痛、イライラ、怒りっぽい、気分変調など月経前症候群の症状のある方 |
当帰芍薬散 | ・体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などの症状がある方 |
妊婦のむくみにおすすめの薬
妊娠中は血液の水分量が増加するため、むくみやすくなります。
以前は「妊娠中毒症」の症状にむくみがありましたが、現在は血圧と尿蛋白に異常がある場合に「妊娠高血圧症候群」と診断されます。血圧が正常で症状がむくみだけの場合は、妊娠高血圧症候群としては扱われません。
ただし、むくみがひどい場合には腎臓や心臓の病気のサインである可能性もあるため、かかりつけの医師に相談しましょう。
妊娠中のむくみには、副作用の少ない次のような薬がおすすめです。薬を購入の際は、薬剤師に妊娠中であることを伝えましょう。
薬剤名 | おすすめの方 |
柴苓湯 | ・吐き気や食欲不振があり、排尿が少なく、むくみがあり、のどが渇く方 |
当帰芍薬散 | ・体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などの症状がある方 |
五苓散 | ・のどが渇いて尿量が少ない方 |
産後のむくみにおすすめの薬
出産後のむくみは、血液中の水分量が増加する妊娠中の影響が残っていることが原因と考えられます。
さらに授乳には水分が必要なため、体内に水分をため込むこととなり、その分むくみがひどくなります。
そこで産後のむくみには、血液の水分量を正常化するために利尿作用があるものを選びましょう。
次の漢方薬は利尿作用があり、授乳に影響は出ないとされています。
薬剤名 | おすすめの方 |
柴苓湯 | ・吐き気や食欲不振があり、排尿が少なく、むくみがあり、のどが渇く方 |
当帰芍薬散 | ・体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などの症状がある方 |
五苓散 | ・のどが渇いて尿量が少ない方 |
更年期のむくみにおすすめの薬
更年期にはエストロゲンが減少するため、女性ホルモンのバランスが乱れます。
さらに血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経も乱れるため、血行が悪くなりむくみが起こります。
また、加齢により筋力が低下してリンパの流れも悪くなることも、むくみの原因となります。
薬剤名 | おすすめの方 |
当帰芍薬散 | ・体力虚弱で、冷え症で貧血の傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などの症状がある方 |
加味逍遥散 | ・体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちのある方 |
五積散 | ・体力中等度またはやや虚弱で、冷えがある方 |
温経湯 | ・体力中等度で、皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせる方 |
桂枝茯苓丸 | ・比較的体力があり、肩こり、頭痛、排尿困難やめまい、のぼせて足冷えなどのある方 |
冷え性の方のむくみにおすすめの薬
冷えは血行不良が原因です。冷え性の方は体の末端まで血液が循環しなくなるため、血液やリンパの流れが悪くなり、むくみが出ます。
冷え性の場合、血流を良くする生薬であるブシを含む次のような薬がおすすめです。
薬剤名 | おすすめの方 |
八味地黄丸 | ・体力中等度以下で、疲れやすく、四肢が冷えやすく、尿量が減ったり増えたりし、または尿が多く、ときに口が渇いたりする方 |
牛車腎気丸 | ・体力が低下した疲れやすく、腰から下が冷えやすい方 |
真武湯 | ・新陳代謝が衰えた虚弱な方で、疲れやすく、全身の冷えやめまい感があり、下痢しやすい場合 |
高齢者のむくみにおすすめの薬
高齢者は、加齢による腎機能の衰えによってむくみが出ていると考えられます。
腎臓をはじめとして、生殖器官・ホルモン系・カルシウム代謝・自律神経系の働きを助ける、次のような補腎剤を使用するとよいでしょう。
薬剤名 | おすすめの方 |
六味丸 | ・体力はあまりなく、疲れやすく、尿量が減ったりあるいは増えたりし、ときに手足がほてり、口が渇いたりする方 |
八味地黄丸 | ・体力中等度以下で、疲れやすく、四肢が冷えやすく、尿量が減ったり増えたりし、または尿が多く、ときに口が渇いたりする方 |
牛車腎気丸 | ・体力が低下した疲れやすく、腰から下が冷えやすい方 |
むくみにおすすめの市販薬の一覧
製品名 | アンチスタックス |
成分 | 赤ブドウ葉乾燥エキス混合物450mg |
効能・効果 | 軽度の静脈還流障害(静脈の血流が滞ること)による次の諸症状の改善:足(ふくらはぎ、足首など)のむくみ、むくみに伴う足のだるさ・重さ・疲れ・つっぱり感・痛み |
用法・用量 | ・1回2カプセル、1日1回朝に服用 ・20歳未満は使用不可 |
購入方法 | 要指導医薬品のため、薬剤師のいる薬局・ドラッグストアのみで購入可能。 |
製品名 | プレフェミン |
成分 | チェストベリー乾燥エキス40mg |
効能・効果 | 月経前の次の諸症状(月経前症候群)の緩和:乳房のはり、頭痛、イライラ、怒りっぽい、気分変調 |
用法・用量 | ・1回1錠、1日1回服用 ・18歳未満は使用不可 |
購入方法 | 要指導医薬品のため、薬剤師のいる薬局・ドラッグストアのみで購入可能。 |