熱中症予防に漢方薬は使用できる?市販薬の違いと選び方を解説
熱中症の予防に漢方薬は使用できる?
熱中症とは、体温を平熱に保つために汗をかくことで、体内の水分・塩分(ナトリウムなど)が減少したり、血液の流れが滞ったりするなどして体温が上昇し、重要な臓器が高温にさらされることにより発症する障害の総称です。
熱中症は適切な予防方法を知り、しっかりとした対策をとることで防ぐことができます。熱中症を防ぐための予防方法は以下のとおりです。
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・暑さを避ける ・こまめに水分・塩分を補給する ・暑さに備えた体づくりをする など |
上記に加えて、漢方薬を使用するのも、熱中症に対する有効な手段の一つです。
なお、熱中症の予防を目的とした漢方薬はありません。しかし、熱中症によるめまいや吐き気、だるさなどの症状に効果をあらわす漢方薬はあります。
熱中症による症状に効く漢方薬の選び方
熱中症による症状に効果をあらわす漢方薬には、五苓散や竹葉石膏湯、補中益気湯などがあります。
| 五苓散 |
・体のなかの「水」のバランスを整える ・めまいや吐き気、暑気あたりに |
|---|---|
| 竹葉石膏湯 |
・体にこもった熱を下げたり、熱により失った潤いを補ったりする ・軽い熱中症や口の渇きに |
| 補中益気湯 |
・胃腸の消化・吸収機能を整え「気」を整える ・疲れやだるさ、食欲不振などに |
| 人参養栄湯 |
・胃腸の機能を高めることで「気」と「血」を補う ・疲れやだるさ、食欲不振などに |
五苓散
漢方医学では「気・血・水」の3つの要素があります。なんらかの原因で「水」のバランスが崩れ水滞(水が滞った状態)が起こると、体が重くだるいなどの不調があらわれると考えられています。
五苓散には、体のなかの「水」のバランスを整える働きがあります。この働きにより、口の渇きや尿量の減少による、めまいや吐き気、頭痛、暑気あたり※に効果をあらわします。
※暑気あたりとは、夏場の暑い環境によって生じる体調不良のこと
竹葉石膏湯
竹葉石膏湯には、体にこもった熱を下げたり、熱により失った潤いを補ったりする働きがあります。この働きにより、軽い熱中症や口の渇きに効果をあらわします。
補中益気湯
漢方医学には、気(身体を動かすエネルギー)という概念があります。胃腸の働きが低下して満足な栄養がとれなくなると、気を十分につくりだせなくなり、だるさや疲れなどの症状があらわれると考えられています。
補中益気湯は、胃腸の消化・吸収機能を整え、食事から十分な栄養を摂取できるようにすることで、気(身体のエネルギー)を整える働きがあります。この働きにより、夏場の暑い時期に起こりやすい疲れやだるさ、食欲不振などに効果をあらわします。
人参養栄湯
漢方医学には、気(身体を動かすエネルギー)と、血(体の中を流れる赤い液体)という概念があります。気が不足するとだるさや疲れなどの症状が、血が不足するとめまいなどの症状があらわれると考えられています。
人参養栄湯には、胃腸の機能を高めることで、「気」と「血」を補う働きがあります。この働きにより、夏場の暑い時期に起こりやすい疲れやだるさ、食欲不振などに効果をあらわします。
市販で購入できる五苓散
五苓散には、体のなかの「水」のバランスを整える働きがあります。この働きにより、口の渇きや尿量の減少による、めまいや吐き気、頭痛、暑気あたりに効果をあらわします。
宇津救命丸 五苓散
| 効能効果 |
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体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹※のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔い ※しぶり腹とは、残便感があり、くり返して腹痛を伴う便意を催すもののこと |
五苓散が配合された顆粒タイプの漢方薬です。錠剤は苦手という方におすすめです。
生後3か月未満の乳児は服用できません。また、1歳未満の乳児には医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合のみ服用させてください。
ツムラ漢方五苓散料エキス顆粒A
| 効能効果 |
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体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹※のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔 ※しぶり腹とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すもののこと |
五苓散が配合された顆粒タイプの漢方薬です。2歳から服用できます。錠剤は苦手という方におすすめです。
クラシエ五苓散錠
| 効能効果 |
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体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症:水様性下痢、急性胃腸炎(しぶり腹※のものには使用しないこと)、暑気あたり、頭痛、むくみ、二日酔 ※しぶり腹とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すもの |
五苓散が配合された錠剤タイプの漢方薬です。5歳から服用できます。漢方薬特有の味やにおいが苦手な方におすすめです。
市販で購入できる竹葉石膏湯
竹葉石膏湯には、体にこもった熱を下げたり、熱により失った潤いを補ったりする働きがあります。この働きにより、軽い熱中症や口の渇きを改善します。
サマレスゼリー
| 効能効果 |
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| 体力虚弱で、かぜが治りきらず、たんが切れにくく、ときに熱感、強いせきこみ、口が渇くものの次の諸症:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、口渇、軽い熱中症 |
サマレスゼリーは、竹葉石膏湯が配合された市販薬です。7歳から服用できます。ゼリータイプ(プラム風味)のため、水なしで飲むことができます。
サマレスゼリーは携帯に便利なスティックタイプです。
市販で購入できる補中益気湯
補中益気湯は、胃腸の消化・吸収機能を整え、食事から十分な栄養を摂取できるようにすることで、気(身体のエネルギー)を増やす働きがあります。この働きにより、夏場の暑い時期に起こりやすい疲れやだるさ、食欲不振などに効果をあらわします。
ミナカラ補中益気湯錠
| 効能効果 |
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| 体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、 疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、 感冒 |
補中益気湯が配合された錠剤タイプの漢方薬です。5歳から服用できます。漢方薬特有の味やにおいが苦手な方におすすめです。
補中益気湯エキス顆粒クラシエ
| 効能効果 |
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| 体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒 |
補中益気湯が配合された顆粒タイプの漢方薬です。4歳から服用できます。錠剤は苦手という方におすすめです。
ツムラ漢方補中益気湯エキス顆粒
| 効能効果 |
|---|
| 体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒 |
補中益気湯が配合された顆粒タイプの漢方薬です。2歳から服用できます。錠剤は苦手という方におすすめです。
ワカゲン錠
| 効能効果 |
|---|
| 体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすいものの次の諸症:虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、ねあせ、感冒 |
補中益気湯が配合された錠剤タイプの漢方薬です。5歳から服用できます。漢方薬特有の味やにおいが苦手な方におすすめです。
市販で購入できる人参養栄湯
人参養栄湯には、胃腸の機能を高めることで、「気」と「血」を補う働きがあります。この働きにより、夏場の暑い時期に起こりやすい疲れやだるさ、食欲不振などに効果をあらわします。
人参養栄湯エキス顆粒クラシエ
| 効能効果 |
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| 体力虚弱なものの次の諸症:病後・術後などの体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血 |
人参養栄湯が配合された顆粒タイプの漢方薬です。2歳から服用できます。錠剤は苦手という方におすすめです。
熱中症になったときの対処法
熱中症は重症度によりⅠ〜Ⅲにわけることができ、重症度によって対処法が異なります。熱中症の対処法については環境省の『熱中症の対処方法(応急処置)』のチャート図も参考にしてください。
| 重症度 | 症状・特徴 | 対応 |
|---|---|---|
| 重症度Ⅰ度 (軽症) |
・めまいや筋肉のこむら返り ・意識がはっきりしている など | ・現場で対応し経過観察をおこなう (涼しい場所へ避難する、体を冷やす、水分・塩分補給をするなど) |
| 重症度Ⅱ度 (中等症) |
・頭痛、だるさ、吐き気 ・意識がなんとなくおかしい など |
・すみやかな病院への受診が必要 |
重症度Ⅰ度(軽症)の場合|現場での応急処置
重症度Ⅰ度(軽症)では、めまいやこむら返りなどの症状があらわれますが、意識ははっきりとした状態を指します。
重症度Ⅰ度(軽症)の場合は、通常、現場での応急処置をおこないます。すぐに涼しい場所へ移動し体を冷やす、水分を自分で飲んでもらうなどして症状の改善をはかりましょう。
水分補給をする場合は、水だけでなく塩分の摂取も重要です。厚生労働省は、水分と塩分の補給の目安として0.1~0.2%の食塩水を推奨しています。水分と塩分を摂取できるものには、オーエスワン®︎*など市販の経口補水液やスポーツドリンクなどがあります。
また、応急処置中は常に誰かが見守り、症状の観察を行うことも重要です。
重症度Ⅰ度(軽症)の場合の対処法
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・風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内等に避難させる ・冷たい水を持たせて、自分で飲んでもらう ・皮膚を濡らしてうちわや扇風機で扇いだり、氷やアイスパックなどで体を冷やす など |
重症度Ⅱ度(中等症)の場合|病院へ搬送
意識がおかしい場合や自分で水分・塩分を摂れない場合、応急処置をしても症状の改善がみられない、もしくは症状が悪化した場合は、重症度Ⅱ度(中等症)と判断し、救急車を呼ぶなどしてすぐに病院に搬送しましょう。
救急車が到着するまでの間も、体を冷やし続けることが大切です。
■体を冷やす場所
体を冷やす場所として効果的なのは、首の付け根、両側の脇の下、太ももの付け根の前側など、太い血管(静脈)がある部分です。皮膚をとおして太い血管(静脈)を冷やすことで、体内を冷やすことができます。
体を冷やすときは、冷やした水のペットボトルやビニール袋入りのかち割氷、氷のう等をタオルでくるんで、首の付け根、両側の脇の下、太ももの付け根の前側などにあてましょう。
※オーエスワンは株式会社大塚製薬工場の登録商標です。


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