花粉症チャレンジプログラム

第8回:「アレルギーを根本から改善へ。舌下免疫療法の仕組みと注意点」
スギ花粉症やハウスダストによるアレルギー性鼻炎は、多くの人が悩まされる慢性的な症状です。くしゃみや鼻づまりを薬で抑えても、シーズンが来るたびに症状が再燃してしまう…そんな状況を改善する治療として注目されているのが「舌下免疫療法」です。今回は、舌下免疫療法の仕組み・効果・リスク・治療の始めどきまで、わかりやすく解説します。
はじめに ― 舌下免疫療法はどんな治療?
舌下免疫療法は、アレルギー性鼻炎の原因となるアレルゲンを少量ずつ体に取り込み、過剰なアレルギー反応を防ぐ「花粉症の根本治療」のひとつです。
毎日1回、専用の薬剤を舌の下に保持する新しいアプローチの治療であり、近年、利用が広がっています。
アレルギーの“根本治療”として期待される理由
アレルギー性鼻炎の治療は、これまで「対症療法」が中心でした。抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などを使い、鼻水・くしゃみ・鼻づまりといった症状を抑えるのが一般的です。しかし、これらの薬はあくまでも“症状を抑える”だけで、シーズンが来ると再び同じ症状が現れます。
一方、舌下免疫療法はアレルゲンに対する免疫の働きを調整する治療です。体が「これは危険な物質ではない」と学習することで、以下のような効果が期待できます。
● 症状の軽減
● 薬の使用量の減少
現時点で治療薬が存在するアレルゲン
舌下免疫療法は、アレルゲンを原料にした薬が製品化されているものだけが治療の対象になります。2026年3月時点で日本で使えるのは次の2つです。
● スギ花粉
● ダニ(ハウスダスト)
一方、日本では未承認ですが、海外では市販されている製剤も存在します。
● イネ科花粉
● カバノキ科花粉(シラカンバなど)
● ブタクサ花粉
舌下免疫療法の仕組みと効果
舌の下に薬を置くだけでなぜ効く?
舌の下の粘膜には免疫細胞が多く、そこで対象となるアレルゲンを少量から服用することで、免疫細胞が「アレルギーに対して過剰反応しない」方向へ学習(免疫寛容)し、アレルギー症状が徐々に出にくくなっていきます。
治療効果が現れるまでの期間
治療はすぐに効果が出るわけではありません。さらには個人差もあるため、はっきりとした期間は明言できませんが、以下がひとつの目安となっています。
● 1年目:少し症状が軽くなる
● 2~3年目:改善を実感してくる
● 3~5年の継続:治療終了後も効果が持続
数年にわたる継続が必要な理由
免疫の働きを根本から変えるには時間がかかります。短期間では効果が不十分で、治療終了後の持続効果も得られません。
ドロップアウト率が高い背景
数年にわたる毎日の服薬は、想像よりもハードルが高いものです。
● 飲み忘れ
● 忙しさ
● シーズン外も通年で定期的な通院が必要
● 効果が出るまでの時間の長さ
● 副作用による継続困難(口の中のかゆみや腫れなどの違和感)
● 歯科治療や口内炎などによる一時的な中断
こうした理由から途中で中断する人も多いのが現状です。スタートする前に“継続のイメージ”を持っておくことが重要です。
治療を始める前に知っておきたいリスクと注意点
舌下免疫療法のリスク
舌下免疫療法は比較的安全性が高い治療ですが、副作用が起こる可能性はゼロではありません。
開始時・再開時は最も注意が必要
初めて薬を使うときや、しばらく中断した後の再開時には、アレルゲンに対する体の反応が強く出やすくなります。そのため、初回投与は必ず医療機関内で行い、その場で30分間の経過観察が必要となります。
自己判断での中断・再開は危険
「しばらく飲んでいなかったけれど、元の量で再開しよう」という自己判断は大変危険です。副作用リスクが高まるため、必ず処方した医師の指示を受けて再調整するようにしましょう。中断していた期間に応じて、減量しての治療再開となる場合や、初回投与と同様に、医療機関内で服薬を実施する場合もあります。
アナフィラキシーのリスク
ごくまれではありますが、強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる可能性があります。
アナフィラキシーは、アレルゲンにより全身に急激なアレルギー反応が起こることで、じんましん、喉の締め付け感、息苦しさ、血圧低下などを生じ、生命に関わる重篤な状態です。
治療は、特効薬であるアドレナリン(エピペンなど)の筋肉注射をできるだけ早く行うことが重要です。舌下免疫療法で起こることは極めてまれですが、安全のため、こうした緊急対応が可能な医療体制のもとで治療を開始する必要があります。
また、アナフィラキシーに備えて、治療開始時には緊急受診先の登録が必要です。緊急受診先の登録は、患者が緊急時に受診できる医療機関をあらかじめ決めておく仕組みです。これは安全性を確保するための重要なルールとなっています。
治療を一時中断すべきケース
体調不良やケガ、副作用が疑われる症状がある場合には、治療を一時的に中止することもあります。安全に治療を継続するため、自己判断で続けず、必ず処方した医師に相談するようにしましょう。
喘息の病状が不安定な場合
喘息のコントロールが不安定な状態では、アレルギー反応により喘息発作が誘発されるリスクが高まるため、舌下免疫療法の継続を一時的に見合わせることがあります。
高熱・肺炎などの重い感染症がある場合
全身状態が悪い場合は、副作用のリスクが高まる可能性があるため、回復するまで舌下免疫療法を一時的に中断します。判断に迷う場合は、処方した医師にご相談ください。
口内の傷・潰瘍・抜歯後など、口の粘膜に傷がある場合
口の粘膜に傷や炎症があると、口の中の腫れやかゆみといった局所の副作用が強く出やすくなるため、粘膜が治癒するまで休薬することがあります。
副作用が出たときの対処と受診の目安
舌下免疫療法では、以下のような軽度の副作用が比較的よく見られます。これらの多くは数日〜数週間でおさまることが多いですが、まずは医師に継続の可否の相談をするようにしましょう。
● 口の浮腫(むくみ)、かゆみ、不快感
● 喉の違和感、刺激感
● 唇の軽い腫れ
● 耳のかゆみ
ただし、以下のような症状がある場合はすぐに受診が必要です。
● 息苦しさ
● 全身のじんましん
● 激しい腹痛・嘔吐
● めまい・失神
アナフィラキシーの可能性もあるため、迷わず近隣の大きな病院の救急外来を受診してください。
舌下免疫療法を処方できる医療機関について
舌下免疫療法の薬はすべての医師が自由に処方できるわけではありません。舌下免疫療法専用のeLearningを受講・修了した医師だけが処方可能であり、登録された医療機関でのみ治療を受けることができます。
妊娠と舌下免疫療法
妊娠中は免疫状態が変化し、副作用が起きたときの治療の選択肢も限られるため、新規に導入することは推奨できません。特に、アナフィラキシーが起きた場合、母体にも胎児にも危険が及ぶこともあります。
すでに治療を開始して安定している時に妊娠が判明した場合は、医師の判断のもと継続できることもあります。必ず処方を受けた医師に相談するようにしましょう。
いつ始めるのが最適?花粉症の時期でも始められる?
スギ花粉の舌下免疫療法は、花粉が飛散していない時期(6〜12月)に開始するのが一般的です。
飛散ピーク時は症状が強く、副作用が出やすいためです。
ダニ(ハウスダスト)は通年性アレルゲンのため、基本的にいつでも開始できます。ただし、こちらも症状が強く出ている時期は避けた方が安全 とされています。
舌下免疫療法はどんな人に向いている?
これまでお話ししてきたように、舌下免疫療法は人によって向き不向きがあります。
治療に向いている人の特徴
● スギまたはダニアレルギーが検査で確定している
● 薬を減らしたい、根本的に治したいと考えている
● 数年間の継続が可能
● 毎日の服薬を自分で管理できる(または家族のサポートがある)
困ったときは早めに医師へ ― オンライン診療も活用できます
気になる症状がある場合は、早めに医師へ相談することが大切です。
症状が強いときや呼吸が苦しいときなどは、直接受診した方が安心です。一方で、すぐに受診できないときや、まずは相談だけしたい場合にはオンライン診療も役立ちます。オンライン診療なら、自宅から医師に相談できるため、状況を見極める“つなぎ”として利用してもよいでしょう。
*舌下免疫療法は、初回は対面による受診が必要です。
ミナカラ オンライン診療は自宅からスマートフォンやパソコンで医師に相談でき、診察後は処方された薬を自宅まで届けてもらうことも可能です。
【オンライン診療の流れ】
1 自分の症状にあった診療科を予約する
2 医師による診察、薬剤師による服薬指導をビデオ通話で受ける(服薬指導は薬を配送で受け取る場合のみ)
3 提携薬局から自宅に薬が届く、または近くの薬局で受け取る
ご利用に当たっての注意事項
- 掲載している情報は、セルフメディケーション・データベースセンターから提供されたものです。
- 適正に使用したにもかかわらず副作用などの健康被害が発生した場合は(独)医薬品医療機器総合機構(TEL:0120-149-931)にご相談ください。
- より詳細な情報を望まれる場合は、購入された薬局・薬店の薬剤師におたずねください。
- 当サービスによって生じた損害について、株式会社ミナカラ及び、セルフメディケーション・データベースセンターではその賠償の責任を一切負わないものとします。
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