ワソランの効果:頻脈性不整脈に効く
ワソランには錠剤と注射剤の2種類の剤形があります。
ワソラン錠は頻脈性不整脈、狭心症や心筋梗塞、その他の虚血性心疾患に効果・効能がありますが、小児に対しては頻脈性不整脈のみ使用できます。
頻脈とは脈拍が早くなる状態です。ワソラン錠の適応となる頻脈性不整脈は心房細動・粗動、発作性上室性頻拍です。その他、心筋梗塞にも使用されますが、急性期には使用されません。
一方で、注射剤を使用できるのは頻脈性不整脈のみです。
ワソランの主な薬理作用
添付文書に記載されているワソランの薬効薬理は以下の通りです。
・カルシウムイオンの細胞内への流入を抑えます。
・冠状動脈や末梢血管を拡張します。
・カルシウムイオンの流入を抑えることで不整脈をおさえる作用があります。
・ノルアドレナリンや電気刺激による実験的不整脈をおさえます。
・心臓の筋肉の保護作用(ワソラン錠のみ)
ワソランが不整脈へ作用する理由
ワソラン錠は頻脈性不整脈や虚血性心疾患に効果を示します。これは、ワソランの有効成分であるベラパミル塩酸塩に心臓への負荷を減らす作用があるからです。
心臓はナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞内に入ることで収縮します。頻脈性不整脈ではナトリウムイオンやカルシウムイオンの流入がうまく調節できず、心臓が過剰に働いている状態です。
ワソランはカルシウムイオンが細胞内へ入る過程を邪魔する(カルシウム拮抗作用)ことで、心臓の働き過ぎをおさえ心房細動などの不整脈に効果を示します。
その他、ワソラン錠では冠状動脈や血管を拡張することで狭心症や心筋梗塞に効果を示します。
ワソランの使い方
ワソラン錠の飲み方
大人は、1回1~2錠(1回40~80mg)を1日3回飲みます。
子どもは、頻脈性不整脈に1日3~6mg/kg(ただし、1日240mgを上限)を、1日3回に分けて飲みます。
なお、大人も子どもも年齢や症状に合わせて服用量を調節します。
ワソラン静注の使い方
大人は、1回1管(ベラパミル塩酸塩として5mg)を、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖注射液でうすめ、5分以上かけて点滴などで静脈内に注射します。
子どもは1回0.1~0.2mg/kg(ただし、1回5mgを上限)を、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖注射液でうすめ、5分以上かけて点滴などで静脈内に注射します。
なお、大人も子どもも年齢や症状に合わせて服用量を調節します。
ワソラン錠は頓服で使う?
ワソラン錠は頻脈性不整脈の発作時に頓服で使用することがあります。ワソラン錠は薬を飲んでから約2時間で血液中の濃度が最大になるので、比較的速やかに効果が出ます。飲んですぐに効果が出るわけではないので、頓服で飲んだ場合は1〜2時間程度効果を待ってみましょう。ただし、服用後も症状がひどい場合、ひどくなる場合は早めに医師の診察を受けましょう。
ワソラン錠はグレープフルーツとの飲み合わせに注意
ワソラン錠はグレープフルーツジュースと同時に飲むことで血中濃度を上昇させることがあり、作用が強く出てしまうことがあります。
グレープフルーツジュースに含まれる成分が、ベラパミル塩酸塩(ワソラン錠の成分)を分解するチトクロームP450(CYP3A4)を邪魔することでベラパミル塩酸塩の血中濃度を上昇させます。
異常が出た場合には、ワソラン錠を減量するなどしなければなりません。
普段から、グレープフルーツジュースとワソラン錠の同時服用をしないよう注意しましょう。
一方、ワソラン静注ではグレープフルーツとの飲み合わせの注意喚起はありません。これは、グレープフルーツとの相互作用は消化管で起こるためです。
静注は血管内に薬を直接入れるため、消化管を通ることはありません。
ワソランの副作用
ワソランの添付文書上の副作用は以下のようになります。当てはまる症状がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
ワソラン錠の副作用
※【 】内は副作用の発生頻度
循環器 | 【0.1~5%未満】 房室伝導時間の延長、頭痛、めまい、血圧低下 |
過敏症 | 【0.1~5%未満】 発疹 |
消化器 | 【0.1~5%未満】 便秘、吐き気・嘔吐 【0.1%未満】 食欲不振 |
口腔 | 【頻度不明】 歯肉肥厚(歯ぐきの腫れ) |
肝臓 | 【0.1%未満】 AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇等 |
内分泌 | 【頻度不明】 血中プロラクチンの上昇、 男性における血中黄体形成ホルモン・血中テストステロンの低下、 女性型乳房 |
その他 | 【0.1~5%未満】 浮腫(むくみ) |
ワソラン静注の副作用
※【 】内は副作用の発生頻度
循環器 | 【0.1~5%未満】 血圧低下、心室性期外収縮、洞停止、 房室ブロック、徐脈、上室性期外収縮、 心室性頻拍 【0.1%未満】 脚ブロック、洞房ブロック、一過性心停止 |
消化器 | 【0.1~5%未満】 悪心、嘔吐 【0.1%未満】 口渇 |
肝臓 | 【0.1~5%未満】 AST(GOT)、ALT(GPT)の上昇等 |
内分泌 | 【頻度不明】 血中プロラクチンの上昇、 男性における血中黄体形成ホルモン・血中テストステロンの低下 |
その他 | 【0.1~5%未満】 胸の痛み 【0.1%未満】 頭痛、顔面のほてり、臭気感 |
ワソランで血圧低下や頭痛が起こる理由
ワソランは主に心臓に作用する薬です。心臓の働きを抑えることで心臓から押し出す血液の圧力を減らしたり、直接血管を広げることで血圧の低下や頭痛を引き起こすことがあります。
ワソラン錠40mgの添付文書では頭痛、めまい、血圧低下は0.1~5%未満で起こると報告されています。
ワソランの持続時間:体内で約4時間ごとに半減
ワソラン錠を服用したあと、約2時間で体内濃度が最大になります。体内濃度が最大になっている時間は最も効果が出ている状態になります。
ワソランは約4時間で半分の濃度になります。この半分の濃度になる時間を半減期といいます。多くの医薬品は、半減期と作用持続時間が似ています。
しかし、個人差や環境による差異があるため持続時間は一概には言えません。
ワソランの禁忌
ワソランの添付文書の禁忌は以下のようになります。禁忌への該当の判断は難しいので、あらかじめ医師、薬剤師に自分の状態をしっかりと伝えましょう。
ワソラン錠の禁忌
1 | 重篤なうっ血性心不全のある方 |
2 | 第II度以上の房室ブロック、洞房ブロックのある方 |
3 | 妊婦又は妊娠している可能性のある女性 |
4 | 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方 |
ワソラン静注の禁忌
1 | 重篤な低血圧あるいは心原性ショックのある方 |
2 | 高度の徐脈、洞房ブロック、房室ブロック(第II、III度)のある方 |
3 | 重篤なうっ血性心不全のある方 |
4 | 急性心筋梗塞のある方 |
5 | 重篤な心筋症のある方 |
6 | 静注用β-遮断剤を投与中の方 |
7 | 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある方 |
おわりに
ワソランは頻脈性不整脈の治療に使用される薬です。ワソラン錠の飲み方は不整脈の状態によって異なることがあります。医師の指示をしっかりと守って服薬しましょう。