夜尿症とは?
夜尿症は、夜寝ているときに不随意に尿を漏らしてしまう病気です。夜尿症は子どもだけではなく大人もなり得る病気です。
夜尿症と似ている症状としては尿失禁があります。尿失禁は昼間に尿が漏れるもので、夜尿症は夜寝ている間に尿が漏れるものとして区別されています。
なお、世界保健機関(WHO)の定義によると、「7歳未満では1カ月に2回以上の夜尿、7歳以上では1カ月に1回以上の夜尿」が起こる場合に夜尿症と呼ぶとされていましたが、診療に合わないと指摘され、国際小児禁制学会が「5歳以降で、1ヶ月に1回以上の夜尿が3ヶ月続くもの」と追記し、この基準を元に治療が行われています。
この記事では、夜尿症の中でも大人の夜尿症について取り上げ、大人の夜尿症の原因と対策について解説します。
夜尿症の分類
夜尿症は、症状が継続している期間や、夜尿以外に症状がともなうか否かによって分類されます。
夜尿症の分類には「一次性夜尿症と二次性夜尿症」と「単一症候性夜尿症と非単一症候性夜尿症」の2種類があります。これらは、症状が継続している期間や、夜尿以外に症状がともなうか否かによって分類されます。
それぞれの詳細は次の通りです。
一次性夜尿症・二次性夜尿症
一次性夜尿症は生まれてから大人になるまでずっと夜尿の症状が続いている夜尿症で、二次性夜尿症は6ヶ月以上夜尿の症状がおさまっていたけれども夜尿の症状が再発してしまった夜尿症です。
一次性夜尿症に比べて二次性夜尿症は、ストレスや精神疾患、病気などの原因が隠れているおそれが多くあります。
単一症候性夜尿症・非単一症候性夜尿症
単一症候性夜尿症は、夜尿以外の症状がない夜尿症のことです。
非単一症候性夜尿症は、夜尿の症状に加えて頻尿や残尿感、昼間にも尿を漏らしてしまうといった別の症状をともなう夜尿症のことをいいます。非単一症候性夜尿症の方が治りにくく、他の病気が原因となってる場合が多く見受けられます。
大人の夜尿症の原因|考えられる病気は?
夜尿症の原因には、生活習慣の問題・尿を作る機能や尿を溜める機能の異常・睡眠の異常など、多くの要因が絡んでいます。
また、大人の夜尿症に多く見られる非単一症候性夜尿症の場合はなんらかの病気が原因となっている場合があります。
大人の夜尿症で考えられる原因は次の通りです。
夜間の尿量が多い(夜間多尿)
夜間に作られる尿の量が多いことが夜尿症の原因になることがあります。
通常、睡眠中には尿量を抑制する物質である抗利尿ホルモンが分泌されます。この抗利尿ホルモンが、自律神経の乱れなど何らかの要因で減少したり、働かなくなったりすると、夜間多尿の原因となります。
また、夜間に尿量が増えてしまう場合に考えられる病気は以下のようなものがあります。
■尿崩症
尿崩症とは、抗利尿ホルモンの合成・分泌が障害されたり、抗利尿ホルモンに対する腎臓の反応性が低下し、多量の尿が排出されてしまう病気です。
主に多尿の症状が現れ、常に水分が排出されるために脱水状態になりやすく、喉が渇いて水分を多量に摂取するようになるのが特徴です。
■糖尿病
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度である血糖値が高い状態が続く病気です。
初期症状はありませんが、症状が進行すると、多尿・喉の渇き・倦怠感・食後の眠気・目のかすみなどの症状が現れます。
神経障害や腎障害、眼障害などのさまざまな合併症を引き起こしやすいため、早期の治療が必要な病気です。
■睡眠時無呼吸症候群(睡眠障害)
睡眠時無呼吸症候群の症状として夜間の多尿や頻尿が現れる場合があります。
睡眠時無呼吸症候群の主な症状は、大きないびき・日中の眠気・朝の頭痛などがあげられます。
膀胱の機能障害
頻尿・尿意が我慢できない(尿意切迫感)・尿失禁・尿漏れなどの症状が見られる場合には、膀胱の機能障害が起こっているおそれがあります。
膀胱の機能障害として疑われる病気は以下の通りです。
■尿道狭窄症
尿道狭窄症は、尿道が細くなって尿が出にくくなるなどの排尿障害が起こる病気です。男性に多く見受けられます。
主な症状としては、尿が細くなる、尿の勢いがなくなる、排尿に時間がかかる、いきまないと排尿できない、頻尿、残尿感などがあります。
原因には、先天性のものと後天性のものがあります。後天性の原因としては、自動車事故などの外傷によるものや細菌の感染によるものなどがあげられます。
■過活動膀胱
過活動膀胱は、膀胱に尿が溜まっていなくとも、自分の意思とは無関係に膀胱が収縮する病気です。主な症状としては、急に尿がしたくなって我慢できなくなる尿意切迫感や、頻繁にトイレに行くなどがあげられます。
過活動膀胱になる原因は、加齢による膀胱の老化や前立腺肥大症による排尿障害の影響がありますが、突発性で原因不明のものが多い傾向にあります。
■神経因性膀胱
神経因性膀胱とは、膀胱から大脳にいたる神経の一部の障害によって、膀胱の動きを制御する機能が正常に働かない状態のことをいいます。
神経因性膀胱になると、今までは無意識にできていた排尿が上手くいかなくなる排尿障害が起こります。神経因性膀胱の主な症状は、排尿困難、頻尿、尿失禁などです。
原因は、糖尿病による末梢神経障害や腰部椎間板ヘルニア、子宮がんや直腸がんの骨盤内手術時における神経損傷、脊椎の損傷などがあります。←膀胱の神経という表現はあまりしないと思うので、削りました。
ストレス
過度なストレスを受けることにより、自律神経が乱れて膀胱の機能が正常に働かなくなったり、睡眠障害が起こったりして夜尿の症状が現れることがあります。
特に離婚や家族の死別、引っ越し、事故、転職などのイベントは強いストレスとなるため、夜尿症を引き起こしやすくなります。
大人の夜尿症の対策
大人の夜尿症の対策としては次のようなものがあげられます。
寝る前のアルコールを控える
アルコールには利尿作用があります。
夜寝る前に飲酒をしてしまうと、寝ているときにアルコールの利尿作用が働き夜尿が起こりやすくなってしまうおそれがあります。
夜尿を防ぐためにもなるべく寝る前の飲酒は控えましょう。
市販の漢方薬を使う
夜尿に効く市販薬はありませんが、夜間に尿で起きてしまう場合に効果を示す市販の漢方薬はあります。
しかし、漢方薬は作用が穏やかであるため、夜尿症が軽症の場合に使用するか、あるいは病院で処方された薬と併用をすることが望ましいとされています。
夜尿症に効果の期待できる漢方薬は次の通りです。
夜間にトイレで起きてしまう方におすすめの市販薬は次の通りです。
■睡眠障害による夜尿に
漢方である抑肝散は、夜尿症の人の睡眠を改善することにより夜尿症に効果を発揮します。
睡眠障害による夜尿におすすめの漢方薬は「抑肝散加陳皮半夏」です。
■多尿による夜尿に
おむつを使う
夜尿を起こしてしまったときのために、あらかじめ大人用のおむつを使用しておくと良いでしょう。おむつを使用している安心感によって、夜尿が起こりにくくなる効果も期待できます。
おすすめの大人用のおむつは「ライフリー 一晩中あんしん 尿とりパッド 夜用」です。
おわりに:気になる方は病院へ
夜尿症は直接命に関わる病気ではありませんが、症状に悩まされている方は近くの泌尿器科を受診しましょう。泌尿器科では夜尿症の具体的な原因を突き止め、適切な治療を行うことができます。
夜尿の症状が出ることによって生活に支障が出てしまったり、夜尿症の対策を行っても改善が見られない場合は、病院を受診する目安になります。