多汗症とは
多汗症とは、通常よりも多くの汗が出る疾患のことです。『全身性多汗症』と『局所性多汗症』に分けられており、原因や症状が異なります。どちらの場合も原因がはっきりしないことも多いです。
全身性多汗症 |
・全身に多量の汗が出る。 ・結核、甲状腺機能亢進症、神経疾患などの病気が原因のひとつ。 |
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局所性多汗症 |
・部分的に多量の汗が出る。(手のひら、足のうら、脇など) ・緊張などが原因になる。 ・神経の損傷や腫瘍が原因になる場合もある。 |
多汗症は自力で治せる?
多汗症の原因によって適した治療方法も異なります。日常生活に支障をきたしている場合は、医師に相談しても良いでしょう。
自力で対処するには、市販の制汗剤などを使用しながら、漢方薬(防已黄耆湯)を服用する方法があります。ただし、漢方薬(防已黄耆湯)を1か月程度服用しても効果があらわれない場合は、服用を中止し医師に相談してください。
多汗症と汗っかきとの違いは?
多汗症と汗っかきの違いは診断名であるかどうかです。汗っかきは他人よりも汗をかきやすいこと全般に用いられる言葉ですが、多汗症にはいくつかの基準のもと医師によって診断されます。
原発性局所多汗症診療ガイドライン 2015 年改訂版では、多汗症の診断基準について以下のように記載されています。
局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま 6 カ月以上認められ,以下の 6 症状のうち 2 項目以上あてはまる場合を多汗症と診断している
1)最初に症状がでるのが 25 歳以下であること
2)対称性に発汗がみられること
3)睡眠中は発汗が止まっていること
4)1 週間に 1 回以上多汗のエピソードがあること
5)家族歴がみられること
6)それらによって日常生活に支障をきたすこと
多汗症に効く市販薬
多汗症には防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)という漢方薬が使用できます。
防已黄耆湯は、市販の飲み薬で多汗症の効能・効果が認められた薬です。体の水分バランスを整えることで、多汗症などの症状を改善します。
ツムラ漢方 防已黄耆湯エキス顆粒
ツムラ漢方防已黄耆湯エキス顆粒 48包(第2類医薬品)【第二類医薬品】
ツムラ漢方防已黄耆湯エキス顆粒は、顆粒タイプの漢方薬です。有効成分は防已黄耆湯エキスのみで、多汗症にくわえ、むくみや肥満症にも効果を発揮します。
1日2回服用タイプです。
効能効果 |
体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節のはれや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり) |
ビスラットアクリアEX
ビスラットアクリアEX 70錠【第二類医薬品】
ビスラットアクリアEXは、防已黄耆湯エキスを配合した錠剤タイプの漢方薬です。多汗症にくわえ、むくみや肥満症にも効果を発揮します。
1日2回服用タイプです。
効能効果 |
体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節のはれや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり) |
コッコアポL錠
コッコアポL錠 60錠【第二類医薬品】
コッコアポL錠は、防已黄耆湯エキスを配合した錠剤タイプの漢方薬です。多汗症のほか、むくみや肥満症を改善します。
1日3回服用タイプです。
効能効果 |
体力中等度以下で、疲れやすく、汗のかきやすい傾向があるものの次の諸症:肥満に伴う関節のはれや痛み、むくみ、多汗症、肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり) |
多汗症の治療方法
多汗症の明確な受診目安はありませんが、日常生活に支障をきたしている場合には、医師に相談してみてもよいでしょう。
多汗症を病院で治療する場合は、様々な治療方法があります。医師と相談のうえ自分にあった治療方法をみつけましょう。
医療用の塗り薬を使う
『塩化アルミニウム液』を患部に塗ることで治療します。効果が出るまで2~3週間程度かかるとされています。汗が落ち着いてきたら1週間に2~3回に減らすこともありますが、使用を中止すると症状が再発することもあります。
イオントフォレーシス
手のひらや足のうらを水道水の入った容器の中に浸し、10~20mAの電流を流す治療方法です。1回30分ほどを8~12回行うと汗の量が減ってきます。
A型ボツリヌス毒素の局所注射療法
『A型ボツリヌス毒素(BT-A)』を注射する治療方法です。投与量は症状の度合いにあわせて調整されます。患部に2cm間隔で注射すると1週間程で汗の量が減少し、約6か月間持続します。注射後には手の筋力低下がみられますが、お箸やペンが持ちにくいといった症状は一過性で自然に治まります。
A型ボツリヌス毒素の局所注射療法は脇の多汗症に対してのみ保険が適応されるため、主に脇の重度の多汗症治療に用いられる方法です。
内視鏡での胸部神経遮断術(ETS)
内視鏡を使って胸部の交感神経節を切り取ったり、焼いたりする治療方法です。手術時間は片側で20分程度です。術後の合併症として胸、背中、お尻などから異常に汗が多く出る代償性発汗がみられることもあるため、本人の強い希望があるときのみ行われます。
手のひらの多汗症に対しての有効率はほぼ100%です。
抗コリン薬の服用
抗コリン薬(プロ・バンサイン®など)を服用する治療方法です。頭部や顔面の多汗症は、注射や手術などの治療ができないため、抗コリン薬がよく用いられます。
その他の治療方法
精神的な不安やストレス、発汗に対する恐怖感が多汗症の原因になっている場合は、抗不安薬などの薬を使用することもあります。
その他の疾患が原因となっている場合は、根本的な原因にアプローチする必要もあるため、医師の診察のもと、より適した治療方法が選択されます。
日常生活の汗対策
根本的な多汗症治療にはなりませんが、多汗症は原因がはっきりしないことも多いため、一般的な汗対策で汗の不快感を軽減することも大切です。
医薬部外品を使用する
医薬部外品にも『塩化アルミニウム』が配合された制汗剤が市販されています。医療用の薬とは成分濃度などが異なりますが、制汗や汗のにおいに効果が期待できます。