下痢に効く漢方薬は?選ぶ際のポイントとおすすめの漢方薬を解説
東洋医学において下痢は、薬剤性下痢症や食事起因性下痢症のように原因別に分類されていますが、東洋医学では、過剰に水分が溜まった状態である「水毒」と考えられています。また、「気が停滞」することでも下痢が起こり、いわゆるストレスによって腸管の動きが鈍くなることも原因のひとつと考えられます。本記事では、下痢に効く漢方薬のおすすめの選び方を紹介します。
下痢に効く漢方薬を選ぶ際のポイント
下痢に効く漢方薬は、以下3つのポイントを押さえて選びましょう。
- 効能効果に下痢が含まれているか
- 服用を継続できるか
- 体質や症状に合っているか
効能効果に下痢が含まれているか
市販薬を選ぶ際は、効能効果に「下痢」と記載されている薬を選びましょう。
同じ名前の漢方薬でも、処方薬と市販薬で効能効果が異なる場合があります。
服用を継続できるか
漢方薬は、症状によっては一定期間服用を続けなければいけない場合もあるため、自身が飲み続けやすいと感じる漢方薬の形を選ぶことが大切です。
漢方薬には、以下のように複数の錠形があります。
- 「湯剤」:生薬を煎じ成分を抽出したもの
- 「散剤」:生薬を粉末にしたもの
- 「丸剤」:生薬の粉末に蜂蜜などを混ぜて丸く粒状にしたもの
- 「エキス剤」:生薬から有効なエキスを抽出・乾燥し、飲みやすい剤形へ加工したもの。剤形は、錠剤・顆粒剤・カプセル剤などがある
たとえば、散剤や顆粒剤が飲みにくい場合は、錠剤やカプセル剤を選ぶとよいでしょう。
また、顆粒や散剤の味やニオイ、感触が苦手な場合は、水または白湯を先に一口飲んでから漢方薬を内服したり、オブラートや服薬ゼリーを使用したりといった工夫もおすすめです。
体質や症状に合っているか
自身の症状や体質に合った漢方薬を選ぶことも大切です。
五苓散(ごれいさん)は、特に水っぽい下痢に適した漢方薬です。
「水」の滞りを改善することで、下痢症状を改善します。
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は、特にストレスをともなう下痢に適した漢方薬です。みぞおちにつかえた感じがあり、吐き気・嘔吐や食欲不振がある方の軟便や下痢の症状にも使用されます。
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)は、普段から胃腸が弱い方の下痢に適した漢方薬です。下痢だけでなく、腹が張って痛み、頻繁に便意をもよおすにもかかわらず排便が困難な症状にも効果があります。
下痢への効果が期待できる漢方薬5選
下痢への効果が期待できる漢方薬には、以下のものなどがあります。
- 五苓散(ごれいさん)
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
- 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
上記3つの効能効果と、それぞれを含む市販薬を5つ紹介します。
五苓散:水っぽい下痢に
漢方では、「気(キ)」「血(ケツ)」「水(スイ)」の3つの要素が体内に滞りなく循環することで健康が維持されると考えられており、下痢は「水」の流れが滞ることによって起こります。
「五苓散」は、「水」の滞りを改善することで、下痢症状を改善します。
喉の渇きや尿量が少ないなどの症状があり、水っぽい下痢や急性胃腸炎、頭痛、二日酔い、暑気あたり(暑さによる倦怠感や疲れなど)に適しています。
五苓散を含む市販薬には以下のようなものがあります。
顆粒タイプの内服薬です。
成人(15歳以上)の場合は、1日2回、1回につき1包を食前に内服します。
| 有効成分 |
|---|
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五苓散エキス |
| 効果・効能 |
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体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症: 注)しぶり腹とは、残便感があり、くり返し腹痛を伴う便意を催すもののことである。 |
錠剤タイプの五苓散です。
顆粒タイプが苦手な人でも比較的飲みやすい点がメリットです。
成人(15歳以上)の方は、1回4錠を1日3回、食前または食間(食事と食事の間の時間)に内服します。
| 有効成分 |
|---|
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五苓散エキス |
| 効果・効能 |
|---|
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体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症: |
半夏瀉心湯:ストレスをともなう下痢
半夏瀉心湯は、みぞおちにつかえた感じがあり、悪心・嘔吐や食欲不振を伴う軟便や下痢の症状に適した漢方薬です。
下痢の症状だけでなく、胃下垂や神経性胃炎、二日酔い、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症などの効能効果があります。
顆粒タイプの内服薬です。
成人(15歳以上)の場合は、1日2回、1回につき1包を食前に内服します。
| 有効成分 |
|---|
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半夏瀉心湯エキス |
| 効果・効能 |
|---|
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体力中等度で、みぞおちがつかえた感じがあり、ときに悪心、嘔吐があり食欲不振で腹が鳴って軟便又は下痢の傾向のあるものの次の諸症: |
こちらは錠剤タイプの半夏瀉心湯です。
成人(15歳以上)の場合は、1日3回、1回4錠を食前または食間に内服します。
| 有効成分 |
|---|
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半夏瀉心湯エキス |
| 効果・効能 |
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体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少ないもので、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う次の諸症: |
桂枝加芍薬湯:腹痛持ち・胃腸が弱い方の下痢に
桂枝加芍薬湯は「芍薬(しゃくやく)」「桂枝(けいひ)」「大棗(たいそう)」「甘草(かんぞう)」「生姜(しょうきょう)」の5つの生薬が含まれています。
腹痛を伴う下痢の方やしぶり腹、お腹の張りの症状に適しています。
また、お腹や身体を温める働きがあり胃腸の調子を改善させるため、普段から胃腸が弱い方にも適した漢方薬です。
こちらは顆粒タイプです。
成人(15歳以上)は、1日3回、1回1包を食前または食間に内服します。
| 有効成分 |
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桂枝加芍薬湯エキス粉末M |
| 効果・効能 |
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体力中等度以下で、腹部膨満感のあるものの次の諸症:しぶり腹、腹痛、下痢、便秘 |
下痢や軟便に効果のある市販薬の選び方は、以下の記事でも紹介しています。
下痢に効く市販薬に関するよくある質問
下痢に効果のある市販の漢方薬にまつわるよくある質問や、その回答を紹介します。
Q.妊婦・幼児・高齢者でも使用できる?
漢方薬には、妊婦や乳幼児、高齢者の方でも使用できるものもあります。
しかし、妊婦の方の安全性は医学的に確立されていないことや「麻黄(まおう)」「大黄(だいおう)」といった妊婦の方に注意が必要な生薬もあるため、自己判断は危険です。
また、なかには幼児が服用できない漢方薬もあります。
使用する前に、薬の添付文書を確認し、必要時は医師や薬剤師に相談しましょう。
Q.副作用はある?
漢方薬は、発疹・発赤やかゆみといった皮膚症状などの副作用が出現する場合があります。
また、漢方薬の種類によっては重篤な副作用としてとして以下のようなものがあります。
- 間質性肺炎
- 肝機能障害
- 偽アルドステロン症
- ミオパチー
特に、漢方薬のなかでも、「甘草」に含まれている成分である「グリチルリチン酸」は、高血圧や浮腫、四肢の脱力感、嘔気などを主症状とする「偽アルドステロン症」を発症してしまう可能性があるため、用法用量を守って使用し、身体の異変を感じたら医師に相談しましょう。
Q.服用するタイミングは?
漢方薬は、食前(食事の30分ほど前)または食間(食事と食事の間、食後2時間ぐらいが目安)が基本的な内服タイミングです。
漢方薬のなかに含まれている生薬の吸収を良くするために、空腹の状態での内服が好ましいとされているためです。
ただし、市販薬によって服用するタイミングや1日の服用回数は異なるため、添付文書を確認し用法用量を守って使用してください。
Q.複数の漢方薬を併用しても大丈夫?
漢方薬は何種類かの生薬を特定の比率で組み合わせて作られているため、他の漢方薬を混ぜてしまうと、別の薬になってしまいます。
また、複数の薬を飲むと成分が重複して副作用が出やすくなったり、思わぬ作用があらわれたりする恐れもあるので、併用は避けましょう。

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