3人に1人が「骨密度チェック迷子」──慶應大SFCが始動した「骨密度測ろうプロジェクト」が示したもの
いま何が起きているのか──3人に1人が「骨密度チェック迷子」
測っていないのは、あなただけではありません。むしろ、多数派という結果が出ています。
調査データを発表したのは、慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科のヴィーナス本田さん(本田由佳/特任准教授・医学博士)です。
国の「健康日本21(第3次)」では骨粗しょう症検診の受診率15%が目標に掲げられていますが、現状の自治体における受診率は5.9%にとどまります。ではなぜ測らないのか。本田さんが2026年8月1〜4日、ミナカラの協力のもと約2万7千人(うち女性1万7千人)を対象に実施した調査の結果は、次のとおりでした。
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調査項目 |
結果 |
|---|---|
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「測りたいが測る場所が分からない」層 |
33.1%(3人に1人) |
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骨の健康意識と行動にギャップがある層 |
9.5%(10人に1人) |
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5年以内に骨密度を測定した経験がある層 |
51.7%(40代は約3割) |
つまり、関心がないから測らないのではなく、関心はあるのに測る場所にたどり着けていない。本田さんはこの層を「骨密度チェック迷子」と名付け、測定機会そのものの不足を指摘しています。
骨粗しょう症は「沈黙の病気」と呼ばれ、自覚症状が出にくい病気です。女性の場合、骨量は40代から低下が始まり、骨折リスクは40代後半から上がっていくと報告されています。気づいたときには進んでいる、という性質があるのです。
なぜ問題なのか──骨折は「介護が必要になった原因」の2位
骨折は「転んで痛い」だけの出来事ではない、という話です。
アムジェン株式会社 執行役員 秋月玲子さん(メディカル・アフェアーズ本部長)が、骨粗しょう症の社会課題を解説しました。
骨は古い部分を壊しながらつくり直すことで強さを保っていますが、加齢でこのバランスが崩れると、外からは分からないまま内部が脆くなります。骨折は50代から増え始め、軽く尻餅をついた、重い物を持ったといった日常動作でも起こりうるといいます。
そして、その先に起きることが変わってきました。骨折・転倒は介護が必要になった主な原因として、2022年時点の13%・3位から、最新データでは14.8%で2位に上昇しています。
影響は本人だけにとどまりません。骨折で介護が必要になった方のご家族を対象とした調査では、68.3%が転職やパートタイム化など雇用形態の変更を経験していました。骨折はひとりの怪我ではなく、家族の働き方まで動かす出来事になっているということです。
秋月さんは「骨粗しょう症は女性の病気と思われがちだが、男性にも起こる」とも強調しました。
なぜ今なのか──「分かれ道は40代、でも80代でも大丈夫」
よかれと思って続けていることが、実は足りていないかもしれません。
パネルディスカッションでは、骨粗しょう症マネージャーの藤本七海さんが、現場でよく聞く誤解として「私はいわし煎餅(せんべい)を毎日食べているから大丈夫」という声を挙げました。カルシウムを摂るだけでは骨は強くならず、運動・食事・日光浴を続けることが必要だといいます。
もうひとつ指摘されたのが、骨の測りにくさです。高血圧や糖尿病は健診で数値が出ますが、骨密度はわざわざ測りに行かなければ数値が出ません。だから後回しになる。「骨密度チェック迷子」が生まれる構造的な理由がここにあります。
では手遅れなのかというと、そうではないという話も出ました。藤本さんが紹介したのは81歳から運動を始め、筋肉量と骨密度を改善した患者の事例です。
「分かれ道は40代ですが、80代でも大丈夫です」
早いほうがいい。けれど、遅すぎることはない。
どうすれば測れるのか──3つの選択肢と、職場という新しい入口
「測る機会がない」のは、個人の心がけだけの問題ではありません。
セミナーで説明された測定方法のうち、最も精度が高いのはDXA(デキサ)法で、医療機関で受けられます。現状、骨密度を測れる場所は主に次の3つです。
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測定できる場所 |
特徴 |
|---|---|
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自治体の骨粗しょう症検診 |
40歳以上・5歳刻みでの実施が基本 |
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医療機関(整形外科・内科・婦人科など) |
最も精度が高いDXA法が受けられる |
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簡易測定(超音波法) |
イベントや測定会など。手軽さが利点 |
ただし、この3つには穴があります。自治体検診の多くは平日に行く必要があり、働く世代ほど受けにくい。新潟県中村洋心さん(福祉保健部長)は、県の骨粗しょう症検診の受診率が4%台にとどまる現状を報告し、職場検診での測定機会の創出を目指す方針であると語っていました。
経済産業省ヘルスケア産業課 河裾淳子さんも、「健康経営」の認定企業が約2万7千社まで拡大したことに触れています。骨密度測定を職場で受けられるようにする——「測る場所が分からない」を構造から解消しようという動きが、行政側からも出てきています。
本田さんが大切にしているのは、「健康のために測らなければ」ではなく、「なんだか気になるから測ってみようかな」と思える入口をつくることだといいます。測って現状を理解したうえで、それぞれに合った骨ケアをすることを「骨推し習慣」と呼び、無理なく続く形で広めていきたいと話していました。
「30代に戻れるなら、真っ先に取り組みたい」
もし時間を巻き戻せるなら、何をするか。
セミナーにゲスト登壇した俳優の羽田美智子さんは、会場の簡易測定器を体験し「足を乗せて1秒でした」「病院だと半日かかるのかなと身構えてしまうけれど、ハードルが下がりますよね」と振り返りました。
骨を意識したきっかけは、家族の骨折や自身の肋骨骨折が続いた経験だそうです。
「病気の神様は3回ノックすると思っているんです。最初は軽いノック。無視すると2回目は強めのノック。それも無視すると3回目に『はい、入院です』となる。最初の軽いノックで気づいていれば、なんてことなく未病の段階で治せるのに」

セミナー後の取材では、若い世代へのメッセージをこう語ってくれました。
「もし私が30代に戻れるなら、真っ先に取り組みたい課題です。今は情報がある分、皆さんはとても恵まれている。私はこれから頑張りますが、ぜひ皆さんも早いうちから骨美人(ほねびじん)を目指しましょう。」
編集部ノート|ミナカラから
今回の調査に協力して最も印象的だったのは、「骨密度チェック迷子 33.1%」という数字でした。ボトルネックは意識ではなく、情報が届いていないことにある。それはメディアを運営する側の課題でもあります。
測る場所にたどり着けたとして、その次に「この数値をどう受け止めればいいのか」という迷いが待っています。そこを支える仕組みは、まだ十分とはいえません。
ミナカラでも、骨の健康について気軽に相談できる体制づくりを進めています。準備が整いましたら、この記事でもお知らせします。
セミナー概要
名称:骨密度測ろうプロジェクト 発足メディアセミナー/開催日:2026年8月7日/会場:慶應義塾大学 慶應三田キャンパス/主催:慶應義塾大学/アムジェン株式会社、株式会社ミナカラ(ドコモグループ)ほか/司会:関谷亜矢子さん
登壇者(敬称略)
中澤仁(慶應義塾大学 環境情報学部 教授)/本田由佳(慶應義塾大学大学院 政策メディア研究科・医学博士)/秋月玲子(アムジェン株式会社 メディカル・アフェアーズ本部長)/藤本七海(骨粗しょう症マネージャー)/名倉仁(アムジェン株式会社)/中村洋心(新潟県 福祉保健部長)/河裾淳子(経済産業省 ヘルスケア産業課)/羽田美智子(俳優)
出典
骨粗しょう症検診受診率:公益財団法人 骨粗鬆症財団(※年次要確認)/介護が必要になった原因:厚生労働省 国民生活基礎調査(※年次要確認)/意識調査:慶應義塾大学SFC研究所・株式会社ミナカラ(2026年8月1〜4日、n=約27,000)

昭和大学大学院薬学研究科修了
昭和大学薬学部客員講師
株式会社ミナカラ / ミナカラ薬局
薬局、ドラッグストアで臨床経験を積み、その後昭和大学薬学部の教員、チェーンドラッグストア協会の教育機関でOTCの研修講師を務める。
【著書】
•現場で差がつく! もう迷わない! ユーキャンの登録販売者お仕事マニュアル 症状と成分でわかるOTC薬
•現場で差がつく! ユーキャンの新人登録販売者お仕事マニュアル

昭和大学大学院薬学研究科修了
昭和大学薬学部客員講師
株式会社ミナカラ / ミナカラ薬局
薬局、ドラッグストアで臨床経験を積み、その後昭和大学薬学部の教員、チェーンドラッグストア協会の教育機関でOTCの研修講師を務める。
【著書】
•現場で差がつく! もう迷わない! ユーキャンの登録販売者お仕事マニュアル 症状と成分でわかるOTC薬
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