とびひには何の薬がいい?子どもと大人も使える塗り薬とその選び方を解説
とびひとは?
とびひは、正式名を伝染性膿痂疹といい、あせもや虫刺され、湿疹などをひっかいたり、転んでできた傷の部位に細菌が侵入して起きる皮膚の感染症です。
皮膚の一部にできた水ぶくれやただれを触った手で別の部位を触ったりすることでうつり、火事の飛び火のようにあっと言う間に広がることから俗に「とびひ」といわれています。
とびひは、水ぶくれができるものと厚いかさぶたができるものの2種類あります。
| 水ぶくれタイプ | かさぶたタイプ | |
|---|---|---|
| 主な原因菌 | 黄色ブドウ球菌 | A群β溶血性連鎖球菌 |
| 特徴 | ・夏に多い ・赤ちゃんや子どもに多い ・水ぶくれができ、破れてただれる ・虫刺されやあせもをかきむしることで始まることが多い | ・季節、年齢を問わない ・膿がたまった小さな水ぶくれが多数でき、破れてただれ、厚いかさぶたができる ・患部に腫れや痛みなどの炎症をともない、喉の痛みや発熱が起きることも |
子どもだけでなく大人もとびひになる
とびひは、子どもに多く発症しますが、大人も症状があらわれることがあります。ストレスや疲れなどで抵抗力や免疫力が低下しているときに、とびひの菌をもらって発症してしまうこともあります。
お子様については、あせもや虫刺され、すり傷ができていたり、アトピー性皮膚炎がある場合は要注意です。皮膚をかき壊して傷ができたり、肌のバリアが低下しているところに細菌が感染してとびひとなります。
また、鼻の穴の入り口にはさまざまな細菌が存在しているため、小さなお子様で鼻を触る癖があると、鼻の周囲からとびひが始まったり、その手でほかの部位をさわることでとびひになってしまいます。
とびひには何の薬がいい?
とびひで病院にかかると、原因となる細菌に効果をあらわす抗菌薬の飲み薬や塗り薬などが処方されます。
市販の抗菌薬でもとびひに効く薬はありますが、塗り薬のみで飲み薬はありません。
とびひに使える市販の塗り薬は、炎症をおさえるステロイド成分が入った抗菌薬と、ステロイド成分無配合の抗菌薬などがあります。それぞれの薬が適した症状や部位は次の通りです。
また、とびひをかきむしって跡になって残ってしまった場合には、傷あとを目立たなくする薬でとびひの跡を薄くすることもできます。
| こんなとき・こんな方に | |
|---|---|
| ステロイド配合の抗菌薬 | ・かゆみや赤み・腫れなどの炎症が強いときに ・子どもの体や大人の顔・体に使える |
| ステロイド無配合の抗菌薬 | ・症状の軽いとびひに ・子どもの顔・体や大人の顔・体に使える |
| 傷あとを目立たなくする薬 | ・患部をかいたりしてとびひの跡が残ってしまったとき ・黒い発疹のような色素沈着が残ってしまったとき |
お子様の顔に使うステロイドはミディアムかウィークを
ステロイド成分は、作用の強さによって5段階にランク分けされており、症状や部位などに応じて適した強さが異なります。
5段階のうち、ストロンゲストとベリーストロングは病院で処方される処方薬のみで、市販薬は、ストロング、ミディアム、ウィークの3段階に限られています。
お子様の首・顔などの皮膚の薄い部分は、吸収率が高く、思わぬ副作用が出る可能性があるため、ミディアムかウィーク、もしくはステロイド成分無配合の薬を選びましょう。
体にはミディアム・ウィークに加えてストロングも使用できますが、広範囲にならないように気をつけます。年齢や症状によって適したステロイドの強さは変わるため、判断に迷う場合は医師または薬剤師にご相談ください。

とびひに使える薬|ステロイド配合の抗菌薬
ステロイド配合の抗菌薬は、炎症の程度によってステロイドの強さを選ぶことができます。
大人の方は次に紹介するいずれの薬も顔・体にお使いいただけますが、顔に使う場合は、広範囲(目安として500円玉を超える程度)には使用しないでください。また、顔については、鼻の入り口の皮膚の部分であれば使用できますが、粘膜部分や目の周囲は避けてください。
ただし市販のステロイド配合抗菌薬を5~6日使用しても症状が改善しない場合は使用を中止し、病院を受診しましょう。
ベトネベートN軟膏AS
| 特徴 |
|---|
| ・ステロイド成分+抗菌成分配合 ・ステロイドの強さ|ストロング(強い) ・かゆみや赤み・腫れなどの炎症が強くでているときに |
ステロイド成分ベタメタゾン吉草酸エステルと、細菌の発育や増殖をおさえるフラジオマイシン硫酸塩が配合された薬です。
ステロイドの強さは、市販薬でもっとも強いストロングのため、炎症が強くでているときに適しています。
テラ・コートリル軟膏
| 特徴 |
|---|
| ・ステロイド成分+抗菌成分配合 ・ステロイドの強さ|ウィーク(弱い) ・子どもにも使える |
ステロイド成分ヒドロコルチゾンと抗菌成分オキシテトラサイクリン塩酸塩を配合した薬です。
ステロイドの強さはウィークであるため、お子様にもお使いいただけます。
とびひに使える薬|ステロイド無配合の抗菌薬
ステロイドが入っていない抗菌薬を紹介します。
どちらも子どもから大人の顔や体に使える薬ですが、それぞれ含まれている成分によって特徴が異なるため、お好みでお選びください。
ドルマイシン軟膏
| 特徴 |
|---|
| ・2種類の抗菌成分のみ配合 ・とびひによる化膿の対処や拡大の予防に ・シンプルな薬がいい方に |
それぞれ異なる菌に効果をあらわす2種類の抗菌成分コリスチン硫酸塩とバシトラシンが含まれています。
皮膚が化膿しないようにする予防と既に化膿してしまったとびひの対処におすすめです。
オノフェF
| 特徴 |
|---|
| ・抗菌成分+炎症をおさえる成分+組織修復成分配合 ・3つの有効成分がかきむしって赤く広がるとびひに効く ・かゆみや皮膚のダメージが気になる方に |
とびひの原因菌を抗菌成分スルファジアジンが殺菌し、酸化亜鉛がジュクジュクした皮膚の炎症をおさえ、アラントインが傷ついた皮膚組織の生成をうながします。
軟膏タイプの薬です。
とびひの跡に使える薬
とびひの症状が長引くと、シミのような跡が残ってしまうことがあります。
シミのような跡は、とびひによってひどい炎症が起きたときや、かきむしって皮膚を傷付けてしまったときに、その自然治癒の過程でメラニンという色素が沈着してできます。
子どもは大人よりも肌のターンオーバー(新陳代謝)が活発であるため、跡が残っても比較的早く元の肌色に回復しますが、年齢を経るごとに肌のターンオーバーの周期が遅くなるため、メラニン色素が抜けるのにも時間がかかるようになります。
とびひの跡をケアするためには、皮膚のターンオーバーをうながし、皮膚に残ったとびひの跡を改善するヘパリン類似物質が含まれた塗り薬を選びましょう。
ヒルマイルドローション
| 特徴 |
|---|
| ・ヘパリン類似物質のみ配合 ・さらっと伸びるローションタイプ |
ヘパリン類似物質が配合された保湿剤です。
さらっと伸びるローションタイプです。クリームよりも比較的べたつきが少なく伸びが良いため、広範囲に使用する場合に適しています。
へパリン類似物質には、角質層の水分保持機能を改善し、正常なバリア機能を取り戻すようにうながすことで、肌内部に水分を保つ効果があります。
また、肌本来の力を取り戻す手助けをすることで、保湿効果だけではなく、肌の乾燥や手指の荒れなどの改善に有効に働きます。
アットノンEX ジェル
| 特徴 |
|---|
| ・ヘパリン類似物質+抗炎症成分+組織修復成分配合 ・さらっとしてべたつかないジェルタイプ ・肌の内側から修復をうながし、とびひの跡を目立たなくする |
ヘパリン類似物質のほか、傷ついた皮膚組織の修復を助けるアラントインや、傷跡に残った炎症を鎮めるグリチルリチン酸ニカリウムが含まれています。
サラッとしてべたつかないジェルタイプで、肌のターンオーバーを意識して塗り続けることで、徐々にとびひの跡に効いていきます。
使用上の注意|傷が治りきってから使うこと
ヘパリン類似物質には、血液を固まりにくくする作用があります。
そのため、ヒルマイルドローションや、アットノンEX ジェルをとびひの傷が治りきっていない状態で使用すると、傷口から再び出血する恐れがあるため、必ず傷が治りきってからご使用ください。
使用時期の目安としては、かさぶたが完全にとれた後で、赤く、盛り上がった光沢のあるような症状が認められたら使用可能と考えられておりますが、塗り始めた後に出血がみられた場合は、すぐに使用を中止してください。
とびひに使える薬の正しい塗り方
薬を塗る前にまずは患部を清潔にすることが大切です。
患部を水で流すだけではなく、石鹸を使いこすらず優しく洗いましょう。
石鹸の成分が残らないよう、しっかりと水ですすいだ後に患部を乾燥させてから薬を塗ります。
薬を塗った後は患部をガーゼで保護しても◎
薬を患部に薄く伸ばして塗り、つけすぎて皮膚がベトベトにならないよう気をつけてください。
小さなお子様は我慢できずに患部をかいてしまうことが多いため、ガーゼなどで軽く覆ってあげるとよいでしょう。また、患部が露出していると、他の部位の皮膚や、他人へ感染させるおそれがあるため、ガーゼで覆えるようなところは、薬を塗った後にガーゼで患部を保護することをおすすめします。
ガーゼを使用した場合は、1日に1~2回取り替えてください。
包帯などでしっかり固定する必要はなく、なるべく通気性をよくしておきます。
水ぶくれについては、小さなものは潰さず、大きなものは傷口から出るジュクジュクした液体(滲出液)がまわりについてしまわないように排出させます。
とびひの治し方
とびひは、原因となる細菌を退治することで治療します。かゆみが強くでている場合は、かゆみをおさえる治療も行われます。
病院での治療方法
病院での治療方法を、水ぶくれタイプのとびひと、かさぶたタイプのとびひに分けて紹介します。
■水ぶくれタイプのとびひの薬
とびひの多くがこの水ぶくれタイプです。
主にフシジンレオ®︎*1軟膏やアクロマイシン®︎*2軟膏、テラマイシン®︎*3軟膏、ゲンタマイシン軟膏などの抗菌薬の塗り薬が使われます。軽い場合は、軟膏だけで済むこともありますが、通常は、セフジニルなどの抗菌薬の内服薬も併用されます。
かゆみが強いときは、抗ヒスタミンの内服薬が処方されることもあります。
なかなか治らないときには、抗菌薬が効かない場合もあるため、どんな抗生物質が効くか調べる検査が行われることもあります。
■かさぶたタイプのとびひの薬
塗り薬は、エリスロマイシン軟膏などの抗菌薬が用いられます。加えて、フロモックス®︎*4錠などの抗菌薬の内服薬が処方されることもあります。
抗菌薬を内服することで、とびひの症状を早めにおさえることができます。
症状が重い場合は、点滴注射を行うこともあります。
家でのセルフケア
家では次のことに気をつけてとびひの拡大を防ぎましょう。
①症状がでている間は、他の家族にうつすことのないよう湯船に入らず、お風呂はシャワーで済ませましょう。
患部を洗う際は、石鹸をよく泡立てて優しく丁寧に洗い、シャワーで泡をしっかり洗い流すようにします。皮膚を清潔に保ち、とびひが広がらないようにすることが治りを早くするコツです。
兄弟・姉妹がいる場合は、入浴は他の子ども達の後にするなど最後がよいでしょう。
②タオルからうつる可能性もあるため、タオルは必ず家族と別にします。洗濯は一緒に行っても構いません。
③爪を短く切り、虫刺されなどをかいて皮膚を傷つけないようにします。
鼻のなかには原因となる黄色ブドウ球菌が常在していることがあるため、鼻の穴や周囲をよく触る癖がある場合は、できるだけ触らないように気をつけましょう。
とびひの薬に関するQ&A
Q 市販のリンデロン®︎やオロナイン®︎は使えますか?
A 市販のリンデロン®︎*5やオロナイン®︎*6は、とびひの適応がないため、使えません。
特に市販のリンデロン*5はステロイド成分のみを含む薬です。ステロイドには免疫抑制作用があり、細菌に感染している皮膚に使うとかえって悪化するおそれがあるため、自己判断で使用することはできません。
ただし、病院で処方されるリンデロン*5は複数の種類があり、なかにはとびひの原因菌に有効な抗生物質が含まれるものがあるなど、患者さん一人一人の皮膚の状態や症状に合わせて処方されているため、とびひで処方された場合は、医師の指示に従い使いましょう。
Q ワセリンを塗ったり、キズパワーパッド®︎を貼ったりしてもいいですか?
A とびひが悪化してしまう可能性があるため、ワセリンやキズパワーパッド®︎*7などの絆創膏を使うことはおすすめできません。
ワセリンやキズパワーパッド*7などは、軽度のすり傷、切り傷に対し有効なケースもありますが、とびひのような細菌感染をともなう患部に使うと、治りにくくなるおそれがあります。
Q 薬はいつまで塗ればよいですか?
A 赤みやただれがなくなり、表面が乾いた状態になればやめても構いません。ただし、かゆみが残っている場合には、かいて悪化させてしまうことがあるため、もう少し続けた方がよいでしょう。
水ぶくれやびらん(ペロッと皮膚がむけた状態)がどんどん広ってくるようであれば、早めの皮膚科受診がおすすめです。
なお、5~6日間を目安に、それ以上長引くようであれば使用を中止し、皮膚科を受診してください。
※1フシジンレオはレオ ファーマ アクティーゼルスカブの登録商標です。
※2アクロマイシンはサンファーマ株式会社の登録商標です。
※3テラマイシンはファイザー・インクの登録商標です。
※4フロモックスは塩野義製薬株式会社の登録商標です。
※5リンデロンは塩野義製▲薬▼株式会社の登録商標です。
※6オロナインは株式会社大塚製薬工場の登録商標です。
※7キズパワーパッドはケンビュー インクの登録商標です。


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