過敏性腸症候群の治療薬|症状のタイプや薬以外の治療方法も紹介
過敏性腸症候群(IBS)は、ストレスなどが原因でお腹の痛み・下痢・便秘などの腹部症状がみられる病気です。ストレス以外にもさまざまな要因があるため、病院を受診し医師の診断を受ける必要があります。この記事では、過敏性腸症候群のタイプ別の症状や治療法について解説します。
過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群は、検査で腸の機能に特別な異常がないにも関わらず、お腹の痛みや便秘・下痢などの排便異常が繰り返し起こる病気です。
命に関わることはないものの、腹痛や下痢、それらの症状が起こる不安により、日常生活に支障をきたす場合があります。
日本人の10%程度が発症する可能性があるといわれており、珍しい病気ではありません。
過敏性腸症候群の特徴
過敏性腸症候群の特徴は、精神的ストレスが原因になり得ることです。
臨床検査では腸の炎症や潰瘍の異常などがないにも関わらず、お腹の調子が悪い状態が数か月以上続く場合に診断されます。
腸の知覚神経が過敏になり腹痛を感じやすくなったり、腸の収縮運動が乱れ下痢や便秘を繰り返したりするのが主な症状です。
精神的ストレスや身体的ストレス、自律神経の乱れが原因で、お腹の不調や排便状態などの症状が発生することから、心の状態が体に影響を及ぼす「心身症」の一つだと考えられています。
過敏性腸症候群のタイプ
過敏性腸症候群の症状は、下痢を起こす人から便秘がちになる人までさまざまです。
便の状態や症状の違いにより、大きく以下の4つに分類されています。
- 下痢型
- 便秘型
- 混合型
- 分類不能型
1.下痢型
下痢型は、急な腹痛を伴う下痢と、便が出ると腹痛が軽減するという症状を繰り返すのが特徴です。
腸のぜん動運動が活発になりすぎており、便の水分が大腸内で十分に吸収されないまま排便されるので、軟便や水のような便が出ます。
急な腹痛や便意を伴うため、症状が続くと外出や緊張する場面で不安を感じやすくなり、そのストレスが症状を悪化させてしまう悪循環に陥る場合もあります。
2.便秘型
便秘型は、腹痛や便意があってもなかなか排便できない慢性的な便秘が特徴です。
腸のぜん動運動が弱く、排便できたとしても「うさぎの糞のような小さくて丸い硬便」しか出ない場合が多く、残便感もあります。
いきみすぎによる痔の併発やお腹の張り、腹部の不快感を伴う人もいるでしょう。
このタイプも便秘や腹部の不快感がストレスとなり、さらなる症状の悪化をまねく場合があります。
3.混合型
混合型は下痢と便秘の両方が高頻度であらわれるタイプです。
排便やお腹の具合が変動して3〜4日便秘が続き、その後に硬い便が出て、1日に数回の下痢になるケースが多く見られます。
4.分類不能型
分類不能型は便の性状に異常はないものの、腹部の不快感や膨満感、よくお腹が鳴る、おならが頻繁に出るなどの症状があるタイプです。
どんな人がなりやすい?原因や傾向
過敏性腸症候群の原因ははっきりと解明されていませんが、いくつかの要因があると言われています。過敏性腸症候群の原因と、発症しやすい人の傾向を解説します。
考えられる主な原因
過敏性腸症候群の主な原因は、以下のとおりです。
- ストレス
- 自律神経の乱れ
- 食習慣
- 感染性腸炎の影響
過敏性腸症候群を引き起こす大きな要因はストレスです。
腸の知覚や運動は、脳からの指令によりコントロールされていますが、大きな不安やストレスを感じると、脳からの指令伝達や内臓の働きを調整する自律神経に影響を与えます。
その結果、腸の知覚や運動機能に変化が起こり、下痢や便秘を引き起こすと考えられているのです。
また、カフェインやアルコール、冷たい飲み物などの刺激物による影響、腸内環境や食物アレルギーによる影響などが原因の場合もあります。
さらに、細菌やウイルスによる感染性腸炎を発症すると、過敏性腸症候群を発症するリスクが高くなるとされています。
過敏性腸症候群は上記のように、生理的要因や心理的要因が絡み合って生じる病気であるため、検査や問診などを受けて総合的な診察による診断が必要です。
なりやすい人の傾向
日本人の過敏性腸症候群の有病率は10〜15%といわれています。
なかでも20代、30代の女性に多い傾向があり、最近では10代で発症する人も少なくありません。
ストレスが発症の要因となる過敏性腸症候群は、入学・入社・転職など環境の変化が大きい時期に発症しやすいともいわれています。
また、「試験前に熱が出やすい」など精神的ストレスが体調にあらわれやすい人や、心配性の人、感情表現が苦手な人なども、過敏性腸症候群になりやすい傾向があります。
薬を使用しない治療
過敏性腸症候群の治療の第一選択は、生活習慣を見直すことです。
規則正しい生活習慣は、心身の体調を整え腸内環境にもよい影響を与えるとされています。
薬を使用しない治療では、おもに食事療法・心理療法・運動療法が用いられます。
食事療法
過敏性腸症候群の主な原因はストレスとされていますが、胃腸に直接的な影響を及ぼす食事内容は改善するに越したことはありません。
バランスのよい食事を心がけ、規則正しい時間に食事を摂りましょう。
アルコールやカフェイン、香辛料などの刺激物や冷たい飲み物は避け、発酵食品やオリゴ糖などの腸内環境を整える食べものをとるのが望ましいとされています。
アレルギーと診断されていなくても特定の食品をとると症状が出やすい人は、それらの食品も避けたほうがよいでしょう。
運動療法
過敏性腸症候群の治療には、適度な運動も大切です。
適度な運動はストレス解消や睡眠の質の向上にも有効で、過敏性腸症候群の症状改善にも効果が期待できます。
過敏性腸症候群の運動療法には、ヨガやウォーキング、ストレッチなどの有酸素運動が向いています。
生活のなかで取り入れやすい運動からはじめてみましょう。
心理療法
過敏性腸症候群はストレスが深く関係しているため、心理的ストレスが大きい状況のときにはカウンセリングや認知行動療法などの心理療法も有効です。
認知行動療法などの心理療法は、専門家が自分自身の不安やストレスと向き合うサポートをしてくれます。
専門家のサポートを受けながら、日常生活のなかでストレスを感じやすい場面や原因と向き合うことで、症状改善が期待できます。
薬による治療
残念ながら、現在の医療では原因がはっきりと解明されていない過敏性腸症候群は、完治する特効薬はありません。
そのため、薬物療法では症状とうまく付き合っていけるように、下痢や便秘、腹痛など、その人の症状にあわせた治療薬を使う必要があります。
治療には消化管の機能を整える薬や漢方薬、不安やストレスが強い場合には精神的に作用する薬などを用います。
過敏性腸症候群に効く薬
過敏性腸症候群の改善効果が期待できる薬は、病院で処方される薬と、再発時に使用する市販薬の2つに分けられます。
病院で処方される薬
過敏性腸症候群症状の対処療法として病院で処方される薬には、以下のものがあります。
| 種類 | 効果 | 主な薬の名称 |
|---|---|---|
|
高分子重合体 |
下痢や便秘を改善する |
コロネル®・ポリフル® |
|
消化管機能調節薬 |
腸の機能を整える |
セレキノン® |
|
プロバイオティクス |
腸内細菌のバランスを整える |
ミヤBM®・ビオフェルミン® |
|
止痢薬 |
下痢を止める |
ロペミン®︎・イリボー® |
|
漢方薬 |
痛みや腹部症状を和らげる |
半夏瀉心湯・桂枝加芍薬湯 |
|
抗不安薬・抗うつ薬 |
精神的ストレスを緩和する |
コントール®︎・リフレックス®︎・レメロン®︎ |
再発時に使用する薬
過敏性腸症候群の再発には市販薬「セレキノンS」が使用できます。
消化管の運動を整えるトリメブチンマレイン酸塩を有効成分とし、下痢型・便秘型・混合型、すべての過敏性腸症候群の症状に効果が期待できる薬です。
セレキノンSは薬局やドラッグストア、インターネットなどでも購入可能ですが、再発症状を改善する薬のため、医師による診断を受けた人のみ服用できます。
過敏性腸症候群の薬に関するよくある質問
過敏性腸症候群の薬に関するよくある質問を紹介します。
Q.副作用はありますか?
過敏性腸症候群の治療薬はさまざまな種類があり、処方される薬により副作用も異なります。治療薬の副作用は、処方時に医師か薬剤師に確認しておきましょう。
先述した、過敏性腸症候群の再発症状改善薬として市販されているセレキノンSには、発疹・かゆみ・じんましんなどの皮膚症状や、便秘・下痢・お腹が鳴る・口のかわき・吐き気・めまい・動悸などの副作用があらわれることがあります。
Q.痛み止めとして使用できる薬はありますか?
腹痛を和らげる薬としては、漢方薬の桂枝加芍薬湯や、副交感神経に働きかける抗コリン薬が使われます。
Q.ガス型の場合でも薬は必要ですか?
ガス型の過敏性腸症候群は、お腹のなかで過剰にガスが発生し、腹痛やお腹の張り、頻繁なおならが出る症状です。
日常生活に支障をきたすようであれば、治療の対象となります。ガスによる腹部症状を改善する薬もあるため、医師に相談しましょう。
Q.薬は毎日飲み続ける必要はありますか?
過敏性腸症候群の治療薬は、腹部症状や便の状態、精神的状態にあわせて処方され、症状の変化により使い分けるのが一般的です。
薬を毎日飲み続けるかどうかは、医師の指示に従いましょう。

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