痔に効く坐薬(坐剤)はどれがいい?|市販薬の選び方や飲み薬との違いも解説
痔に効く坐薬の効果
痔に効く坐薬は、抗炎症成分や痛みを鎮める成分、出血をおさえる成分など薬によってさまざまな成分が含まれており、痔による痛み・出血・腫れ・かゆみを改善する効果があります。
痔に効く坐薬は、主に肛門の内側にできたいぼ痔に使います。
痔の種類
痔は大きく分けて、いぼ痔、切れ痔、痔ろうの3つに分けられます。
いぼ痔と切れ痔は市販薬で対処できますが、肛門部周辺に膿が溜まり体外に出てしまう痔ろうは手術が必要なこともあるため、なるべく早く病院を受診しなければなりません。
患部の場所や症状によって適した薬が異なるため、まずはご自身の痔がどの種類に該当するのかを把握しましょう。
| 痔の種類 | 特徴 | |
|---|---|---|
| いぼ痔 | 内痔核 | ・肛門の内側にできるいぼ痔 ・痛みが少ない ・排便時に出血する |
| 外痔核 | ・肛門の外側にできるいぼ痔 ・痛みがある ・大きく腫れると痛みが激しくなる | |
| 切れ痔 | ・肛門の皮膚が切れたり裂けたりした状態 ・排便時に強い痛みを感じる ・出血は少ない | |
| 痔ろう | ・お尻から膿が出ている ・お尻が熱い ・肛門周辺が腫れてズキズキと痛む | |
痔で病院を受診する目安
痔は、悪化すると手術をしなければならないこともあるため、次に当てはまる場合は病院を受診しましょう。
病院を受診する際は、肛門科を受診するとよいでしょう。
| 痔で病院を受診する目安 | ・肛門からいぼのようなものが出ている ・いぼが大きくなり、激しい痛みを伴う ・排便時に我慢できないほどの強い痛みがある ・出血が多い ・お尻から膿が出ている ・お尻が熱い ・肛門のまわりが腫れてズキズキと痛む ・発熱がある ・便の表面だけではなく、便全体に血が混ざっている ・便が黒い ・市販薬を使ってもよくならない など |
|---|
痔に効く坐薬・軟膏・注入軟膏と飲み薬の違い
痔の薬は、肛門の内側や外側の患部に直接使用する「外用薬」と飲む「内服薬」があります。
外用薬には、坐薬以外に軟膏や注入軟膏なども含まれます。
外用薬と内服薬それぞれの違いは、以下の通りです。
| 特徴 | |
|---|---|
| 外用薬 (坐薬など) | ・主に肛門の内側に使う坐薬と、外側に使う軟膏、 肛門の内外両方に使える注入軟膏があり、 痔の種類と症状によって使い分ける。 ・患部に直接作用する。 ・いぼ痔と切れ痔に使える。 |
| 内服薬 (飲み薬) | ・錠剤、顆粒剤などがある。 ・手を汚さずに使用できる。 ・いぼ痔、切れ痔だけでなく、軽度の脱肛に使える薬もある。 ・痔と便秘を両方ケアできる薬がある。 ・血流にのって患部に届くため、外用薬に比べ 効果はゆっくりと現れる。 |
痔に効く坐薬と飲み薬は併用してもいい?
痔に効く坐薬と飲み薬を併用する場合、併用禁止の薬はありませんが、症状や体質は様々なため、併用する際は、医師・薬剤師にご相談ください。
痔に効く坐薬
痔に効く坐薬は、痔による出血がある場合は出血をおさえる成分、いぼ状の腫れがある場合は、血液がたまった状態(うっ血)を改善する成分など、ご自身の症状によって適した成分が配合された薬を選びましょう。
また、抗炎症成分として、比較的作用が強いステロイド成分と、作用が穏やかな非ステロイド成分があります。いぼ痔などで腫れの症状の度合いが強い場合は、ステロイド成分配合の薬がおすすめです。
ボラギノールA坐剤
| 特徴 |
|---|
| ・ステロイド配合 ・うっ血の改善を助ける成分、傷の治りを助ける組織修復成分なども配合 ・スースーしない方がいい方に |
出血・腫れ・かゆみなどの炎症をおさえるステロイド成分以外に、末梢の血液循環をよくすることで、患部のうっ血の改善を助ける成分、傷の治りを助け、組織を修復する成分、痛みやかゆみを鎮める成分が配合されています。
また、体温ですみやかに溶ける油脂性基剤が使われています。
清涼成分は、含まれていないため、スースーしない方がよい方に適しています。
■用法用量
被包を除き、以下の量を肛門内に挿入してください。
| ・成人(15歳以上):1個/回、1〜2回/日 ・15歳未満:使用しないでください |
■有効成分
| プレドニゾロン酢酸エステル、リドカイン、アラントイン、ビタミンE酢酸エステル(トコフェロール酢酸エステル) |
プリザエース坐剤T
| 特徴 |
|---|
| ・ステロイド配合 ・出血や腫れをおさえる成分、うっ血の改善を助ける成分、殺菌成分なども配合 ・スーッとする使い心地 |
ステロイド成分に加えて、出血や腫れをおさえる成分、うっ血の改善を助ける成分、細菌の感染をおさえて傷口の悪化を防ぐ殺菌成分のほか、傷口の治りを助ける成分、痛みとかゆみを鎮める成分、かゆみ止め成分が含まれています。
かゆみ止め成分としてl-メントールが入っているため、スーッとする使い心地です。
挿入後は、患部付近で止まって、溶けて、効果を発揮します。痔の症状のなかでも、出血が気になる方におすすめです。
■用法用量
以下の量を肛門内に挿入してください。
| ・成人(15歳以上):1個/回、1〜3回/日 ・15歳未満:使用しないでください |
■有効成分
| ヒドロコルチゾン酢酸エステル、塩酸テトラヒドロゾリン、リドカイン、l-メントール、アラントイン、トコフェロール酢酸エステル、クロルヘキシジン塩酸塩 |
ボラギノールM坐剤
| 特徴 |
|---|
| ・ステロイド無配合 ・抗炎症成分、うっ血の改善を助ける成分、組織修復成分なども配合 ・スーッとする成分無配合 |
非ステロイドの抗炎症成分が配合された坐薬です。
そのほかにも、末梢の血液循環をよくし、うっ血の改善を助ける成分、傷の治りを助ける組織修復成分、痛みを鎮める成分が含まれています。
スーッとする成分は入っておらず、体温ですみやかに溶ける油脂性基剤が使われています。
■用法用量
被包を除き、以下の量を肛門内に挿入してください。
| ・成人(15歳以上):1個/回、1〜2回/日 ・15歳未満:使用しないでください |
■有効成分
| リドカイン、グリチルレチン酸、アラントイン、ビタミンE酢酸エステル(トコフェロール酢酸エステル) |
坐薬の使用が適した肛門内側のいぼ痔とは?
いぼ痔は、正式名を「痔核」といい、肛門付近にいぼのような突起や腫れができる痔です。
肛門の内側にできたいぼ痔を内痔核、肛門の外側にできたいぼ痔を外痔核といいます。
内痔核と外痔核の症状
内痔核と外痔核は、できる場所に違いがあるため、その症状は異なります。
痔の中で最も多いのが内痔核です。内痔核ができる肛門の内側には、痛みを感じる知覚神経が通っていないため、痛みを感じることは少なく、出血が起こって初めて気づくこともあります。
症状が進行すると、炎症などによる痛みを感じたり、大きくなったいぼ痔が排便時に肛門の外に出てくる「脱肛」を起こしたりします。
対して外痔核は、肛門外側の皮膚に知覚神経が通っていることから、痛みを感じます。
炎症によって血栓ができて大きく腫れると、激しく痛むこともあります。
| 症状 | |
|---|---|
| 内痔核 | ・症状が軽いうちは痛みが少ない ・排便時に出血する |
| 外痔核 | ・痛みがある ・大きく腫れると痛みが激しくなる |
痔に効く坐薬の入れ方
①シートから1個を切り離し、矢印のある開け口の方向を確認します。
②開け口をそのまま左右にはがし、坐薬を出します。
③坐薬は、中腰姿勢もしくは座ったままの姿勢で挿入します。
中腰姿勢になったら、坐薬の底を持ち、先の方から坐薬が全部肛門内に入るまで、指で十分に押し込んでください。
④その後、手でおさえながらゆっくり立ち上がると、スムーズに挿入できます。
中腰姿勢が難しい場合は、横に寝た姿勢でも構いません。
※排便後、入浴後もしくは就寝前に使用すると効果的です。
挿入後の注意点
●坐薬が外に出ないよう、挿入直後の激しい運動はなるべく避けるようにしてください。
●挿入後、異物感が残ることがありますが、坐薬が溶けるにしたがいなくなっていきます。
●挿入後の排便時に油のようなものが出ることがありますが、これは油脂性基剤の溶けたものであるため、心配いりません。
痔に効く坐薬の保管方法
坐薬は体温で溶けるように設計されています。そのため、高温・直射日光は避けて保管してください。
また、正しい方向で保管されないと、溶融した坐薬が再固化した場合、変形してしまうため、坐薬の先端が下になるように立てた状態にして外箱に入れ、保管してください。
外出時に携帯する際は、バッグの中などでは日差しを避け、停車中の車の中などに放置はしないでください。
痔を繰り返さないために気をつけること
痔の再発を予防したり、悪化させないためには、排便習慣や食生活、生活習慣の改善が大切です。
排便習慣の見直し
◎排便の際に無理にいきまない
便意がないときに排便しようとしていきむと、肛門に余計な圧力がかかり、うっ血して痔の誘引になったり、痔を悪化させたりすることがあります。
排便時には、完全に出し切ろうと必要以上にいきまないようにしましょう。
◎おしりを丁寧に拭く
排便後は、ゴシゴシこするのではなく、紙を押しあてるようにして優しく拭くようにしましょう。
また、便の質などによっては、何回も拭かないと便がとれにくい場合もあるため、必要に応じてトイレの温水洗浄機能を使って温水で洗うようにしましょう。
ただし、おしりの皮膚はデリケートなため、強い水圧で洗ったり、洗いすぎたりしないようにしましょう。
食生活の見直し
◎便秘や下痢にならないよう、食物繊維を多く含んだ野菜や豆類、イモ類、海草類などを多くとりましょう。
◎朝食の後は便意が起こりやすいため、朝食をきちんととりましょう。
◎便秘の解消のためには、十分な水分を摂取することも大切です。
◎下痢を起こしやすく、肛門を刺激しやすいため、香辛料などの刺激物は控えめにしましょう。
◎過剰なアルコールは、症状を悪化させることがあるため、飲酒はほどほどにしましょう。
生活習慣の見直し
◎肛門を清潔に保つために、また、患部の血行を改善するために、できるだけ毎日湯船につかるようにしましょう。
◎長時間座りっぱなしでいると、肛門部がうっ血するため、適宜、ストレッチや散歩などをして、体を動かしましょう。
◎ストレスや疲労をためないように、ストレス発散方法を見つけることも大切です。
◎冬場は、使い捨てカイロを下着の上から肛門の周囲にあてたりして、冷えないようにしましょう。
痔に効く坐薬に関するQ&A
Q 坐薬を入れた後はどれくらい我慢していればいい?排便してしまった場合は?
A 坐薬は挿入後、およそ20〜30分で溶けますが、この間は、坐薬が出てきてしまうのを防ぐために激しい運動は控えておきましょう。
坐薬挿入後にすぐ排便し、坐薬がそのままの形で排出された場合は、再度新しい坐薬を挿入してください。
ただし、坐薬の挿入そのものによる刺激で便意をもよおすこともあるため、排便後の使用をおすすめします。
Q 坐薬は1日何回まで使えますか?
A ボラギノールA坐剤やボラギノールM坐剤であれば、1日1〜2回、プリザエース坐剤Tであれば、1日1〜3回使えます。
Q 坐薬は何時間あけて使ったらよいですか?
A 使用間隔は特に定められていませんが、目安として1日1回の場合は、毎日同じくらいの時間に使用し、1日2回の場合は、朝と晩(入浴後もしくは就寝前)、1日3回の場合は、朝・昼・晩(入浴後もしくは就寝前)とあけるとよいでしょう。
Q 妊娠中・授乳中も使えますか?
A 妊娠中の方については、妊娠時期や薬の性質を考慮し、安全に使用できる薬を選ぶ必要があるため、ご使用前に医師または薬剤師にご相談ください。
授乳中の方については、この記事で紹介している薬は、いずれもご使用いただけます。

昭和大学大学院薬学研究科修了
昭和大学薬学部客員講師
株式会社ミナカラ / ミナカラ薬局
薬局、ドラッグストアで臨床経験を積み、その後昭和大学薬学部の教員、チェーンドラッグストア協会の教育機関でOTCの研修講師を務める。
【著書】
•現場で差がつく! もう迷わない! ユーキャンの登録販売者お仕事マニュアル 症状と成分でわかるOTC薬
•現場で差がつく! ユーキャンの新人登録販売者お仕事マニュアル

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