おたふく風邪とは
おたふく風邪は、正式には流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)といい、唾液を作る耳下腺(じかせん)からあごの下の顎下腺(がくかせん)や舌下腺(ぜっかせん)にかけて、腫れと痛みが起きるのが特徴です。
おたふく風邪の原因
おたふく風邪の原因は、ムンプスウイルスの感染です。
おたふく風邪にかかりやすい年齢は3~6歳で、患者全体の約60%を占めます。
患者の中で特に4歳以下が多く、0歳でかかることはまれです。子供が感染しやすいですが、大人でも感染することがあります。
一度感染するとウイルスに対する抗体ができるため、繰り返し感染することはありません。
おたふく風邪の症状
おたふく風邪の症状の特徴である腫れは、ウイルス感染後すぐに現れるわけではなく、悪寒や微熱、酸味のあるものを飲んだときに耳下腺などに痛みを感じるなどの初期症状から始まります。
初期症状に続いて12~24時間後に唾液腺が腫れ、耳の付け根から、頬、あごにかけて腫れてきます。
耳下腺などが片側のみ腫れる場合と、片側が腫れたあとに1〜2日遅れて両側が腫れる場合があります。
口を開けたり、食べ物を噛んだり飲み込んだりするときに耳下腺などに痛みを感じます。
また、初期症状では微熱だったものが39~40℃の高熱まで上がることがありますが、人によっては熱が出ない場合もあります。
症状が出ないこともある
おたふく風邪は感染しても症状が現れない不顕性感染(ふけんせいかんせん)も多く、患者全体の30~35%は不顕性感染であることが報告されています。
不顕性感染でも抗体はできますが、おたふく風邪にかかったかどうかが分かりにくいため、血液中のムンプスウイルスの抗体を検査することで感染しているかどうか判断できます。
子供と大人で症状は違う?
おたふく風邪は、大人が感染すると子供に比べて症状が重くなる傾向があります。
おたふく風邪の患者のうち、男性の約20〜30%は睾丸炎、女性の約7%が卵巣炎を合併するという報告があります。
おたふく風邪の流行時期
おたふく風邪は1年中発生している病気です。おたふく風邪の流行は、冬の終わり〜春先にかけてピークを迎えます。
特に幼稚園や学校などの集団施設では、おたふく風邪は流行しやすくなります。
おたふく風邪の潜伏期間
おたふく風邪の潜伏期間は、2〜3週間です。
潜伏期間とは、ウイルスに感染してから痛みや腫れなどの症状が現れるまでの期間をさします。
潜伏期間でも人にうつる?
おたふく風邪は潜伏期間でも感染します。
腫れなどの症状がおさまるとともに感染力も弱まりますが、他人に感染しないとはいい切れないため注意が必要です。
おたふく風邪の感染経路
おたふく風邪はムンプスウイルスの感染により発症します。ムンプスウイルスは感染力が強いため、流行しやすい病気です。
ウイルスの感染経路は飛沫感染と接触感染です。
飛沫感染
感染している人の咳やくしゃみなどで飛散したムンプスウイルスを吸い込むことにより、口や鼻の粘膜に付着して感染します。
接触感染
感染している人の皮膚、粘膜やムンプスウイルスが付着した物に触れた手で、口、鼻、目を触ることにより病原体が侵入して感染します。
おたふく風邪の予防接種
おたふく風邪の予防には、ワクチンの接種が最も有効です。任意接種となっていますが、主治医によく相談しましょう。
予防接種は大人も受けられる
子供・大人ともに、おたふく風邪のワクチンを接種した場合の抗体の獲得率は90%前後です。大人がおたふく風邪に感染すると子供に比べて重症化しやすいため、予防接種を受けることをおすすめします。
予防接種の費用は?
おたふく風邪の予防接種は任意接種のため、費用は自己負担です。費用は病院によって異なります。
1回の接種料金は4,000〜6,000円が目安です。
予防接種の助成金を出している自治体も地域によってあるため、確認してみると良いでしょう。
予防接種の副反応
おたふく風邪の予防接種の主な副反応は、耳下腺の腫れや微熱です。
副反応とは、ワクチン接種の目的である「免疫をつくること」以外に起きる反応のことを指します。
予防接種の回数は?
しっかりと免疫をつけるために、おたふく風邪ワクチンは2回接種が推奨されています。
おたふく風邪の予防接種は1歳から接種できます。国立感染症研究所によると、ワクチンを摂取した後に耳下腺などが腫れる確率は1歳で一番低く、年齢が高くなるにつれて増加しました。このことから1回目は1歳で接種することが適切です。
2回目の接種時期は、発症する確率が高い3〜6歳の間に受けることが推奨されています。
おたふく風邪の検査
おたふく風邪の検査には、確定診断と抗体検査があります。
おたふく風邪の診断は通常、問診や触診で腫れなどの症状を見たり、周囲でおたふく風邪が流行しているかなどの状況を踏まえて判断します。
おたふく風邪には似た症状の病気がいくつかあるため、断定的な診断をするのは難しいことがあります。
断定的な診断をすることを、確定診断といいます。
おたふく風邪の確定診断は、抗体検査をして体内にムンプスウイルス対する抗体があるかどうかの診断になります。抗体検査は血液検査や唾液検査など、いくつかの方法があります。
しかし、抗体検査は診断結果が出るまでに時間がかかることが多いため、検査結果が出る頃にはおたふく風邪が治っている可能性があります。そのため、おたふく風邪の診断は症状や周囲の状況からの診断で済ませて、検査をしないことも多くあります。
おたふく風邪の治療・薬
2017年12月現在、おたふく風邪に対する治療薬はないため、発熱や痛みに対しては解熱鎮痛剤を使用するなど現れている症状に対して対処するしかありません。
脱水や合併症がみられる場合は、入院や点滴が必要なこともあります。
おたふく風邪の治療の基本は、外出を避け、家で安静に過ごしながら回復を待つことです。
食事はどうする?
おたふく風邪にかかったときの食事は、すっぱいものや刺激物は避け、やわらかい食べ物を選びましょう。
すっぱいものや刺激の強い食べ物は腫れの痛みを増強するおそれがあります。
症状が強く出ているときは噛まずに口にできるゼリー・プリン・ヨーグルト・スープなどが良いでしょう。
少し症状が落ち着いてきたら、よく煮込んだうどんやおかゆなど、なるべく強く噛まなくても済むような食事をとりましょう。
お風呂は入ってもいい?
おたふく風邪にかかったときのお風呂は、腫れがひどい時は控えましょう。どうしてもお風呂に入りたい場合はシャワーで済ませ、腫れている部分にシャワーを当てないようにします。
おたふく風邪は腫れている部分に熱を持っているため、腫れている部分を冷却シートなどで冷やします。
腫れが引いてきたらお風呂に入りましょう。
おたふく風邪の予防
おたふく風邪の最も有効な予防方法は、予防接種です。おたふく風邪のワクチンを接種することで、ムンプスウイルスに対する抗体を獲得することができます。
そのほかの予防方法は、手洗いやうがいを日頃から心がけることが有効です。
ムンプスウイルスは消毒薬への抵抗性が比較的弱いため、アルコール消毒も有効です。
おたふく風邪の出席停止期間
おたふく風邪は学校保健安全法によって第2種の感染症に定められており、出席停止の対象となっている感染症です。
出席停止期間は「耳下腺、顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで」と定められています。
学校保健安全法での出席停止期間が適用されるのは、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・大学・高等専門学校です。
保育園は学校保健安全法に含まれていませんが、厚生労働省の定める「保健所における感染症対策ガイドライン」により、保育園は学校保健安全法に準拠していると示しています。
まず医師によりおたふく風邪と診断された場合は、速やかに園・学校へ連絡してください。
出勤はいつからできる?
大人がおたふく風邪にかかった場合、出勤停止期間は法律では定められていません。
腫れの症状がおさまったあとは感染力が低くなりますが、確実に感染しないとはいい切れないため、出勤する日については会社と相談しましょう。
妊婦のおたふく風邪感染について
妊娠中のおたふく風邪は大人の感染と同様、重症化や髄膜炎などの合併症がおきるおそれがあります。
特に妊娠初期のおたふく風邪の場合には、胎児死亡や流産、早産のリスクが高まるため、お注意したい感染症の一つです。
おたふく風邪の胎児への影響については、先天異常や奇形のリスクは少ないと報告されています。
治療法は基本的に、痛みや熱などの症状をやわらげる治療になります。
妊娠中におたふく風邪に感染したと思われる場合は、速やかにかかりつけ医に相談しましょう。
妊娠中におたふく風邪の予防接種は受けられる?
妊娠中は基本的にワクチンの接種はできません。
妊娠を希望していて過去におたふく風邪に感染したことがない場合は、ワクチン接種をしておくことが大切になります。
妊娠中の予防法は、うがい・手洗い・マスク・人ごみを避ける・子供からの感染に注意するなど、基本的な予防策しかありません。
妊娠中は家族全体で感染予防に努めましょう。
おわりに
おたふく風邪の治療は発熱に解熱剤を使用するなど、すでに出ている症状に対する処置をするしかないため、予防をすることが大切です。
おたふく風邪のワクチン接種をし、流行の季節には手洗い・うがいなどの感染予防を徹底しましょう。